2001年の東京モーターショーで公開された「GT-Rデザインスタディ」から7年、2005年の「GT-Rプロト」、2006年の発表宣言を経て、2007年10月についに姿を現した「日産GT-R」は世界から大きな注目を集めた。そんな中、GT-Rの試乗会が世界中のジャーナリストを集めて仙台ハイランドレースウェイで行われている。今回はその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年2月号より)

サーキットではGPSでリミッターの解除が可能

ボクにとっての日産GT-R初体験は仙台ハイランドとなった。ピットエリアに並んだGT-Rにさっそく乗り込む。「ガツン」というしっかりしたドアの閉まる音で、並みのクルマではないことがわかる。ドアも、それを受けるボディ側も、桁違いの剛性の高さを感じる。

この音はドライバーにとってハイパフォーマンスモデルを運転する前の安心感につながる。

シートポジションを合わせるためにいろいろ操作してみた。ハイトコントロールが今どき座面だけ動くタイプなのがちょっと驚き。形状はバケットタイプなのでサポート性はあるが、身体のフィット感がいまいち足りない。それは座面とバックレストが個別に動くことが原因のひとつだろう。この手のドライビングカーは、サスペンションやタイヤと同じくらいシートは重要なのに、残念なところだ。

ハンドルはチルトとテレスコピックで調整できるが、固定解除レバーはそれぞれ独立している。コラムの下にあるレバーは左側がチルト、右側がテレスコピックだ。

走り出す前にコクピットのレクチャーを受ける。サーキットを楽しく走るにはシフトレバー前方にあるいくつかのスイッチを操作する儀式が必要なのだ。

まずはトランスミッションの制御設定から始める。デュアルクラッチの繋がるタイミングを素早くするためにRモードを選択する。次にダンパーの減衰力の調整もRモードに。ボディの姿勢変化を小さく抑えるためだ。エンジンとブレーキを制御する横滑り防止装置(VDC-R)もRモードにセットした。

これらのスイッチは不用意に入ってしまうのを防ぐため、エンジンを始動してからそれぞれのスイッチを長押しする必要がある。そしてハイスピードサーキットを走る場合には、ダッシュボード中央のモニター画面を操作し、GPSによって現在サーキットにいることを証明してもらい、リミッター解除の項目で「はい」を2回押せば180km/hのスピードリミットが外れる。

さて、いよいよ準備完了。セレクターレバーをPからAレンジに入れ、そこから右に倒すとMレンジに入る。あとはパドルシフトでギアを選ぶことになるが、AレンジでもMレンジでもオーバーレブしそうになると、自動的にシフトアップしてくれるから安心だ。

ピットを離れる時、ブレーキペダルから足を離すとクリープ状態のように動き出そうとする。新車時は湿式クラッチの表面に微妙な凹凸があり、そのためわずかなクリープが出るが、1万kmほど走りこむとクリープは発生しなくなるという。

アクセルペダルを踏み込めばごく普通に加速し、そこにはスポーツカー、あるいはスーパーカーを操作する難しさは微塵もない。2ペダルだからAT限定免許を取ったばかりの初心者でも運転できるクルマなのだ。しかしタイヤが路面を掴む感触、ボディに伝わる振動、ハンドルの手応えなどすべてがしっかりした印象で、ここでも並みのクルマと明らかに違うと実感する。

ピットロード後半からアクセルペダルを深く踏み込んでいくと、タコメーターの指針を振り回すようにエンジンは軽々と吹け上がっていく。パドル操作しなくても、7000rpmのレッドゾーン入り口で自動的にシフトアップしてくれるから楽だ。開発責任者の水野さんは2ペダルにした理由を「エンジンのレスポンスがいいのでマニュアルシフトじゃ追いつかないから」と説明していたのを思い出した。それにしてもデュアルクラッチの作動は素晴らしい。これでパドルがハンドル固定式なら文句ないのだが。

今回の試乗はテクニカルかつハイスピードな仙台ハイランドのレーシングコース(1周4km)を3周ずつ3回(テスト車をチェンジして)トライするメニュー。GT-Rに初めて乗ったにもかかわらず、2周目から全開でアタックすることができた。これだけの動力性能を持っているのに、すぐに慣れたのはハンドリング特性がいいからだ。直線の終わりでブレーキング、スピードが落ちたところでハンドルを切ってターンイン、向きが変ったらアクセルオンでコーナー出口に向かって加速していくという一連の動きにクセがない。

ターンインでハンドルを切っていくと適度なシャープさでノーズは思い通りインに向いてくれる。その動きに遅れはなく、ラインをトレースしてくれる。これはトランスアクスルによる良好な前後重量バランスの恩恵だろう。

クルマの向きが変わったところでクリッピングポイント手前からアクセルペダルを踏み込むと、鋭い加速を再び体験できる。しかしその時はややアンダーステアの傾向を示す。

GT-Rは単に安定性が高いというより、アンダー傾向のモデルなのだ。そのためターンインでブレーキを緩く残しながらハンドルを切った場合、リアが少し滑ってきてもアクセルペダルを踏み込みさえすれば、直ちに加速体勢に移れる。

画像: 仙台ハイランドは高低差があり、ツイスティな難コース。ここはGT-Rの開発テストが重ねられた場所でもある。

仙台ハイランドは高低差があり、ツイスティな難コース。ここはGT-Rの開発テストが重ねられた場所でもある。

GT-Rの真価発揮はVDC-Rオフ状態か

ニュルブルクリンクでGT-Rの最速ラップタイムを記録した開発ドライバーの鈴木利男さんの横に乗って仙台ハイランドのドライビングを観察したら、ターンインでリアを滑らせて向きを変え、そこからアクセルペダルを踏み込み、少し滑らせながらコーナーを立ち上がっていった。VDC-Rはオフの状態。もしかすると、サーキット用のRモードでもまだ安定指向にセッティングしてあるのかもしれない。やはりGT-Rの真価はオフなのか、と思うが、一般ドライバーにとってはリスクが高い。

ブレーキ能力は高い。しかしそのフィーリングにはまだ改良の余地がある。制動力自体は耐フェード性も含めて素晴らしいのだが、制動感が追いついていない感じだ。バックストレッチの終わりでは200km/h、ホームストレッチの終わり、第一コーナー手前で207km/hをデジタルメーターで確認したほど速いクルマだが、ブレーキペダルを踏み込んだ時のフィールが硬く、踏み始めの制動力の立ち上がりが一瞬遅い感じになり、一定の減速をしながらさらに踏み増しした時にも反応に遅れが見られた。

「つるつるしたローターを硬いパッドで押している感触がする」とエンジニアに話をしたところ、キャリパーやブレーキパイプが予定よりも剛性が高く仕上がったので、結果的に「パッドの剛性をもう少し落とした方がいいのでは」と現在見直しをしているとのことだった。

今回の試乗でサーキット上ではブリヂストンとダンロップの2銘柄のタイヤを試すことができた。どちらもGT-R用として合格した20インチのランフラットタイヤだが、多少の違いがあった。ダンロップはハンドル応答性がシャープでコーナリング中の舵角も小さくて済んだ。さらにブレーキを残したターンインでリアの滑りが穏やかでコントロールしやすかった。ブリヂストンはダンロップと比べるとシャープさに欠け、リアの滑り量も大きめだった。

最後に一般道も走った。ダンパーをコンフォートモードにすると、凹凸路での当たり感は丸くはなるが、揺すられる感じは残るので、決して乗り心地のいいクルマとはいえない。GT-Rだから乗り心地について文句をいうユーザーは少ないだろうが、この点ではBMWのMモデルの方がはるかにいい。

GT-Rをサーキットと一般道で試乗して感じたことは、超高性能なのにあっけないほど乗りやすいということだった。走りのポテンシャルは非常に高い。さらに熟成を重ねれば、もっともっと素晴らしいクルマになる可能性を秘めている。具体的にいうと、速さだけでなく、その速度に至るフィーリングを磨き上げれば、きっと末永くつきあえるクルマになれる。(文:こもだきよし/Motor Magazine 2008年2月号より)

画像: 近代的に仕上げられたコクピット。サーキットやテストコースを走る時は、GPSが認知して180km/hリミットを解除できるというのが新しい試み。

近代的に仕上げられたコクピット。サーキットやテストコースを走る時は、GPSが認知して180km/hリミットを解除できるというのが新しい試み。

ヒットの法則

日産 GT-R 主要諸元

●全長×全幅×全高:4655×1895×1370mm
●ホイールベース:2780mm
●車両重量:1740kg
●エンジン:V6DOHCツインターボ
●排気量:3799cc
●最高出力:480ps/6400rpm
●最大トルク:588Nm/3200-5200rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速DCT
●車両価格:777万円(2007年)

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