2007年は世界的にパワーユニットに大変革が起きた年と言われている。Motor Magazine誌は2007年10月号の特集「パワーユニット戦略の焦点」の中で、当時の最新BMW直列ユニットに注目。同じ3シリーズの325iと320iをテストし、それぞれの魅力を検証している。今回はそのレポートを振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年10月号より)

こだわり抜いた濃厚な味わいが気持ちいい6気筒

その名も「バイエルンエンジン製造会社(Bayerische Motoren Werke)」とするだけに、BMWは常にエンジンに関するニュースに事欠かないメーカーである。ここ数年の話題を振り返っても、6気筒エンジンの軽量化や直噴ツインターボの採用、さらに直噴リーンバーン化など、ドラスティックとも言える変更を矢継ぎ早に行っている。

さらに、エンジン本体のみならずパワートレーン全体の今後の戦略に対してもBMWは活発な動きを見せており、ハイブリッドやアイドルストップ、リーンバーンなど、様々なCO2削減策を提案して実現しつつある。

BMWファンであればこうしたニューテクノロジーに興味が向かうのは当然と言えるものの、やはり僕らにとって一番身近で現実的なのは、現行の日本導入モデルに搭載されているエンジン。それも自然吸気の6気筒、もしくは4気筒ではないだろうか。今回はこれらを同じボディで試すことにより、それぞれの特性と味わいの違いを改めて感じ取ることにした。試乗に連れ出したのは325i Mスポーツと320i Mスポーツパッケージの2台である。

まずは、BMWの顔とも言える6気筒エンジンを搭載する325iから行こう。このモデルに搭載されるN52系エンジンが本国で発表されたのは2004年の6月。3シリーズでは翌年日本導入が始まった新型のE90(セダン)から搭載されている。

その後、ツインターボのN54型エンジンが上陸を果たし、本国では広域でリーンバーンを行うN53系が発表されるなど直噴系の勢力拡大が急なため、耳ざといBMWファンにとってはすでに新鮮味が薄れたような気になるかも知れないが、それは最近のBMWの極めてアクティブなエンジン戦略のいわばデメリットとも言うべきもの。N52B25Aはその3L版であるN52B30Aとともに、いまなお極めて斬新でニュースに富んだパワーユニットである。

まず注目しておきたいのは、エンジン本体の大幅な軽量化だ。シリンダーライナーとウォータージャケット周辺にアルミニウム合金を使い熱応力に備えつつ、外側のブロック全体をマグネシウム合金とすることにより、このエンジンは先代3シリーズのメインユニットだったM54系に対し約10kgの軽量化を果たし、単体重量161kgを達成している。

軽さが運動能力や経済性に多大な恩恵をもたらすことは言を待たない。さらに前後の重量配分にこだわるBMWでは、メインエンジンの6気筒が軽くなることによりパッケージ面にも少なくない影響を与えるはずである。

ちなみに、この後で登場した直噴ツインターボのN54B30Aは、過給化に伴う高出力に対応するため、シリンダーブロック材質を総アルミニウムとしている。同じ時代に存在する直列6気筒の素材をわざわざ換えてくるという手間の掛け方は、エンジンに強いこだわりを持つBMWならではの決断だ。

さらに、6気筒エンジンとして初めてバルブトロニックを採用したのもN52系エンジンの大きな特長だ。吸気バルブの開閉にパワー制御を委ね、スロットルバタフライを廃することでポンピングロスの低減による燃費向上を図るのがこの機構の最大の狙いだが、同時に可変バルブタイミングシステムのダブルVANOSとの組み合わせで状況に応じた動弁制御が行え、トルクアップや排ガスのクリーン化など様々なメリットも得られる。加えて、吸気バルブの外側はバタフライで吸入を絞られた負圧環境ではなく大気圧。吸抵抗がなく、アクセルレスポンスが向上するという利点も見逃せない。

実際に325i Mスポーツを走らせた印象は、全回転域において五感に語りかけて来るエンジンそのものの味わいが極めて濃厚であった。

シフトをDレンジに入れてアクセルペダルを踏み込んだ瞬間のトルク感はさほど強烈ではない。しかし重ったるさもまったくない。1.5トン強の車重にはこれで十分と思わせる動力性能だ。しかもその時点からエンジンの感触が非常に良い。スルスルと滑らかで、澄んだアイドリング時のフィールそのままに回転が上がって行くのである。これはまさに回転バランスに優れたBMWの直列6気筒ならではの感覚だろう。

余談になるが現在、直列6気筒を量産するメーカーは極めて少ない。全長が長く搭載性に難があり、衝突安全性能の確保などを考えると効率が悪いからだ。BMW以外ではボルボを中心とするフォードグループが最近新しい3.2Lの直列6気筒を開発しているが、このエンジンもまた、クランクシャフトの芯がキチッと出たような精緻で滑らかな回転フィールを味わわす。

ところで、これまでの3シリーズは、325iの上に330iがあった。あった、と過去形にしたのは、FR系のトップモデルが直噴ツインターボ搭載の335iとなり、3L自然吸気エンジンのN52B30Aは4WDモデルの330xi専用となったからだ。330iは、現時点では日本国内のラインアップに存在しないのである。

この3L自然吸気エンジンはさすがにパンチがあり、スタート時の蹴り出しはかなり痛快だった。それでいて飛び出し感は巧みに抑えてあり、ジェントルな所作を崩していないあたりもさすが。僕は330xiは未経験なのだが、こうした良さはこのクルマにも間違いなく受け継がれているはずだ。

それと較べると325iは力感自体はややマイルドになる。しかしそれが逆に良さを際立たせている部分もある。330iは高回転域まで一気に豪快に回って行くが、反面、その領域ではややフィール面に荒さも感じさせた。しかし325iはどこまでもスムーズ。トルクが細い部分は最終減速比を下げることで手当をしており、バルブトロニックの採用によるレスポンスの良さも手伝って、その滑らかな回転フィールを存分に楽しめるのだ。

例えば325iでティップシフトを駆使しながら5000rpm以上をキープしていると、クォーンと響く爽快なエンジン音や、レブリミットの7000rpmまで微妙に変わって行く伸び感/パンチに酔いしれて、しばし時間を忘れるほどである。以前よく言われた「 シルキーシックス」という表現は、絹のような滑らかさを表すと同時に、その心地良い風合いを楽しむという意味あいもあったはず。現在、そうした持ち味が最も濃厚なのは、この325iに搭載されたN52B25Aだと思う。

なお、このN52B25Aは、マネージメントシステムの変更によりパワー/トルクを少し抑えた仕様で323iにも搭載される。力感はやや劣るもののこちらもエンジンとの対話感はやはり濃密で、しかも325iに対し車両価格が48万円抑えられている。このバリューは大いに魅力的だと言えよう。

画像: BMWならではの魅力にあふれた直列6気筒エンジンを搭載する325i M-Sport。

BMWならではの魅力にあふれた直列6気筒エンジンを搭載する325i M-Sport。

軽やかさとハンドリング、それは4気筒ゆえの持ち味

では、4気筒の方はどうだろうか。320iに搭載されるN46B20B型エンジンは1シリーズにまず搭載され、E90型3シリーズにも2005年の導入当初から採用されている新世代の直列4気筒だ。アルミブロックでバルブトロニック採用という基本形態は前世代のN42B20Aと同じ。違いは最高出力が7ps上がり、200Nmの最大トルク発生回転数が3600rpmとやや落としてあること。機構面ではバルブトロニックがムービングパーツを軽量化した第二世代に進化している点である。

そのフィールは実に軽やかだ。6気筒とは異なるコロコロとした音質のエンジンサウンドによるところも大きいが、クルマ全体のパッケージとして軽快な印象が強い。325iがマグネシウムエンジンブロックの採用で軽くなったとは言え、4気筒の320iとの重量差はやはりしっかり50kgはある。これが効いているのは間違いない。

しかもN46B20Bは望外に低速トルクが潤沢で、2000rpmあたりでもスルスルッと前に出て行く。こういった蹴り出しの良さは4気筒であること、そしてバルブトロニックの恩恵だ。

325iと較べても、実用域の粘りに関してはそれほど大きな差は認められない。さすがに中〜高速域の力感では排気量に勝る6気筒に及ばないし、滑らかさ、音質なども4気筒はややビジネスライクなものになる。しかしこれは較べる相手が悪い。BMWのストレート6は、ことフィール面に関しては世界の6気筒エンジンの中で最も好ましいものの一つなのだから。

比較対象を他社の4気筒としてみるとどうだろう。2Lの4気筒エンジンは国産車の主力クラスでその数も豊富にあるが、回転フィールの緻密さ、特に高回転域のスッキリとした回り方に一日の長があるように感じられた。

宿敵とも言えるメルセデス・ベンツは新型のC200に、よりパワー指向の1.8Lスーパーチャージドエンジンを搭載してきており、絶対的な動力性能においては一歩先を行かれた感がある。しかしフィール面ではまだまだN46B20Bの優位性は揺るがない。C200は確かに全域トルクフルだが、引き換えに大きめのコンプレッサー音が感じられるし、アクセルレスポンスも特にシャープではないのだ。

320iはパワーでは劣るのだが官能性能の造り込みが見事だ。フケ上がりは極めてスムーズで6500rpmのリミットまでまったく澱みがないし、レスポンスも鋭い。高速域ではそれなりに引っ張る必要があり、べースエンジンらしい非力さも感じさせるが、例えばこれがよりダイレクトにパワーを楽しめるMT仕様だったら、最高に楽しいスポーティセダンとなりそう。実際、BMWは320iセダン/クーペに日本でも6速MT仕様を用意している。ややマニアックな設定なのは確かだが、それも4気筒に対する自信の一端なのだと思う。

画像: 排気量1995ccの直列4気筒エンジンを搭載する320i M-Sportパッケージ。

排気量1995ccの直列4気筒エンジンを搭載する320i M-Sportパッケージ。

つくづく感じさせられる3シリーズの見事な完成度

325iと320i。つまり6気筒と4気筒のどちらがベストかは、やはりそう簡単には結論が出ない事柄だと思う。それほどに双方とも魅力的。エンジン自体が持つキャラクターがこれほどに鮮明なのは、まさにBMWならではだ。

それにもうひとつ、3シリーズに乗るたびに感心させられるのが、かさ張る6気筒エンジンを積んでもなお、大人4人の移動に苦痛をまったく感じさせない優れたパッケージングである。

ボンネットを開けると、50:50の重量配分のためにフロントミッドに置かれるエンジンは、6気筒/4気筒ともトーボード寄りの深いところにある。これだけを見ると、いかにもキャビンスペースをいじめているように感じられる。だがコクピット内では、エンジン後方のトランスミッションの膨らみも含めて、身体に何かが抵触するようなことが一切ない。直列エンジンのスリムさを生かすことにより、ドライバーがエンジンを抱き込むが如き無駄のない密度の高いレイアウトが行われているのである。

前席の乗員を後退させていないから、後席の足元スペースにも望外の余裕が得られている。全高が1425mmのためシートポジションも相応に低くなるが、頭上や肩周りの余裕も十分だ。スポーツセダンらしい包まれ感も魅力でこそあれ、閉塞感とはなっていない。しかもトランクルームも450Lと十分な余裕を確保している。

こうした高密度パッケージを見るにつけ、BMWは「まずエンジンありき」でクルマを作っているのがわかる。自らが最善と考える直列6気筒エンジンが積めて、なおかつ居住性も決して犠牲にはしない。こうした高邁な思想を持つメーカーが作るエンジンが、4気筒/6気筒とも味わいでライバルをリードするのは当然だと言えよう。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2007年10月号より)

画像: 「6気筒か、4気筒か」、BMWのパワーユニットはどちらも素晴らしく、それぞれに魅力があるから、不変のテーマになる。

「6気筒か、4気筒か」、BMWのパワーユニットはどちらも素晴らしく、それぞれに魅力があるから、不変のテーマになる。

ヒットの法則

BMW 325i M-Sport 主要諸元

●全長×全幅×全高:4525×1815×1425mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1510kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2496cc
●最高出力:218ps/6500rpm
●最大トルク:250Nm/2750-4250rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●0→100km/h加速:7.7秒
●最高速度:242km/h
●車両価格:595万円(2007年)

BMW 320i M-Sportパッケージ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4525×1815×1410mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1460kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1995cc
●最高出力:150ps/6200rpm
●最大トルク:200Nm/3600rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●0→100km/h加速:9.7秒
●最高速度:215km/h
●車両価格:453万円(2007年)

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