ダートトラックレーシングに親しむ人たちにとって、最も身近な存在で練習にもレースにもピットバイクとしても整備の実験台?としてもコキ使われる、一家に一台的なスタンダードマシンといえば、ホンダの小排気量・縦型4ストロークエンジンのXR100R / CRF100Fで間違いありません。すでにシリーズ絶版となって10年近くが経過していますが、中古でも新車並みの高値で取引されています。本日はあのケニー・ロバーツが我が子のために組んだ、同系エンジンを搭載し中身も見た目以上にカリカリに弄りまくった、珍しい一点モノのカスタム車両をご紹介しましょう。

老若男女が大人げなく争う "100ccナショナル" なるお遊びレースに向けて

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。このスポーツの本場アメリカで、最も古いローカルレースコミュミティのひとつに数えられる、北カリフォルニアの "ローダイ・サイクルボウル" で毎年1回、実に四半世紀以上前から続いている人気のイベントレースに "100ccナショナル" というものがあります。

誰でも持っている100ccピットバイクで、いい大人と速い子供たちが本気で競ったら誰が一番速いか?というシンプルなコンセプトでスタートし、開催第1回は技術的にアタマふたつ以上抜きん出たプロの全米選手権ライダーが圧勝しますが、もっと面白く掻き乱したくなるのがアチラの性?翌年にはカリカリに弄ったカスタムマシンを駆る、このレーストラックで速いほうから5本指に入るローカルライダー (小学生!) が、件のプロライダーをコテンパンに叩きのめします。

画像: 老若男女が大人げなく争う "100ccナショナル" なるお遊びレースに向けて

"速いライダーに勝つには、より速く走れる条件をすべて整えれば良い" のであって、ライダーの技量のみで勝負しなければならないわけではありません。バカっ速いマシンを仕立ててそのポテンシャルでもって勝ちを狙うことも含め、ライダーとマシン (あるいは加えてチームワークとか技術力とか) の "総合力" で戦うことができるのが、道具を使う競技たるモータースポーツの大きな魅力のひとつでもあります。

全米屈指のブルーグルーブ路面でこのマシンがどう機能するか気になります

ケニーロバーツ・レーシングフレームの屋号でフルサイズ・ダートトラック用フレームを製造販売していたこともあるキング・ケニーの手によって形づくられた、一見オーバースペックなほど剛性の高そうなアルミ製ツインスパーフレームに抱かれるエンジンは、小排気量4ストローク車のチューニング技術で全米にその名を知られる名チューナーの手により排気量UP・最高出力200%近くまで鍛え上げられています。

画像: 全米屈指のブルーグルーブ路面でこのマシンがどう機能するか気になります

左右のフットペグ位置や前後サスペンションなども、ローダイのグリップレベルの高い硬質路面に合わせて入念にセットアップされ、車両サイズにしてはかなり幅広の17インチ前後ホイールと専用レーシングタイヤを選択 (写真の実車のタイヤは現代のものに更新されています) 。

左右ターンと小ジャンプセクションのあるTT形式で競われる "100ccナショナル" ですが、前後ブレーキはノーマル車両のままのコントローラブルなドラム式をそのまま使用しているのも注目点です。速度と前後輪のスリップ度合いの調整補助が目的で、いわゆる極端な制動区間のないダートトラック特有 = 高速レイアウトならではのチョイスと言えるでしょう。

メンタリティの違いなのか、戦況に最適化したカスタム・チューニングを "大人げない" とか "ライダーの技術が伴わないモノ頼み" などと精神論を交えて低評価しがちな我が国に比べ、道具の差によって生み出される優位性を逃さず的確に捉えるあちらの貪欲さは、あらゆるポイントが勝敗を分つ要因となりうるこのスポーツ本来の性質に、より明瞭な答えを示しているように思えてなりません。

ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

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