上上下下左右左右BA・・・"世界でもっともよく知られている隠しコマンド" ほどには世の中に認知されていないはずですが、左周りトラック種目のひとつであるダートトラックレーシングに最適化されたマシンのフットペグは "明快な意図をもって" 左右チグハグな位置に取り付けられています。

闇雲に左側を高く、というより右のフットペグとブレーキがやたらと低い

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。ダートトラックマシン (とライダー) の至上命題は、ジャンプと右ターン数カ所が追加される "TT戦" を除けば、どれほど速く "左ターン" を駆け抜け、定められた周回数をより上位で走り終えるかです。

ライダーの "踏ん張り" を文字通り左右する、右と左のフットポジションは、実は公道やクネクネ・サーキット、あるいは一直線のドラッグ・ストリップを走る・・・つまりオーバルレーシングマシン以外のすべて・・・と異なり、左右それぞれの (異なる) 下半身の所作に最も適した、絶妙な位置に用意されることになります。

画像: リアハードテイル (リジッドフレーム) + ブルタコエンジンでブレーキレスのソニックウェルドフレーム車

リアハードテイル (リジッドフレーム) + ブルタコエンジンでブレーキレスのソニックウェルドフレーム車

このスポーツの経験をある程度重ねたライダーにとっては、フットペグ位置の善し悪しによってこそ、その操るマシンとの対話が進むか否か、自身最大限のパフォーマンスでトラックを駆けることができるかの大きな分岐点となることは疑う余地もありません。

画像: モンテッサ2ストロークエンジン搭載のトラックマスターフレーム車

モンテッサ2ストロークエンジン搭載のトラックマスターフレーム車

その成り立ちと発展の根拠を "クラスC" = 市販量産車に準ずるレーシングマシンに求めるダートトラックレーシングでは、我が国の公営競技 "オートレース" で目にするような、左右非対称のハンドルバーは使用することができません。が、足元のポジションの左右食い違いについての規定は特になく、リジッドフレーム車によって争われたいにしえの時代より今日まで、右は低め・前気味で左は高め・後ろ気味という位置が定石となっています。

画像: 2016シーズンの覇者、カワサキニンジャ650エンジン + C&Jフレームのブライアン・スミス車

2016シーズンの覇者、カワサキニンジャ650エンジン + C&Jフレームのブライアン・スミス車

コラム冒頭の写真は全米プロ選手権トップランカーのひとり、ブライアン・スミス選手が2000年代前半に使用した、C&J製単気筒フレーマー (ホンダCRF450R) のエンジンレス・ストリップ画像。以下のディテールから左側フットペグはスイングアーム・ピボット周辺に、右側フットペグとブレーキ一式は、フレーム最下端で左側より前に位置し、左側フットペグはスイングアーム・ピボット周辺に、好みに応じて調整可能なデザインになっていることがお分かりいただけるかと思います。

画像1: 闇雲に左側を高く、というより右のフットペグとブレーキがやたらと低い
画像2: 闇雲に左側を高く、というより右のフットペグとブレーキがやたらと低い

これが言わば、ダートトラックマシン本来の "スタンダード・ポジション" です。

左高め・右低めフットポジションのメリットとは、果たして何なのか?

ダートトラックライディングのターン進入シークエンスでは、左足をフットペグから離し、足裏に装着したホットシュー = 鉄スリッパーを接地させながら、マシンを寝かせ滑り込ませていきます。

画像1: 左高め・右低めフットポジションのメリットとは、果たして何なのか?

フットペグを離れた左足は、下方にダラっと "降ろされる" わけではありません。やや極端な写真を意図的に選んでいますが、このライダーの左足の位置はフットペグより明らかに上方、むしろシート座面とほぼ同じ高さまで "引き上げられて" います。深いバンク角を獲得しようとこのような高いポイントに足を捌くには、より高いフットペグ・ポジションからのほうが、移動させる距離も時間もロスが少なく効率的です。またターン後半で徐々にマシンが起きていく場面でも、より自然に (無駄な体力の消耗なく) フットペグに足を戻すことができるでしょう。

画像2: 左高め・右低めフットポジションのメリットとは、果たして何なのか?

スロットルを閉じ切ることなくターンに滑り込む "スライディング・ブレーキ走法" は、右足のリアブレーキを一切使わないものなのだと誤解する方も結構多いのですが、実際にはターン中も脱出時も、右足からの加重によるマシンホールドと (場合によっては) リアブレーキも多用し、タイヤを路面に押し付け、ターン脱出時に最大限のトラクションを得るため体勢を整え続ける必要があります。

この時右足は、街乗りスタンダードポジションよりはやや低めの踏みつけ位置でマシンをホールドし、膝を曲げ切らないような姿勢をとったほうが、加重と抜重をより繊細に行え、はるかに運動性が高まります (たとえば膝を曲げてしゃがんだ状態では階段とかうまく上れないでしょう?) 。

またリアブレーキの操作は、上の写真のような爪先が下を向いた状態 "から" さらに踏み込んで作動させるほうが、ボディポジションと相まってマシンコントロールに有効な領域が大幅に増えます。一般的なモーターサイクルのブレーキペダルは、フットペグとほぼ同じ高さにありますが、ことダートトラックライディングにおいては、そのレバー位置では充分に作動させることが不可能なのです。

モトクロスレーサーはスタンディング (いわゆる立ち乗りポジション) での乗車姿勢が重視されるため、市販状態のマシンではかなりブレーキレバーが高めにセットされていますし、街乗り大前提のダートトラック風マシン (ホンダFTRとか) なども座った状態で舗装路を直進して赤信号でリアブレーキをコキっと踏んで停止できるようないいかげんな・・・もちろん一般的な意味では "ちょうど良い加減" ということですけどね・・・ポジションで成り立っています。

ゴリゴリ攻める "トラック競技専用車" を誂えるなら、このあたりから拘らないと、いくら乗っても多分ダメです。"調整は上達の友" 。いやきっと親友です。さ、今日もたっぷりと、戦って勝つためのヒントは置いておきましたよ。この道の先を追求するかしないかは・・・もちろん貴方次第です。

ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

画像3: 左高め・右低めフットポジションのメリットとは、果たして何なのか?
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