ハチハチと呼ばれるバイクがある。
1987年に彗星のよううにデビューし、その後フルモデルチェンジされたHONDA NSR250R(MC18)だ。
そのハチハチの走りに見合う自分を探すため、何度転倒しても理想のバンクのその先の景色を追い求める、めげない男がいた。

峠を全開で走る男とNSR250R

男はもうそれほど若くはなかった。妻も子もいる。
酒もタバコもギャンブルもしない。ただバイク好きなだけだ。

若い頃は無茶なライディングを繰り返す男のバカさかげんに寛容だった妻も、子供が大きくなるにつれ、つなぎを身にまとい、愛するハチハチ(NSR250R)で出かける彼の背中を見つめる視線は冷たいものになってる。

画像1: ©東本昌平先生/モーターマガジン社

©東本昌平先生/モーターマガジン社

画像2: ©東本昌平先生/モーターマガジン社

©東本昌平先生/モーターマガジン社

男は全開でコーナーを駆け抜けようとする。昔の自分ならできた走りだ。
しかし、年齢のせいもあるのか、最近ではあの頃の感覚を再現できず、苛立ちが募る。

その日、彼は少し無理をして、久しぶりに転倒してしまう。

画像3: ©東本昌平先生/モーターマガジン社

©東本昌平先生/モーターマガジン社

画像4: ©東本昌平先生/モーターマガジン社

©東本昌平先生/モーターマガジン社

画像5: ©東本昌平先生/モーターマガジン社

©東本昌平先生/モーターマガジン社

懲りずに走る。ハチハチとともに。

結局、数カ所の骨折で、しばらくバイクに乗ることさえできない期間を余儀なくされた彼は、周囲からは「ハリキって走んなよ、バイクも体も古いんだから」と諭される。バイクも変えたら?と。

しかし彼は再び乗り始める。そしていつものように、張り切って走るのだ。
愛車、ハチハチに負けない走りを再現するために。

なんどでもなんどでも走る。そんな自分のことが、彼は好きだ。

いつかはバンクの先の、あの景色が見えるだろう。乗り続けていれば。
彼はそう信じて、またハチハチを走らせるのである。

画像6: ©東本昌平先生/モーターマガジン社

©東本昌平先生/モーターマガジン社

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.