ところで、そのベンリィで通学していたのがバレて停学になっちまってさ。このままじゃ単位不足で留年だ、やばいなぁと思っていたら、奉仕活動をしたらその分単位をくれるというじゃないか。是非もない、ってことで、休み返上で出向いたというわけ。もちろんベンリィでね。
西風先生『GTroman STRADALE』より
単位稼ぎに一人暮らしの爺ちゃんの手伝いにきた僕。
命じられたのは海辺近くの一人暮らしの爺ちゃんの手伝い。
ポツンとポストがあるあたりといわれて向かってみると、ピョコッとハゲた頭が伸びてきた。
バイク好き?の爺ちゃんとの出会い
爺ちゃんに命じられるままに愛車とともに階段を降りると、そこにはまるで隠れ家みたいな家があった。爺ちゃん、僕のバイクを見てすぐに「そりゃホンダのベンリィか?」って聞くからちょっと嬉しくなったよ。なんだ、爺ちゃんバイク詳しいの?って感じ。
そんなこんなで奉仕活動始めたんだけど、頼まれたのは靴の手入れ。楽勝だなと思ったら、なんと30足以上もあるという(!)疲れはしないけど、まあまあ大変。あっという間に午前中が終わり、太陽が高く上がったんだ。
だいぶ腹減ったなと思ったんだけど、近くにコンビニも何もないという。どうしようと途方にくれたら、爺ちゃんが釜で炊いたご飯をご馳走してくれるという。代わりに海岸で薪になる流木を拾ってこいというので、面倒くさいけど走って向かったよ。でも考えてみたら、爺ちゃんいつも薪を拾ってるってことだろ。どうせならでっかい木を探して持って行ってやれば、ちょっとは楽してもらえるかなと思い直したよ。
同じく奉仕活動中の他校の女子が手伝ってくれたおかげで、でっかい流木を爺ちゃんに届けられたよ。
つかの間の心の通い合い
美味しいご飯をご馳走になってさ。
お金もなく一人暮らしで、食材使わせちゃって悪かったな、なんて思いながらも三人で食べたご飯は美味しかったよ。それに、実は爺ちゃんの秘密のブツまで見せてもらっちゃって、ほんとテンション上がったんだ。楽しかったな。
午後も一生懸命靴を磨いてさ。案外、こんな手伝いも悪くないなって思ってやっていたら、あっという間に夕方になって、帰る時間になったんだ。
爺ちゃん、道路まで上がってきてくれて、僕を見送ってくれたんだ。風邪ひいたりしたら困るから、見送りなんていいよ、と言ったんだけどね。
もう2度と会うことないかもな、と思いながらエンジンをかけて、走り出したけど、僕の姿が見えなくなるまで、爺ちゃん、そこに立って見送ってくれたんだ。きっと、僕たちとの時間、爺ちゃんも楽しく思ってくれてたんじゃないかな。
そう思ったら、僕も名残惜しくて、泣けてきちゃったよ。
バイバイ、爺ちゃん。元気でね。