元祖ホネホネデザインとかスーパーマン柄とかの奇抜なレースウェアでもお馴染みのデイヴィッド・アルダナさんは1949年生まれの71歳。1970年代のプロダートトラックシーン、1980年代のAMAスーパーバイクやFIM世界選手権シリーズで活躍した名選手は、驚くなかれ "現役レーサー" です。本日は彼がつい最近まで乗っていた1台、高度にチューンされたプライベート・マシンをご紹介しましょう!

AHRMAで5タイトル獲得のスペシャルマシンがFOR SALE!→売約済み

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。1972年のアカデミー賞にもノミネートされた名作モーターサイクルドキュメンタリー映画 "ON ANY SUNDAY" に全編主役級で登場する、当時ハーレーファクトリーライダーのマート・ローウィルが、経験と入念な下準備を基に勝利を目指す、いわば冷静沈着な理論派としてフィーチャーされるのとは対照的に、当時ちょうど全米プロ選手権にデビューしたばかりのルーキー、20歳のアルダナは、一か八かの野性味溢れる本能的なライディングが特徴の、若きチャレンジャーとして描かれます。

画像1: AHRMAで5タイトル獲得のスペシャルマシンがFOR SALE!→売約済み

1970年代初頭にAMAプロ・ダートトラック選手権で4勝を上げたアルダナは、その後ロードレースにも進出、スズキファクトリーやカワサキ・スーパーバイクチームで全米を巡るシリーズを戦ったのち、世界耐久選手権のホンダチームに加入。マイク・ボールドウィンとのコンビでCB900F改ことRS1000を駆った1981年鈴鹿8耐での優勝は、世界のロードレースファンに広く知られています。

1980年代半ばまでにレースキャリアのハイライトを迎えたアルダナは、その後プロの選手権レースからは一旦身を引きますが、1999年にAMAホールオブフェイム (いわゆる殿堂入り) に選出された頃から、2歳年上の同じくレジェンドライダー、ジーン・ロメロとともにダートトラック・レーシングスクールを開催したり、ローカルシリーズ運営に乗り出し・・・その手の新たな活動の中で横滑りへの想い断ち切れず、"勝ちたい野心" が再び盛り上がったと想像します・・・自身が乗るレース用マシンとして、排気量・クラス違いの数種類、さらにその予備車も合わせ、かなりの台数を誂えました。

画像2: AHRMAで5タイトル獲得のスペシャルマシンがFOR SALE!→売約済み

食うためのお仕事としてでなく、純粋に競技を楽しむ日々・・・結局出場するからには絶対勝たなきゃ悔しくてつまらない、とはアルダナ本人談・・・そんな生活が始まったわけですが、レース人生の終盤も徐々に近づくなか、彼は乗り手に優しくマイルドなマシンを求めることはありませんでした。

アマチュアコンペティターのひとりとして、次の月曜に怪我なく仕事に行ける、自身のリスクを減らし (無理をすることなく) 勝つことのできる、カリンカリンにチューニングされしかも好み通りに味付けされた、全てに手の入った "完璧なプライベートマシン" こそ、彼に必要なものだったのです。

画像3: AHRMAで5タイトル獲得のスペシャルマシンがFOR SALE!→売約済み

というわけで本日は、つい先日チョーお買い得な!$7,500 = 80万円弱、のプライスタグで売りに出た (もちろん即日売れちゃいましたけどね) 、アルダナ自身がここ10年以上の歳月をかけて鍛え上げたマシンのひとつ、ホンダXL350改ダートトラッカーをご紹介しましょう。

彼はこのマシンで、北米最大のヴィンテージレース団体・AHRMA (American Historic Racing Motorcycle Association) のダートトラック部門で、これまで5つのタイトル・・・スーパーシニア60+、シニア50+、スポーツマン600、'70シングルス、'70シングルス50+・・・を獲得しています。ちなみにアルダナはAHRMAの重要な役員 "ナショナル・ダートトラック・ディレクター" でもあります。自分でレース仕切って自分で勝つって理想だな・・・。

これが'74ホンダXL350改498 "アルダナ・スペシャル" のスペックシート!

画像1: これが'74ホンダXL350改498 "アルダナ・スペシャル" のスペックシート!

ベースとなったエンジンは1974年式ホンダXL350。
いわゆる "サイドポートモデル" と呼ばれる、北米向けの輸出専用モデルです。
・ボアとストロークを変更し、メイカー出荷時の実に140%となる498ccまで排気量を拡大
・その筋では名の知れたプロの技術者による入念なシリンダーヘッド加工
・吸排気バルブの大口径化
・CPピストン製・高圧縮ピストンと強化シリンダースリーブ
・メガサイクル製・ハイリフトカムシャフト (ニードルベアリング仕様)
・ミクニ製・44mmキャブレターとハイフローK&Nエアフィルター
・バーネット製・クラッチプレート、削り出し製作のクラッチハブとバスケット
・XL純正より信頼性の高いホンダ・トライアル車種用CDIを流用し、点火方式を変更
・競技スタイル上どう考えてもアルダナ先輩には必要のない (!) 1速ギアを撤去
・クランクシャフト直回し式の外部リモートエンジンスターター対応のクランクケースカバー

メインフレームとスイングアームはチャンピオン・レーシングフレーム(1970年代製オリジナル)
・フレーム形状にマッチするチャンピオンスタイルのフューエルタンクとシートカウル
・サドルマン製シートクッションパッド
・チェニー製・ワイドトリプルクランプ (ダートトラック専用のオフセット大のもの)
・ヤマハ車純正の35mmフロントフォーク
・ワークスパフォーマンス製リアサスペンション
・現行モトクロッサー・ホンダCRF450Rのリアブレーキシステムを一部流用
・左右反転可能なダートトラック用フロントスプールホイール (19インチワイドリム)
・カワサキ車純正のハブダンパー付きリアホイール (19インチワイドリム)

車重はおよそ99kg (ノーマルXL350は137kg)
購入者にはアルダナ先輩の実際に使用したプライベートナンバープレート "13" をプレゼント

画像2: これが'74ホンダXL350改498 "アルダナ・スペシャル" のスペックシート!

これまで145週連載してきた当コラムのなかで、これほど詳しくない方にはチンプンカンプンな回もありませんね、すいません。情報の羅列のみで過去イチ面白みのない文章になってしまったことはもちろん承知なんですが、書かないわけにはいきませんでした。

勝つため、生きて無事に帰るためにはこのくらい、あるいはもうちょっと?兎に角とことんやる。

人目を惹く外見に仕上げたり、イケてる雰囲気をトレースすることは、技術があればさして難しくもないでしょう。なんというかこの内面から沸き上がる完全勝利への飽くなき探求感?日本製エンジンのマシンだけど日本じゃなかなかまだ発芽してない感覚かもなぁ、と思った次第です。

赤白ゼッケンで前年ランキング順をわかりやすく示すのもなにかの都合で合理的?なことなのかもですが、筆者としてはこれからもこちらの感性を追っかけたいです。せめてガソリンエンジンがなくなるまでに、追いつけたらな。ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

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