2007年12月、メルセデス・ベンツ SLKが本国ドイツでフェイスリフトを受けている。デザイン変更はわずかだが、リファインされたパーツ数は650にも及ぶ大規模なものだった。このフェイスリフトでSLKはどう変わったのか。Motor Magazine誌ではメルセデス・ベンツ特集の中で新しいSLKに注目して試乗を行った。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年4月号より)

新たにメカニカル可変ステアリングシステムを採用

1996年、オープン2シーターブームに登場したメルセデス・ベンツSLKは、そのブランド力とバリオルーフと呼ばれるリトラクタブルハードトップで人気となった。オープンモデルでありながら同時にクーペと同じ耐候性と安全性(保安という意味)を併せ持つバリオルーフという付加価値は大きく、ほぼ同時期に登場したプレミアムロードスターであるBMWのZ4やポルシェボクスター、さらにはその後登場したアウディTTといった、ライバルたちを上回り、2004年に登場した2世代目を含めて50万台の販売を記録している。これはプレミアムロードスターセグメントの30%を超える数字である。

さらに興味深いのは、コンバーチブル文化を持たないといわれた日本のマーケットでもこのSLKは別格で、発売以来、常に世界市場で5本の指に入る販売台数を記録している。これまでにおよそ4%、つまり合計2万台以上が日本へ上陸しているのである。

また、SLKの持つオープンカーにしては類まれな利便性は、女性ドライバーを惹きつけ、これまでに販売された37%が女性の手に渡っているという。これはロードスター市場における女性比としてはかなり高く、SLKが「セクレタリー(秘書)カー」というあだ名を頂戴する原因となっている。

さて、今回発表されたSLKは2004年にフルモデルチェンジされた2世代目のフェイスリフトバージョンである。しかし、フェイスリフトと言っても、化粧直しはフロントバンパースポイラー形状、そしてディフューザー風フィニッシャーが与えられたリアエンドのわずかな意匠変更で、現行モデルのオーナーが大きく落胆するほどのものではない。またインテリアも新しくなったのはマルチファンクションステアリングホイール、そしてクロームリングを得たメーター程度だ。

しかし、旧オーナーがちょっと気になるのは、エレクトロニックプラットフォームが進化して、操作の簡単な新しいテレマチックシステム(NTG2.5)が採用され、ハードディスクナビ、高画質モニター、SDカードスロット、4GBのミュージックレジスター、さらにはオプションで音声ガイダンスが受けられるリンガトロニックが装備可能になったことだろう。

さらに新たにメカニカル可変ステアリングシステムが装備された。そしてエンジンのパワーアップ化など中身のグレードアップが行われている。

画像: SLK350。フロントロアスカート中央に大きな切り込みが入った新しい形状になり、全長が少し伸ばされた。また、リアエンドにはディフューザー風フィニッシャーが加えられている。

SLK350。フロントロアスカート中央に大きな切り込みが入った新しい形状になり、全長が少し伸ばされた。また、リアエンドにはディフューザー風フィニッシャーが加えられている。

大幅にパワーアップをしたSLK350の進化は顕著

ここまで報告すると、日本の2万人いるSLKオーナーとしては、どうしてもその先、すなわち走りの変化を知りたいと思うに違いない。そこでエンジンに変更があったSLK200コンプレッサーとSLK350を中心にインプレッションをお伝えしよう。

まずSLK200コンプレッサーに搭載されるスーパーチャージャーを装備する1.8L 4気筒エンジンは、ファインチューニングによって、最高出力が21psアップされ184ps (5500rpm)となった。その結果、0→100km/h加速は、5速ATモデルで7.9秒、最高速度は232km/hと若干向上している。

しかし、燃費は100kmあたりで1Lも向上しており、日本式に表記すると12.5km/Lとなっている。試乗した結果、5速ATモデルでは正直いって明らかな性能差は感じられなかったが、6速MT仕様では高速道路の伸びで差を確認することができた。

エキサイティングな差を見せてくれたのはSLK350だった。3.5LのV6エンジンは、排気量に旧モデルと変化はないが、新しいピストンの採用によって圧縮比を10.7から11.7へ高め、高効率化と高回転化を達成することによって、最高出力を272ps/6000rpmから305ps/6500rpmへ、最大トルクを350Nm/2400rpmから360Nm/4900rpmへと高回転、高出力タイプに改良されている。

その結果、SLK350の走行性能向上は明らかで、7速ATの7Gトロニック装備でモンテカルロ郊外のワインディングとアップダウンに富んだWRCコースを十分以上に楽しむことができた。新たに採用されたメカニカル可変ステアリングは、初めはちょっと違和感を覚えコーナーで切り込みすぎることもあったが、すぐに慣れてその恩恵を確認することができた。またメルセデスの特許となっているエアスカーフは暑がりのレポーターにはともかく、一般的なオープンエアドライブでは非常に重宝するはずである。

昨年からメルセデス・ベンツの陣頭指揮を執っているディーター・ツェッチェは、就任直後に「クルマは単に鉄とガラスとゴムとプラスチックからできているものではない!」と発言するなど、業界でも血管の中にガソリンが流れているといわれるほどのカーガイである。こうしたクルマの本質を見ることができるボスが存在することで、メルセデスベンツの製品はこれからもこの進化を遂げたSLKのように、さらにエキサイティングなものになるに違いない。(文:木村好宏/Motor Magazine 2008年4月号より)

画像: SLK55 AMGはフロントエンドとサイドにあるエアアウトレットのデザインがリファインされている。

SLK55 AMGはフロントエンドとサイドにあるエアアウトレットのデザインがリファインされている。

ヒットの法則

メルセデス・ベンツ SLK200コンプレッサー 主要諸元

●全長×全幅×全高:4110×1810×1300mm
●ホイールベース:2430mm
●エンジン:直4DOHCスーパーチャージャー
●排気量:1796cc
●最高出力:184ps/5000rpm
●最大トルク:250Nm/2800-5000rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:5速AT
●最高速: 232km/h
●0→100km/h加速:7.9秒
※欧州仕様

メルセデス・ベンツ SLK280 主要諸元

●全長×全幅×全高:4110×1810×1300mm
●ホイールベース:2430mm
●エンジン:V6DOHC
●排気量:2996cc
●最高出力:231ps/6000rpm
●最大トルク:300Nm/2500-5000rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:7速AT
●最高速: 250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速:6.2秒
※欧州仕様

メルセデス・ベンツ SLK350 主要諸元

●全長×全幅×全高:4110×1810×1300mm
●ホイールベース:2430mm
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3498cc
●最高出力:305ps/6500rpm
●最大トルク:360Nm/4900rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:7速AT
●最高速: 250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速:5.4秒
※欧州仕様

メルセデス・ベンツ SLK 55 AMG 主要諸元

●全長×全幅×全高:4115×1810×1285mm
●ホイールベース:2430mm
●エンジン:V8DOHC
●排気量:5469cc
●最高出力:360ps/5750rpm
●最大トルク:510Nm/4000rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:7速AT
●最高速: 250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速:4.9秒
※欧州仕様

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