ダカールラリーを知り尽くした男・三橋 淳が新型アフリカツインを満喫するこの連載企画。前回が番外編、その前が特別編と、このところ寄り道ばかりではありましたが、今回からしばし、アフリカツインの機能を高めるためのカスタム編に突入いたします。その第一弾は左手ブレーキ。なんでコレが必要なのか?どんなメリットがあるのか?その理由もお話ししましょう!

DCT車を無敵にするため左手ブレーキを装着!

画像: DCT車を無敵にするため左手ブレーキを装着!

今回から始まるカスタム編、まず最初にご紹介するのは左手ブレーキの増設。左手ブレーキ、と聞くと上手なライダーのための装備のように聞こえるかもしれないが、実はそうではなくて、左手ブレーキはむしろ初心者にこそ必要なアイテムなのだ!

ではなぜ、左手ブレーキが有効なアイテムなのかを説明していこう。

私が使用しているアフリカツインはDCTモデル。DCTとは「デュアル・クラッチ・トランスミッション」の略で、簡単に言えばオートマのようなもの。つまりクラッチ操作もシフトチェンジも自動でやってくれる楽チンバイクなのである。

とはいえ、クラッチ自体がないわけではない。むしろ普通のバイクよりも1つ多くついている。名前の通りデュアル、つまり2つもクラッチがあるのだ。

DCTはオフでもメリットいっぱい。でも得意・不得意はある

画像: DCTはオフでもメリットいっぱい。でも得意・不得意はある

※DCTの仕組みを図解した動画です。2:48あたりからご覧いただくとわかりやすいです。

DCTの作動の仕組みを簡単に説明すると、1速でA(動画の赤)のクラッチが繋がって駆動していたとする。その時、もう一つのB(動画の青)のクラッチがスタンバイ状態となっていて、シフトアップするのと同時に素早くAからBに切り替わるというわけ。だからライダー自身がクラッチ操作をしなくても、素早いシフトワークができるようになっている。4輪のスポーツカーで最近見られる2ペダルにも同じDCTのものもあるから、「オートマ=鈍い」とはならない。

クラッチ操作がいらない上にオートマのようにラクチンで乗れて、キビキビ運転したいときにはボタン操作でシフトアップもダウンも出来る。これってバイクとして嬉しい進化だと思うわけですよ。

クラッチ操作がない、ということでエンストの恐怖から解放されるし、何しろアクセルとブレーキ操作に集中できるので、オフロードでは特に嬉しい。

しかし!完璧に見えるDCTだが、一つ弱点があるのだ。

それは半クラッチが使えないこと!

クラッチ操作が必要ないんだから、半クラッチなんて必要ないじゃん? と思うだろうけれど、実は半クラッチってすごく重要なテクニックなのだ。

半クラッチが使えないDCT車は、リアブレーキの使い方が重要になる

画像1: 半クラッチが使えないDCT車は、リアブレーキの使い方が重要になる

ここでいう半クラッチとは、エンジンの回転がリアタイヤに伝わるときに、クラッチを少し滑らせることによってエンジンの力を逃す使い方のこと。普通半クラッチというと、エンジンの動力を駆動系に伝える際の操作で、発進の際にエンジンが止まらないようにするもの。2ストバイクでは、エンジン回転数を一気に上げたいときに使ったりもする。トルク増幅装置という使い方が一般的かもしれない。

でも、こうした時の半クラッチ操作は、DCTならほぼ不要。発進であればDCTなら半クラなんぞ必要ないし、2ストマシンのように、エンジン回転数を上げるための半クラッチ操作をビッグバイクで使おうものなら、あっという間にクラッチが焼けてしまう。

しかし、低速域だと半クラッチが必要になってくるケースがある。例えば停止状態からのUターンなどがそうだ。

これは初心者が一番苦手とする場面。むしろエンストしないDCTの方がが有利に思えるが、実はそこがDCTの弱点でもあるのだ。というのも、低速でUターンをする場合、DCT車はアイドリングで走ることになるのだが、速度がやや速すぎるのだ。Uターンはゆっくり走らないと小回りが効かないのである。

そこで役に立つのが半クラッチ。半クラッチを使って、アイドリングよりもさらに弱い力でリアタイヤを回すことでゆっくりUターンが出来るのだ。このテクニックがDCT車だと使えないわけだ。

画像2: 半クラッチが使えないDCT車は、リアブレーキの使い方が重要になる

上手な人は、こういうときリアブレーキで速度をうまくコントロールしてゆっくり回れるのだろうけれど、初心者ではそうはいかない。かと言って、フロントブレーキでスピードコントロールをしようとすると、今度はフロントサスが沈んでギクシャクしてしまう。

そこで、左手でリアブレーキの操作ができれば、半クラッチを使う時みたいにゆっくり走れるじゃないか!というわけ。だから、これは初心者にこそ有効なアイテムと言えるわけだ。

ないものは作る。でもやるならキレイに仕上げたい

画像1: ないものは作る。でもやるならキレイに仕上げたい

ところが、この左手ブレーキ、アフリカツインに合うようなキットが売られていない。そもそも、付けようにも汎用の左手ブレーキを取り付けることができないのだ。なぜならアフリカツイン、特にDCT車には大きなスイッチ類と、さらにはパーキングブレーキのレバーがあるのだ!

中にはパーキングブレーキを取っ払って左ハンドブレーキ化している強者もいるようだが、私はそんなこと怖くてできない!停車時は常にニュートラルになってしまうDCTだと、坂道での停車時にギアを入れての停車が出来ない。だからパーキングブレーキがないと、バイクが動いて倒れてしまう可能性があるのだ。

そこで、ないなら作ってしまえ!というわけで、ワンオフで制作することにした。

お願いしたのはカスタムビルダーで有名な46ワークス!本来ならオフロードバイクをいじるショップではないのだけれど、ここにお願いすれば間違いなく綺麗に作ってくれるということでお願いしたら、快く引き受けてくれた。

「流用できるものがほとんどないので、むしろ全部作っちゃいましょう!」と、46ワークス代表の中嶋志朗さん。リアブレーキのマスターは利用して、台座、レバーまで削り出して作ってしまおうというのだ。

画像2: ないものは作る。でもやるならキレイに仕上げたい

まずは台座をアルミから切り出す。

画像3: ないものは作る。でもやるならキレイに仕上げたい

それをフライスで削り出して形を合わせ、さらにレバーもアルミから削り出していく。

画像4: ないものは作る。でもやるならキレイに仕上げたい

こんな感じものが、あっという間にレバーになる!

画像5: ないものは作る。でもやるならキレイに仕上げたい

まさに職人技の凄さ。で、これを仮組みするとこんな感じ。

画像6: ないものは作る。でもやるならキレイに仕上げたい

美しい!!

取り回しの問題も解消して、いよいよ実装

ただ、ここでひとつ問題が。それはホースの取り出し口。

私としては、フットブレーキペダルも残しておきたい。というのも、普段は足でリアブレーキの操作をしたいからだ。長年刻み込んだライテクの習慣はそうそう抜けるものじゃないからね。左手ブレーキはUターンなどの場面で使いたいというわけ。

そうなると、ホースの取り出し口はリザーブタンクからとなる。ところが、アフリカツイン はそのホースの取り付けボルトが1つしかなく、ここに過大な圧力をかけると浮いてきてしまうのだ。

仕方がない!溶接だ!と暴挙に出るつもりでいたら、志朗さんがストッパーを作ってしっかり固定してくれた。

画像1: 取り回しの問題も解消して、いよいよ実装

お分かりいただけるだろうか。この技!これで問題解決!

画像2: 取り回しの問題も解消して、いよいよ実装

こうして左手ブレーキも完成。これでアフリカツインのDCTに弱点はなくなった!

今回はワンオフなので、作るとなると手間もお金もかかってしまうが、もっとお安く済ませる方法もないわけではない。パーキングブレーキのレバーは、通常ならハンドルグリップを握った状態では指が届かないようになっているが、ここのワイヤーの遊びを増やし、レバーをひん曲げれば握れなくもないだろう。個人的にはお勧めはしないけど、参考までに。

制作過程の動画はこちらをご覧ください!

協力:ホンダモーターサイクルジャパン、野口装美、ダートフリーク、サイン・ハウス
写真:三橋 淳

【次回予告】新章カスタム編、いかがでしたでしょうか?同じアフリカツインのオーナーさんに、少しでも参考になれば嬉しいです!さて次回は、アフリカツインというか、アドベンチャーオーナーには「あるある」なお悩みを解決するカスタムをお届けします。次回「ダカールマシンに学べ!」をお楽しみに!

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