そんな社会にあって、オートバイに乗ることは、危険思想の体現であるとして重罪対象となっていたのだが、コロニーから大学受験のためやってきたヤマタイのジュンは、初めての地球で、疾走する一台のバイクを見つけて、不思議な興奮を覚えるのであった。
バイク乗りのバイブル『キリン』を手がけた東本昌平先生の新境地
本作は、管理社会となった未来の地球を舞台に、自由を求めてモーターサイクルを乗り回す若者たちの姿を描いています。
しかし、この時代バイクはすでに生産されておらず、乗ることも所有することも禁止です。そんななか主人公ジュンは、バイクを使うことで反体制的な主張を繰り返す二つのグループと知り合うのです。彼らは資源採掘現場から時折見つかるオートバイのエンジンなどのパーツを使って、組み立てては、自作のバイクを作り上げていました。
一方のグループは特に目的もなく、とにかくバイクを作っては走らせる、その行為自体を自由の象徴として楽しんでいます。もう一方のグループは何らかの政治的な目的があり、バイクはそのための一つの武器になっていました。(彼らの中のヒーロー的存在が、公安当局からファントムと呼ばれるカワサキ乗りのヒデで、ジュンが地球にやってきたときに初めて魅せられたバイクでした)
最初は反発していたジュンですが、オートバイの内燃機関(エンジン)が生み出す強烈な振動や爆音、そしてしなやかに走るその姿に魅了されていくのです。
駆け抜けるオートバイは自由の象徴であり、本能のまま楽しむべき作品
ストーリーは、個人を特定するIDを偽造してバイクを乗り回すグループを、テロリストとして検挙しようとする公安当局と、バイクグループたちとのいたちごっこを中心に進みます。
また、爆弾テロなど、手段を選ばずに超管理型政府を倒そうとする革命グループが、バイクグループを利用として接近してくるなど、さまざまな集団の思いが交錯していきます。
最終的に、政府の高官が実はバイクの蒐集家で、そのことが明るみに出ることで大きなスキャンダルとなり、なぜか(笑)バイクの存在が合法化されていくところで終わるのです。
東本先生はストーリーテラーではないので、あまり緻密な物語や起承転結を求めるのは読み手としては、野暮だと思います。主人公ジュンや、その恋人となるモラの関係や、気分も コロコロ変わって一貫性はありません。というか、バイクに跨ったり走り抜けるバイクに風を感じたりすると、即座にバイクのことだけに心模様が塗りつぶされる彼らなのです。
だから細かいことや、背景をいちいち考えるのではなく、非常に綺麗に描かれたマシンや排気ガスの流れなどに単純に魅せられ、未来の社会で風を切るモーターサイクルとバイク乗りたちの雄姿に惚れ惚れすればいいのです。
理屈じゃないのだ、そう思って読んでほしい痛快な作品なんです。
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『CB感 REBORN』は残念ながらKindleで購入できず、やむなく全巻紙のコミックで入手。
でも、紙には紙の質感があって、最高です。バイクに通じる、”モノ”の良さがありますよね。
ぜひ購入して、東本ワールドにどっぷりつかってくださいませ!
そう、 我が名はバイク乗り!