タイヤは内側から空気で支えられて構造体として成立する。したがって空気圧は非常に重要な要素だしかし、それだけではグリップ力を発揮しない。路面に押しつける力が加わり、それに対する反力を生じればこそがっちりと走路をとらえるのである。これらのことを総合的に考えてみることにしよう。 (Bikers Station@モーターマガジン社)

風船があればできる簡単な実験で、グリップ力が空気圧で変化するのを確かめる
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ふたつとも同じ風船である。左には空気を少し入れ(空気圧が低い)、右は空気を多めにする(空気圧が高い)。このふたつの風船を握って、上方から同じ力で押しつけながら板上をスライドさせると、空気圧が高いほうが大きいグリップ力を発生することがわかる。同じ荷重に対する反力が空気圧が高いほうが大きいからだ。この場合の反力とは、上から手で押さえつける力(荷重)によって変形した風船が元に戻ろうとして、板面を押す力である。風船くらい軽いと、板上に置いただけではグリップ力はほぼゼロ。息を吹きかけただけで動いてしまう。荷重を受けないとグリップ力を生じないのはタイヤも同じなのである。

この風船での実験の結果を踏まえて、実際のバイクの走行でのタイヤの使われ方を考えてみよう。

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直線の公道を普通に走行する場合、スロットルはほぼ固定で、受けている荷重もほとんど車重だけの為、グリップ力は小さい。

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しかし、上の写真のようにハードな左へのコーナリングをすると、タイヤの左側の荷重は右側と比較にならないくらい大きくなり、これを受けタイヤはグリップ力を発揮する。バイクのタイヤは、受ける荷重の大小で発揮するグリップ力が上下するので、レーシングライダーなどはハードなブレーキングにより荷重を調整し、タイヤのグリップ力を極限まで引き出して接戦を繰り広げるのです。

根拠なしに空気圧を下げると非常に危険だ。空気圧を20%下げたら走れたものではなかった (Bikers Station@モーターマガジン社)

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佐藤:空気圧を下げるとグリップがよくなると信じている人がいまだにいます。この実験は、そうした声に反論するために行いたいんです。
源さん先生:タイヤは、空気圧を下げると接地面積は増えますが反力は減る。空気圧を上げると接地面積は減るけれども反力は増す。要はそのバランス。車両メーカーはそれを充分に考え、テストして指定空気圧を決めているわけです。
佐藤:とすると、下げていいことはない。
源さん先生:一般道ではね。でも、下げるとどうなるのか、実感をしてみることにしよう。■で、F:200kPa、R:230kPaを試すと。
佐藤:ラジアルは空気圧を下げるとサイドウォールがたわみます。そのせいで、前輪は受ける荷重の大小とバンク角、舵角の変化によって踏面が左右に動くし、リアは前2者にパワーのかけ方が加わって、とにかくオートバイを信用できない。
源さん先生:車重が50㎏も重くなった印象だよね。サスが沈む前にタイヤがへこんでしまうから、反力が生じにくくなってしまうためなんだ。佐藤:進路が定まらないのでちょっとはらみ気味になる。それでスロットルを戻すと、強い力で切れ込むのにも参りました。怖かったですよ。
源さん先生:タイヤを路面に押しつけたとき、反力が出て表面のゴムを押さえつけないかぎりグリップ力は出ない。それができる空気圧がタイヤには必要だっていうことがわかったでしょう。


自転車でも同じだと思いますが、空気が減ったタイヤでは路面のギャップを必要以上に感じてしまったりと、キッチリと進路が定まらず、バイクを信用できなくなってしまう。そして、空気圧が低いことによるタイヤのたわみの増加は、転がり抵抗の増加にも繋がるので、危険なだけでなく、燃費も悪くなる。逆に空気圧が高すぎても、センター摩耗が起こるなど、タイヤ自体の寿命を短くしてしまう事に繋がります。メンテナンスの中で、かなり簡単にできて、しかも走行において重要であるタイヤの空気圧。バイクに乗る前には是非点検して下さいね!

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