移動手段という意味だけで言えば、バイク以外にも方法はたくさんあります。では、バイクを走らせる醍醐味とは?今回は、『RIDE53』に掲載された東本昌平先生書き下ろし漫画作品「Old Fashioned Love Song」から、そんなことを考えてみたいと思います。
Old Fashioned Love Song
海沿いを抜け、富士山を望む道を走る男性が乗るのは、1700cc級のハーレー。
SAでひと休憩するところです。
すると、自身のハーレーを目の前に、若い女性と年配の男性がなにやら盛り上がっています。
この二人は、同じ観光バスに乗り合わせた同士のようです。
ハーレーオーナーも会話に混じると、年配の方は元バイカーのハーレー乗りという共通点もあり話ははずみますが、オーナーはこう言ってみます。
「バスの方がみなさんとおハナシもできれば、自分で運転しなくていいし、気楽でいいじゃないですかあ」
すると、年配の男性はこう返すのです。
「でもな、寄り道ができるのはバイクだけだよ」
SAを後にしたハーレーオーナーは、道路から一本入ったところでバイクを止め、森林へ入り、川を眺めながら、その言葉を思い返します。
そして、ひとこと、「あのじいさんもバイク乗りだな」。
確かに、走っている最中にする新たな発見や寄り道、回り道はバイク乗りでなければわからない楽しみなのかもしれません。
そして男性は、自分の人生と重ね合わせるかのように言います。
「寄り道ほど大切なものはないな」、と。
旅も人生も、自分の行き先や速さ、道順は自分で決めるものです。そんな中にある寄り道は、ときに無意味に見えるかもしれませんが、大事なことだってたくさんありますよね。
このハーレーオーナーのように、「寄り道ばかりだ」と笑って言えるようになったら、紆余曲折ありながらも"良い"人生を歩んできた、と心から実感出来るのかもしれませんね。