2016年のWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)でもっとも注目を集めているチームが、ボルボシアンレーシングと言っていいだろう。
マシンは「S60ポールスターTC1」。このマシンの特徴は、他のワークスチームとは違い、市販の量産エンジンをベースとしていることだ。
ドライバーは、STCC(スカンジナビア ツーリングカー選手権)チャンピオンのテッド・ビョークとこのレースのみハンドルを握るアルゼンチン出身のネストール・ジロラミのふたりである。
決勝レース前、インタビューに答えてくれたエースドライバーのテッド・ビョークは、「ポールスターシアンレーシングは、WTCCに参戦する上で段階的なスッテプを踏んでいて、2016年は知識や技術、そして経験を積み、2年目の2017年は表彰台、そして3年目の2018年には優勝を目標にしている」と言う。
またポールスターのモータースポーツ部門の責任者、アレクサンダー・ムルドゼフスキー・シェドビンは、「今年はトップ5とトップ10という結果をそれぞれ複数回獲得しており、期待を上回る結果となっている。これはボルボS60ポールスターTC1という強力なベースカーの存在とチームの周到な準備作業によるもの。そして次の課題は、レースの日程に合わせて最適なテストプログラムを実施することで、これにより次のシーズンのタイムとリザルトをさらに引き上げるための最適な環境を得ることができる」とコメントしている。
1日に2度も決勝レースが行われる過激さ
F1、WRC(世界ラリー選手権)、WEC(世界耐久選手権)と並ぶツーリングカーによる世界一決定戦がWTCC(世界ツーリングカー選手権)で、2016年シーズンに参戦しているのは、フランスのシトロエン、日本のホンダ、アメリカのシボレー、ロシアのラーダ、そしてスウェーデンのボルボである。
WTCCの最大の特徴は、1日2レース制で繰り広げられる過激な短距離レースだ。ピットストップもなくスタートからゴールまでサイド・バイ・サイド、テール・トゥ・ノーズの接近戦が繰り広げられる。参戦車がフロントとリアにつける車載カメラから映し出されるレースシーンは数センチ、いや数ミリの戦いであることをリアルに映し出す。まさに白熱バトルである。これはほかのレースでは決して見られない。
ツインリンクもてぎでは2回目の開催
2005年にはじまったWTCCだが、日本での開催は2008年からで今年が9回目(岡山国際サーキット3回、鈴鹿サーキット4回、ツインリンクもてぎ2回)となる。
見所は、現在ドライバーズポイントランキングトップを走るシトロエンのホセ・マリア・ロペスがどんな強さを見せるのか、地元開催で反撃体制が整ったホンダがどんな走りを見せるのか、その2強にボルボがどう食い込むのか、であった。
ぞれぞれホンダとシトロエンが優勝
さてレースだが、オープニングレース(1回目の決勝)は、13周で行われた。ボルボのテッド・ビョークは、スタートを決め3番手をキープしていたが、7週目にティアゴ・モンテイロ(ホンダ)に抜かれ惜しくも表彰台を逃し結果は6位。
さらにメインレース(2回目の決勝)は、14周で行われた。8番グリッドからスタートしたテッド・ビョークは、終始クレバーなレースをして1つポジションアップの7位フィニッシュである。このリザルトは、はじめてのツインリンクもてぎ参戦ということや、今シーズンの参戦目的から考えると、経験の蓄積とデータ収集という成果は十分にあったのではないだろうか。(写真:永元秀和)
Polestar(ポールスター)
ポールスターは、ボルボカーズのパフォーマンスブランドである。1996年にモータースポーツチームとして設立されたポールスターは、各種のボルボモデルでレースに参戦し、数多くの選手権で成功を収めている。さらに2009年からはパフォーマンス関連の製品を提供しはじめ、それをきっかけにボルボカーズとの業務関係を強化し、2014年にはボルボS60とV60をベースにしたはじめてのコンプリートカーを発売している。そして2015年からはポールスターのパフォーマンス部門はボルボカーズの傘下に入り活動している。
Polestar cyan Racing(ポールスター シアン レーシング)
シアンレーシングは、ポールスターのモータースポーツパートナーである。クリスチャン・ダール氏がオーナーで、ポールスターのすべてのモータースポーツ事業を運営している。過去にポールスターレーシングという名前で活動していたシアンレーシングは、ボルボ850、S40、C30、S60で5回のSTCC(スカンジナビア ツーリングカー 選手権)のドライバーズタイトルと7回のSTCCチームタイトルを獲得している。