天候はともかく会場の大規模改修工事がレースウィークに重なっちゃうとは
WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。クリスマスを加えてもたった9日間、国全体の祝日が日本より少ないアメリカで、5月末のベテランズ・デイ (戦没将兵追悼記念日) と9月第1週のレイバー・デイ (労働者の日) を恒例の開催日と定めた年2戦のスプリングフィールド・マイルは、比較的穏やかな春秋の気候も味方につけて、全米最速にして最大級・そして最もヒストリカルなマイルレースイベントとして、近年のアメリカンダートトラックシーンを彩ってきました。
伝統の1戦 (x2) の前哨戦、ショートトラックとTT戦の舞台となる "マルチパーパス・アリーナ" については昨年この時期の当コラムをご覧いただくこととして・・・
全米プロダートトラック選手権がGNC: グランドナショナルチャンピオンシップからAFT: アメリカンフラットトラック選手権に名を変えて以降、トップカテゴリーはTT戦を含め、全レースを2気筒マシンで競われるようにそのフォーマットが変化してきたことからもほんのり伝わる通り、単気筒ショートトラック戦はそのスポーツとしての苛烈さと、イベント興行としての訴求力が驚くほどマッチしない、という深い悩みを抱えてきました。
平たく言えば、仮に同じ週末にマイル戦とショートトラック戦があるなら、よほどのご近所さんあるいは泊まりでハシゴする熱心なレースファンは別として、多くの日帰り観戦者はマイル戦のシートを選ぶ・・・文字通り鉄の馬をイメージさせるハーレーダビッドソンとインディアンを生んだ彼の国で、カラフルな樹脂製ボディを纏って日本や欧州からやってきたモトクロスバイク (とそこから派生したダートトラック用DTXバイク) がその人気を凌駕することは、これまでありませんでした。
というわけで単気筒マシンによるショートトラック戦はプロ選手権トップカテゴリーという檜舞台からいったん退場し (サポートカテゴリーとしてのプロシングルスクラスは別として) 、その活躍の場は、ノウハウの豊富な独立系プロモーターによるローカルレースへと移っていくことになりました。
出場するライダーと関係者たちにとって、アマチュア&プロのショートトラック (あるいはTT戦) とマイルレースが1つの週末に開催される春秋のスプリングフィールドでのイベントは費用対効果の面からも優れた魅力的なパッケージでしたが・・・運営効率と全世界への放映利権を追求するAFTは、COVID-19の蔓延期を境に春のイベントを廃止し、9月1週目にマイル戦Wヘッダーとして開催する形へとトラディションを変更。土日2レース (+翌月曜を予備日とする) なら例え天候不順でもまぁどちらか1戦は開催できるだろう、という読みもあったのでしょう。
ところが今期、8月初旬にはショートトラック戦のプロモーターから "今年9月のレースは大規模改修工事のため会場が使用できず開催不可" との公式発表がありました。COVID-19禍に端を発する世界的なサプライチェーンの混乱からの工期・資材調達の遅れとか諸々あるみたいですが・・・なにもこのタイミングでなくても、という残念な事態です。
伝統のマイル戦Wヘッダーはまさかの?天候悪化により・・・
そして迎えたレイバーデイ・ウィークエンドのスプリングフィールドマイルWヘッダー、今期この大会は6月の第8戦ライマ1/2マイル戦に続き、現役AFTチャンピオン、ジャレッド・ミースの率いるプロモーションチームが興行主となり、参加ライダーの視座から乖離したやや?高飛車な運営で近年不満と悪評を増すAFT主体の通常開催レースとは一線を画す良イベントを目指し、期待は高まります。
2週間あまりも前からコース整備を始め、カチカチのハードパック (硬質路面) に仕上げられることが常のスプリングフィールド・マイル。レース開催に向けたミース・プロモーションのトラックプレップチームの仕事は、近年のAFTでは類を見ないほどのクオリティであったといいます。
昨シーズン限りで現役を引退し、AFT運営スタッフとしてシリーズに関わることとなった、ジャレッドの友人で最大のライバル "マイルマスター" ブライアン・スミスが、当地での初マイルレースに挑む新顔のライダーたちに技術的なアドバイスを与えるブリーフィング中。このような先達からの経験の伝播が分厚い伝統と安全への意識を形成しているといっても過言ではないでしょう。
ところが、です。
この1枚の写真からでも良コンディションが見て取れるマイル戦1日目は、15:30スタートのプロダクションツインズ決勝 (10分 + 2周) のレース終了後、迫る雨雲によってプロシングルス (16:00〜・10分 + 2周) 、スーパーツインズ (16:30〜・14分 + 2周) の各決勝が続行不能となり、両クラスはそのままレース中止。翌日以降の予報も芳しくないことから、早々にWヘッダー2日目は開催しないことが決まり、中止となったクラスのライダーたちは無駄に擦り減ったタイヤと参加賞の各1ポイント (決勝進出者に限る) をトレーラーへ積み込んで、帰路につくこととなりました。観戦チケットもすべて払い戻し、"完全ノーゲーム" です (その手続きはAFTでなく興行主ミース・プロモーションが担当) 。
数時間後の雨雲の接近は、今日ではどんな天気アプリでも監視することができます。各レース間の表彰式とか選手紹介の時間を詰めるとか・・・そもそも降雨の兆候があるのなら朝からタイムテーブルを前倒すとか・・・周回数減算やピットウォークの時間を調整することもおそらく可能でしょう・・必要な策を全て講じて伝統のイベントをなんとか "実現" しようというAFTの強い意志は、今回も感じることができませんでした。定刻スタート→ネット配信からの広告収入ってこの際そんなに重要なんですかね・・・。
といった具合で最近のAFTらしさ満点!グダグダ進行ぶりを露呈した伝統のスプリングフィールド・マイル戦でしたが、ライマ1/2マイル (ザクザクライムストーンの古式ゆかしいクッショントラック) に引き続き、トップカテゴリーに出場しながらイベント興行主をも務めるジャレッド・ミースと彼のパートナーたち・・・妻のニコールもかつてレースナンバー15を纏ってXR750を駆った元GNCライダー (実は単気筒戦はだいぶ苦手なんですけど) ・・・の終止一丸となった運営手腕は極めて高く評価され、本来のライダー目線での大会運営へと状況を引き戻す、新たな流れになっていくことが強く期待されています。
ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!