1シリーズは、BMWの最もコンパクトなモデルであり、Cセグメントで唯一、後輪駆動を採用するモデルである。その1シリーズに待望のクリーンディーゼルが加わり、太いトルク、燃費、クリーンな環境性能とすべてが揃った。(Motor Magazine8月号)
BMW118dに試乗
個人的には、次に買うクルマはディーゼル車にしたいと考えている。少し前とは違い、燃費性能が優れ、環境にもよく、日本で買えるラインナップも豊富でこれだけ選択肢も増えたのだから、積極的に選びたいと思っている。「そんなのわかっているけどガソリン車との価格差があるでしょ」と言う人もいるかもしれない。事実、ディーゼルエンジンはそれ自体が高価なため同じクラスのガソリン車よ
り高い価格が設定されている。
たとえば、ここで取材した1シリーズを見ても、118iスポーツの344万円に対し118dスポーツは365万円と21万円高となっている。ただし、118iは1.5L直3ターボエンジン、118dが2L直4ディーゼルターボエンジンなので同じ排気量同士での比較ということにはならないのだが……。
ではもうひとつ、同じ2L同士のガソリンとディーゼルが用意されている3シリーズではどうだろうか。320iスポーツの価格は512万円。それに対して320dスポーツは535万円に設定されている。その価格差は23万円である。
ガソリンかディーゼルかの悩み
実はこの価格差を燃料代の差額で挽回するにはそれなりに時間がかかる。乗り方、たとえばそれほど長距離を走らない人にとっては、その差を逆転させることはなかなか難しいだろう。
ただ、それはあくまでもガソリンとディーゼルを燃費や経済性で比較するからなので、それ自体にあまり魅力を感じていない。なぜなら、クルマを選ぶ基準は燃費だけではないからである。
ちなみに私がディーゼルエンジンに乗りたい理由は豊潤なトルクにある。このとても濃い走り味を一度身体が覚えてしまうと、もうトルクの薄い味のエンジンに乗っているとどこか不足を感じてしまうのである。
さて、前置きは長くなったが、今、このようにとても強く興味を持っているディーゼルエンジン搭載車、BMW118dに試乗できた。それにしても1シリーズは、次世代モデルで駆動方式が現行のFRからFFに変わると言われている。このセグメントで唯一残っていたFRの最後の砦が破られるということはなんとも残念でならない。1シリーズ最後のFR+ディーゼルは買いか?などと考えながら走り始めた。
期待を大きく上回る出来映え
果たしてその出来映えは、期待どおり、いや期待を大きく上回るものだった。BMWらしさが少しもスポイルされることなく、軽快に上のギアへと繋ぐ8速ATとのマッチングといい、後輪駆動らしいスポーティな走りは健在だと言えるだろう。
ディーゼルのネガであるエンジン音も室内ではほぼ気にならない。アイドリングストップも頻繁に作動するので、信号待ちなどで停止している時はほぼ無音、走っていてもエンジン音がうるさいと感じるような場面はほとんどなかった。
試乗時間の関係で高速道路を走ることはできなかったのでそのあたりの印象はまた機会があれば報告したいと思っているが、この118dの持つ実力は相当に高い。競合ひしめくCセグメントのなかにあってもベストな1台だと言っていいだろう。
それぞれの価格を見てもゴルフTSIハイライン(328.9万円)、A180スポーツ(390万円)、A3スポーツバック1.4TFSI COD(356万円)、V40 D4 キネティック(339万円)とすべてが400万円を切る設定だ。ただ、ディーゼルを積むのは1シリーズとV40だけなので、このクラスでのディーゼルと選択肢は2モデルだけである。
118dと320dは同型式の2L直4ディーゼルターボだ
ところで今回は同じディーゼルエンジンを積む320dにも試乗した。エンジン型式は、118dも320dもB47D20A型と同じである。ただし出力は違う。118dが最高出力150ps/最大トルク320Nmなのに対し、320dは190ps/400Nmである。
この出力&トルク差により、スポーティ性が高いのは320dであり、走りの違いは思っていたよりも大きいと感じた。つまり同じエンジンであっても3シリーズに相応しい味付けがされているのである。ただし、だからと言って320dの方がいいかと言えばそれはまた別で個人的には118dに軍配を上げたい。
ちなみにディーゼルの魅力は航続距離の長さにもある。320dのJC08モード燃費は21.6km/L。燃料タンク容量は57Lなので満タンでは、計算上1200kmを超える距離を走ることができるのだ。この足の長さも一度味わうと離れられない。(文:千葉知充/写真:村西一海)