男はいつまでオートバイ乗りの精神を持ち続けていられるのか。男はなぜオートバイに惹きつけられていくのか。そして男はなぜ速いものに憧れ、速いものを憎むのか。「バイク乗りのバイブル」としてバイクを愛する男たちに愛され続ける『キリン』の物語を紐解いていきたいと思います。
KAWASAKI GPZ900R [Ninja]
作中、いちばん初めに登場したバイクがニンジャ。チョースケが、タイゾーが、マサキが──
数々の名場面を生み出したバイクは、世界最速を目指して生み出されたカワサキの野心作。
903ccから1089cc、そして82PSから120PSへ。これが、カワサキビッグバイク第1世代であるZ1から、その直系最終モデルであるGPZ1100までの歩みである。しかし、そのZ1自身が呼び起こした挑戦者たちに立ち向かうには、すでにZ1系空冷4気筒は限界に来ていたのだった。
「再び世界最速のオートバイを作ろう」それが80年代を迎える頃のカワサキの意志。エンジン、車体とも新時代の技術を盛り込み、Z1と同じく世界最速の座に君臨することを目標とした。エンジンは、Z1の伝統である並列4気筒。高出力エンジンへの熱対策には、当時まだ少なかった水冷システムを採用することも決定。そして、排気量はまさかの900cc。カワサキのエンジニアたちも、開発コード「990」とされた新しいロードスターに、Z1の面影を見ていたのである。
現在ではごく当たり前となった「水冷」「並列4気筒」「DOHC4バルブ」というフルスペックのエンジン形式を初めて採用したモデルである「990」の目指した所は、ゼロヨン10秒台、最高速度250km/hの世界。その目標を達成するために、空冷エンジンから水冷へ、フロント18インチから16インチへと、「10年目のZ1」としてバイクの時代を動かしたと言っても過言ではないモデルなのです。
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