2007年、フランクフルトモーターショーでフェラーリ430スクーデリアがデビューを飾った。「F430の軽量高性能進化版」、「430チャレンジの公道版」とも言われた430スクーデリアはどう進化していたのか。イタリア・フィオラノのテストコースとマラネロ郊外の周辺道路で行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年12月号より)

V8の許容回転数は8640rpm、最高出力は510psに

ボローニャ空港からアウトストラーダ1号線をミラノ方面に走ると15分ほどでモデナに到着する。そこから一般道を南下し、さらに20kmほど走ってマラネロへ。フェラーリ本社と工場の脇を抜け、レストラン「カバリーノ」を右折するといよいよフィオラノのテストコースが見えてくる。

今回は430スクーデリアの試乗のために、特別にそのテストコースを走れるという。実際に430スクーデリアの開発を行った場所である。

430スクーデリアはF430の軽量進化版として登場している。ちょうど360モデナの後に設定された360チャレンジストラダーレのような存在と理解していたのだが、どうやらそんな単純なものではないようだ。

車名からFの文字が消え、スクーデリアというサブネームが追加されたことにも意味がある。スクーデリアとはイタリア語で「厩舎、チーム」といった意味。F1チームの「スクーデリア・フェラーリ」という名称が思い浮かぶことだろう。つまり、このモデル名にはF1チーム/F1マシンと深い関わりを持つという意味が込められているというわけだ。実際、このモデルの開発、セッテングにはミハエル・シューマッハーも関わっている。

430スクーデリアの軽量化は100kgにも及ぶ。F430でさえ1350kgしかないから、その軽量化が並大抵のものでなかったことは容易に想像がつく。リアのチャレンジグリルの他、随所にカーボンやチタンを使って徹底した軽量化が図られているが、トランクの内張りはそのまま残されているなど、前後重量配分(43:57)にこだわったこともうかがわせる。

V8エンジンもF430からパワーアップされたが、それに合わせて、またサーキット走行を見据えて、放熱性とエアロダイナミクスの向上が図られているのもポイントだろう。エアインテークとアウトレットは各々拡大され、ベンチュリー効果の向上を狙ってフロントセンターダクトが大型化され、それと呼応してリアのディフューザーは大きく急角度なものになっている。フェラーリのデータによれば、300km/h時のダウンフォースは310kgに達するという。これはF430よりも30kgも大きい。

しかし、もっと大きな進化をメカニズムに見ることができる。そのひとつがE-DIFF2と呼ばれるもの。F430に搭載されているE-DIFFと、599に搭載されているF1-TRACを組み合わせた新しいシステムだ。E-DIFFは瞬時に最適なLSD効果を発揮して430の走りを研ぎ澄ませたが、これに、トラクションコントロール、スタビリティコントロール、エンジンスピードコントロールなどを統合して制御するF1-TRACを組み合わせたのだ。これはF1マシンのメカニズムと同じものという。

組み合わされるトランスミッションは6速セミATのF1ギアボックスのみだが、このシステムもさらに進化している。クラッチの断続操作をオーバーラップさせることで0.15秒、最速で0.06秒のシフトも可能としている。最新のF1マシンでも0.03秒というから、もはや究極のシフトスピードと言える。430スクーデリアのこのシステムはF1スーパーファスト2と呼ばれる。

走行モードの変更はF430同様、ステアリング上のスイッチ、マネッティーノで行う。ただし、E-DIFF2の採用に伴い、これまでのアイスモードは廃止され、CTカットというモードが新設された。磁性粘流体を使った電子御ダンパーの切り替えはこのモードとはリンクせず、各モードで独自に選択できるようになった。

画像: エアロダイナミクスもさらに進化。リアディフューザーの形状が大きく変わり、エキゾーストの位置も高くなっている。

エアロダイナミクスもさらに進化。リアディフューザーの形状が大きく変わり、エキゾーストの位置も高くなっている。

フェラーリF1マシンの機構を市販モデルにそのまま投入

まずフィオラノから郊外のワインディングに出てみたが、その走りは確かに軽さを感じさせるもの。動きが軽快かつスムーズで、そのパフォーマンスから想像する気難しさはまるでない。マネッティーノ/スポーツ、ダンパー/スポーツを選んだが、F1ギアボックスは瞬時にスマートに変速を行い、心地よいパワー感を伝えてくる。ブリッピングは短くズバッとギアチェンジされる。

試しにちょっと強めにブレーキを踏んでみたが、その制動は確実でフィーリングは至って自然だった。ただ市街地での乗り心地は褒められたものではない。ところがダンパーをノーマルにしてみると乗り心地は一変。なんの問題もなく、市街の少し荒れた路面をいなす。低速でも驚くほど快適だ。「430チャレンジの公道版」、「F430の軽量進化版」というと、乗りにくいイメージがあるが、むしろその逆。軽量化が走りを快適なものにしている。

郊外に出て4000rpmも回せば室内に心地よいエキゾーストが響き渡る。6000rpm以上になればゾクゾクとした快感がこみ上げてくる。ステアリング上部に設けられた5つのLEDは、6000rpmを超えると回転数にあわせて点灯する。

ワインディングでダンパーをスポーツモードに戻すと足がキリッとする。このダンパーは本当に素晴らしい。ある程度速度を上げていくと面白いのはもちろんだが、速度を上げずとも爽快なドライブを楽しむことができるのには驚いた。

フィオラノのテストコースでは、マネッティーノ・スポーツ/ダンパー・スポーツで感触を確かめながらまず1周。次の周回ではマネッティーノ・レース/ダンパー・スポーツを試してみた。するとエンジンのピックアップも鋭くなり、シフト速度も素早くなる。ステアリングフィールも絶妙で、自然とラップタイムは短縮していたようだ。

カーボンブレーキやトラクションコントロールの威力は絶大で、コーナー手前で一気に減速してアクセルを踏み込むと実に巧みに反応する。「430スクーデリアのポテンシャルを存分に楽しんでください」という配慮から実現したサーキットラン。3周の走行の中でCSTカットを試すことはできなかったが、ドライブは実に愉しかった。

間違いなく、これは単なるF430の軽量進化版ではない。おそらく次期V8モデルのコンセプトを盛り込んだ作品として語り継がれるモデルになるのだろう。(文:松本雅弘/Motor Magazine 2007年12月号より)

画像: F430と比較すると、20psパワーアップし、100kg軽量化されたフェラーリ430スクーデリア。各パーツはグラム単位で徹底的に煮詰められたという。

F430と比較すると、20psパワーアップし、100kg軽量化されたフェラーリ430スクーデリア。各パーツはグラム単位で徹底的に煮詰められたという。

ヒットの法則

フェラーリ 430スクーデリア 主要諸元

●全長×全幅×全高:4512×1923×1199mm
●ホイールベース:2600mm
●車両重量:1250kg(EU)
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4308cc
●最高出力:510ps/8500rpm
●最大トルク:470Nm/5250rpm
●駆動方式:MR
●トランスミッション:6速AMT
●最高速:320km/h
●0→100km/h加速:3.6秒
※欧州仕様

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.