我が国では古くから、新たにダートトラックに取り組もうとする人たちがまず気軽に楽しむのなら、100〜230、あるいは250ccくらいの国産・空冷・単気筒モデルのうち特定の数機種が最適!と広く伝承されてきましたが、メイカーが現行モデルとしてはほぼ注力していないこのクラス、実を言うとそれら使える中古車の流通価格が目ン玉飛び出るくらい高騰しています。20世紀に新車販売されたマシンがいま、定価じゃ買えないことすらあるそうで?これじゃあ間口狭まっちゃいますよねー。

2000年代はじめごろ、駆け出しライダーはヒトケタ万円でも走り出せた?

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。遡ること20年くらい前、右も左もわからぬまま天啓に導かれ、ダートトラック畑 (と見せかけて実は深い沼だったり) に足を踏み入れた世代・・・実年齢じゃなくキャリアをスタートした時期という意味で・・・は、初めてのレーシングマシンを選ぶうえで今よりずっと恵まれた環境にいたようです。

いつかは手に入れたい (そしてきっと手の届く) 本格ダートトラックマシンといえば、短命に終わった80年代の名車ホンダFTR250であり、あるいはちょっといろいろ我慢?するなら復刻リバイバル版?FTR223が現行販売中であり、はたまたミニサイズでみっちり基礎から (あるいは誰でも振り回せるような気にさせてくれる分、いくらか低いリスクで) 取り組みたいのならば、これまたホンダのXR100R (1990〜2002年)・CRF100F (2004〜2013年) もありました。

画像: 1990あたりのXR100Rというと、甲高い2ストロークサウンドを響かせながら??ターミネーターT1000から逃げ惑うのにしばしば用いられる、LAのやんちゃ坊主に大人気のシティコミューターです (実際は公道走行不可)

1990あたりのXR100Rというと、甲高い2ストロークサウンドを響かせながら??ターミネーターT1000から逃げ惑うのにしばしば用いられる、LAのやんちゃ坊主に大人気のシティコミューターです (実際は公道走行不可)

このようなミニサイズマシンの新車価格は、1990年のXR100Rが19万9,000円で、2004年のCRF100Fが22万9,000円 (いずれも税別) 。

画像: 2013年の最終型CRF100F。公称60台生産。10年経ってデカールとテールカウル形状くらいしか変わってなさそうなのに、税別価格は12,000円UP。なんだか割高感ありますけど、今もお持ちの方は大切にしてください。

2013年の最終型CRF100F。公称60台生産。10年経ってデカールとテールカウル形状くらいしか変わってなさそうなのに、税別価格は12,000円UP。なんだか割高感ありますけど、今もお持ちの方は大切にしてください。

かつて筆者ハヤシの周辺では、これらを新車で買ってギタギタになるまで乗り倒して楽しむのと同じくらいの割合で、拾ってきたか貰ってきたみたいな "美しくくたびれた正しい中古マシン" を丹念に手入れして、シャキっと華麗に走らせるスタイルも確立されていたように思います。

2000年代前半ごろは白タンクの旧式XR100Rなんか片手マンエンで手に入りましたし、熱心なエキスパートライダーの中には、新車で買ってムチを入れまくったCRF100Fを、2年乗って半額くらいで若い後輩たちに譲って、自分は新たに新車買い直すようなスマートなサイクルを確立してる方もいたりして・・・、なんかちょっと、今では考えられられませんよねぇ。

ちなみにそのころ筆者ハヤシの買って駆った入門マシンたちは・・・

以前何度か当コラムでも紹介しましたが、筆者がオーバルトラックを走り始めたころから数年の間に使っていた車両は、ネットオークションで3万円のFTR223 (フロントフォークぐんにゃりで全損扱いの事故車) とか、メイカー系ダートトラックスクールで散々コキ使われた払い下げのXR100R (当時すでに10年落ちの白タンク) とか・・・もちろんそこからちゃんと走るよう各所手を入れるにせよ、ローカルネットワークの中を念入りに探せば、そんな物件もあちこちで見つかるような状況でした。

それから20年近く時が流れる中、扱いやすく維持費の安いこれら中小排気量の公道用モデルは、バイク便屋さんたちの生活の道具になったり?あるいは海外マーケットに一山いくらで持ち出されたり?あれほど日本中の街角を埋め尽くしたはずのトラッカー風カスタム車たちは、いつしか中古市場からも姿を消し、今日の (何度目かのちっちゃな) ダートトラック "リバイバル" ブームも相まって、我々の知る底値の5倍とか、あるいは新車定価超えとかで売買されるプレミアムなアイテムに "成り上がって" しまったのです。

新車ならいざ知らず、いわば素振りトレーニング用のバットみたいな車両を気軽に購入すること自体のハードルが、徐々に上がってると思うんです。時勢のことですから仕方ないのかもしれませんが。ちょっとこれは看過できない問題だと思うんですよねー。

画像: ヒトケタ万円のクタクタ練習車を何台か乗り継いだ挙げ句、パリっとした新車にも乗ってみたくて2004年のCRF100Fを購入。転び方も100通りくらいマスターしました。この車両は今でもFEVHOTS界隈で活躍中です。

ヒトケタ万円のクタクタ練習車を何台か乗り継いだ挙げ句、パリっとした新車にも乗ってみたくて2004年のCRF100Fを購入。転び方も100通りくらいマスターしました。この車両は今でもFEVHOTS界隈で活躍中です。

中古車タマ数も底が見えてきた今、プロデュースされるべきアイテムとは?

ビギナー用・気軽なエントリーマシンに纏わる今日的状況を早くから予想した?筆者は、2014年ごろから数年間、個性的なモーターサイクルを海外工場で生産し日本で販売する小規模なメイカーと水面下で恊働。シンプルなエンジンを搭載したミニサイズのダートトラックマシンを、一般公道走行可能な状態で世に出すことができないかという壮大な計画にチャレンジしたんですが、様々な難題が立ちはだかってあとちょっと及ばずでした (実際の試作車を作り始める寸前までは行ったんですよ) 。

小ロットかつ競技志向の、趣味性の高いコンプリートマシンを "安く" 提供するってのは・・・限りなく険しい道のりだと痛感しましたね。とても良い勉強をさせてもらって感謝しかありませんけど。

画像1: 中古車タマ数も底が見えてきた今、プロデュースされるべきアイテムとは?

ワンストップでコンプリートマシンを "生産" する・・・モノの作り手としては非常にココロ高まるプロジェクトなわけですが、ニッチ・マーケットの見本みたいなダートトラックコミュニティには、実はあまり相性がよくないのでは?と過去の経験をふまえて筆者は考えています。

競技の本場アメリカに倣って、ということでは必ずしもありませんが、人それぞれに流用性の高い、奇を衒うわけではないレーシングマシンの骨格 = メインフレームをまずは計画して、あとはマーケット = コミュニティに洗練・完成を託す、という "餅は餅屋" 的な発想こそが、より合致しているのではないでしょうか。結局のところ、ほとんど全てのスポーツは勝負事、なわけですし。

本日のトップ写真は、本場の老舗ダートトラックライディングスクール・アメリカンスーパーキャンプの某インストラクター氏の走り。ホンダCRF100Fほどにはこのトレーニングに向いていない、と言われて久しい、ヤマハTT-R125でのパフォーマンスです。整えるべきところをキッチリ押さえて手を加えることで、マシンとヒトはより活き活きと躍動を始めますよ。これって言い過ぎですかしら?

画像: そうだよこれもあったんだよ。ちょっと取り組むべきプロジェクトが多いな・・・。

そうだよこれもあったんだよ。ちょっと取り組むべきプロジェクトが多いな・・・。

いやー、宿題ばっかり増えちゃいますね。この夏休みは忙しくなりそうです?
ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

画像2: 中古車タマ数も底が見えてきた今、プロデュースされるべきアイテムとは?
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