2007年、MINIに新たなボディバリエーションが登場した。往年のMiniトラベラー、カントリーマンの伝統を受け継いだロングボディモデルで、日本ではクラブマンと呼ばれることになった。ここではデビュー間もなくスペインで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年12月号より)

小さな部品にもこだわってMINIらしさを表現

『MINI』というネーミングが示すものは単一のモデルに限定せず、ひとつのブランドとして育てていく。BMWがMINIのプロデュースを手掛けた当時に聞かれたそうしたコメントが、いよいよカタチとなって姿を現した。これまでのシリーズとは一線を画する新たなボディバリエーション、『クラブマン』が追加設定されたのだ。

MINIクラブマンのフロントセクションの造りは、2代目シリーズのそれを踏襲する。最もホットなグレードであるクーパーSのボンネットフードにのみ、従来型から受け継いだアイコンでもあるエアスクープ(ただし実際には開口をしていないダミー)が与えられるのも、ハッチバックモデルの場合と同様だ。

けれども、フロントドアから後方は全くの新規開発デザイン。そんなニューモデルのプロポーションは、ひと言で語れば「ステーションワゴン型」と呼べるもの。とは言え、当然ながらこれはMINIの一員。そこには、実用性の高さばかりを重視したワゴンデザインが施されるはずもないのは当然であるだろう。

ホイールベースはこれまでのシリーズ比でプラスの80mm。さらに、リアのオーバーハングを160mm増しているので、全長は240mm伸びた計算になる。かくも延長されたボディを、それでも「どこから見てもMINI」と表現するべく特に吟味されたのは、長く、幅広く、そして厚みがあるという特有のルーフの形状。1426mmという全高が測定されるのはBピラーの上部で、そこをポイントにほぼ水平のルーフラインと前傾したベルトラインが、後方に向かうに従って厚みを失っていくグラスエリアを構成する……というのがこのモデルのサイドウインドウグラフィックの特徴だ。各ピラーがブラックアウト化されているので、「厚みのあるルーフが浮かんでいる」ように見えるのも、MINIらしさを演じるポイントだろう。

実はそうしたデザインの実現のために、フロントドアはハッチバックモデルと同一のプレス型を用いながら、ガラスには新規開発品を採用している。「らしさ」の表現のためには合理設計によるコストダウンよりも専用デザインを優先させる。そんなMINIというブランドのポリシーが、ドアガラスという小さな部品でも実践されているわけだ。

そんなクラブマンのルックスの中で、最も多くの人の興味を引くのが、右サイドとリアエンドの2面に採用された観音開き式のドアであることは疑いない。これこそが、クラブマンが単なるステーションワゴンではないことを見た目上からもアピールする、最大のポイントというわけだ。

「スプリットドア」と呼ばれるテールゲートは小さな荷物を載せ降ろしする際の利便性を高め、「クラブドア」を称する右サイドの小さなリアドアは、ホイールベースの延長分がそのままレッグスペース増加に充てられ、大人もくつろげるようになったリアシートへの乗降を手助けしてくれる。

が、だからと言ってそうした機能を持つドアをわざわざ「観音開き」としたのは、やはり話題性作りという側面が大きいはずだ。残念なのは今後右ハンドル仕様ができても「クラブドア」は右側にしか用意されないという事柄。すなわち日本はもちろん『MINI』発祥の地であるイギリスでも、この点では涙を飲まざるを得ないことになる。

画像: 観音開きのリアドア「スプリットドア」と後席へのアクセスのため用意された「クラブドア」が特徴。クラブドアは右ハンドル仕様も右側に用意される。

観音開きのリアドア「スプリットドア」と後席へのアクセスのため用意された「クラブドア」が特徴。クラブドアは右ハンドル仕様も右側に用意される。

ホイールベースの延長で落ち着いた走り味を持つ

走りのテイストの狙いどころは「ハッチバックモデルと同様」というのが開発陣の公式コメント。すなわちこのモデルでも例の「ゴーカートフィーリング」というフレーズは現役で、実際、スペインで開催された国際試乗会に用意されたクーパーSのMT仕様は、キビキビとしたハンドリングの感覚が印象的だった。

それでも、ホイールベースの延長がピッチングの抑制に効いている、というのは教科書通りの事柄。ヒョコヒョコ感を抑えながら「ゴーカートフィール」はキープする……という、なかなか巧みなポイントを突いているのがクラブマン・クーパーSのフットワークのテイストだ。

ハッチバックモデルに対しておよそ75kgに及ぶ重量増のうち、半分はサイズ拡大の影響で半分は2カ所の観音開きドア採用によるものとのこと。もっとも、そもそもクーパーSが積む心臓の175psという最高出力は1.2トン台の重量には十分な余裕で、ハッチバックモデルに対する荷の重さは感じられない。

リアのシートバックを前倒しした際には930Lまで拡大されるラゲッジスペース容量も、後席使用時には「わずかに」260Lと、ステーションワゴンとしては「あるまじき小ささ」。しかし、そんなことは承知の上で何よりもMINIらしさの演出に腐心をしたクラブマンは「ようやくリアシートでも大人がくつろげるMINI」として、きっとまた世界で愛されていくはずだ。(文:河村康彦/Motor Magazine 2007年12月号より)

画像: もう少し荷物が積めたら、もう少し後席がゆったりしていたら、という要望に応えて登場したモデル。2017年10月26日、日本でも予約受付が開始された。クーパーが287万円、クーパーSは331万円。

もう少し荷物が積めたら、もう少し後席がゆったりしていたら、という要望に応えて登場したモデル。2017年10月26日、日本でも予約受付が開始された。クーパーが287万円、クーパーSは331万円。

ヒットの法則

MINI クーパーS クラブマン 主要諸元

●全長×全幅×全高:3958×1683×1432mm
●ホイールベース:2547mm
●車両重量:1205kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:175ps/5500rpm
●最大トルク:240Nm/1600-5000rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:6速MT[6速AT]
●最高速:224km/h
●0→100km/h加速:7.6秒
※欧州仕様

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