本田技研工業の代表取締役社長として2015年7月に就任以来、6年近くにわたってホンダの舵取りを務めてきた八郷隆弘(はちごう たかひろ)氏が2021年3月をもって退任。後任には4月1日付けで本田技術研究所の所長を務める三部敏宏(みべ としひろ)氏が就任することが発表された。(2021年2月19日付け)

種まきと仕込みは終わった。これからは収穫だ

歴代のホンダ社長は本田技術研究所の社長から転じるのが常だった。その慣例を覆したのが6年前の2015年7月に就任した八郷隆弘現社長。研究所の社長を務めることなく、9人の上席役員を飛び越しての大抜擢人事だったと言われる。すでに、次世代モビリティの方向性は明確になりつつあり、自動車業界は100年に1度の大変革の時代到来を間近に控えていた。

以来、「強い商品づくり」と「地域の強調と連携の強化」を前面に打ち出し、さまざまな改革を実行してきた。任期後半に力を注いだのが、四輪事業の体質強化だった。営業・生産・開発・購買の各機能を部門を超えて連携させることで、旧体制からの脱皮、モノづくりの効率化とスピードアップを計る施策を次々に打ち出してきた。その中には、英国生産からの撤退や狭山工場の閉鎖など不本意なものも含まれていた一方で、開発手法も含めてラインアップの見直しなども行われ、中国での販売台数は5年で倍増した。そして、その改革は現在も進行している。

退任にあたって八郷氏は「既存事業の盤石化と将来に向けた仕込みは終わった。これからはその成長をさらに加速させ、刈り取る時期にはいってきた。そのための体制づくりも出来ている。これからもホンダは人々に愛される企業として成長していかねばならない。それには、(後任の)三部さんにバトンタッチすべきときだと判断した」と、よりバイタリティに溢れる経営を期待する。

画像: 2021年2月18日に概要を発表、同年4月に発売を予定されている新型ホンダ ヴェゼル。

2021年2月18日に概要を発表、同年4月に発売を予定されている新型ホンダ ヴェゼル。

時間が優先。必要とあらば外部とのアライアンスも厭わない

では、八郷さんからバトンを引き継ぐ三部敏宏さんとはどんな人物なのだろう。

三部氏は現在59歳。1987年に本田技研工業に入社、以後、本田技術研究所で主にエンジン開発部門を中心に活躍し、2012年には本田技術研究所の常務執行役員に就任、2014年には本田技研工業の執行役員にも就任してパワートレイン事業の統括も兼任してきた。その後も数々の要職を経験し、2019年4月には本田技術研究所の代表取締役社長に就任した。

そんな三部氏に八郷氏が託したのは、自身が蒔いた種の成長加速と刈り取り、そしてその先にある「2050年カーボンニュートラル」であり、「2050年交通事故死者ゼロ」である。その実現の決意を三部さんはこう語った。

「カーボンニュートラル達成の難しさは理解しています。ただ、EVを作ればいいというものではありません。調達から販売までトータルで含めて考える必要があります。インフラとの関わり方も重要です。もしも社内で考えても解決策が見いだせなければ、社外のパートナーとのアライアンスも厭いません。外部の知見でも、必要とあればどんどん採り入れるつもりです」

画像: ゼネラルモーターズ(GM)との協業はすでに始まっている。写真はGMのBoltをベースとしたクルーズの試験車両。

ゼネラルモーターズ(GM)との協業はすでに始まっている。写真はGMのBoltをベースとしたクルーズの試験車両。

それではホンダらしさが薄まってしまうのではないだろうか?

「ホンダらしさとは商品ではなく、社会的な課題や価値、強いライバルに立ち向かっていくこと。ときとして、それがレースだったり、公害だったり。今、我々につきつけられている課題がカーボンニュートラルの実現であり、交通事故死者ゼロ。それを実現するためには、時間が最優先。昔とは違うのです。外部の知見が入っても、それでホンダらしさが薄まるとは思わない」

あくまでジェントルな語り口ではあったけれども、話の中身はなかなかアグレッシブだ。

三部さんの正式な就任は4月1日。その就任会見ではさらに攻めた話が飛び出すかもしれない。

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