我が国でダートトラックレーシングの世界に足を踏み入れてしばらく経てば誰しも、日本中どこにでも身近にあるそこそこ広大なスペース・・・小学校の校庭や河川敷の野球場が、このスポーツにとってはとてつもなく魅力的なプレイング・フィールド?と思えてきます。そこにはどのくらいの実現可能性と課題があるのでしょうか。本日はそんな "机上の空論" 的世界に想いを巡らせてみましょう!

勝手に走り→そのまま去るとかの"アウトロー的衝動"は論の外ですけど!

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。ダートトラックレーシングの本場アメリカで、長い歴史のなか脈々とこのスポーツが発展してきた重要なファクターのひとつに、競技の場の多様性をあげることができるでしょう。

限られた期間で路面を集中整備しマイルレースの会場とする競馬場・四輪モータースポーツ(ミジェットカー・スプリントカー・ダートストックカーなどなど)との共用が前提の1/2マイルオーバルトラック・さらにショートトラックやTTレースの舞台として選ばれることがある所謂 "マルチパーパス・アリーナ" ・・・野外ライブやロデオショー、農機具見本市をはじめ様々な屋外アクティビティを幅広く受容する "お祭り広場" ・・・が全米各都市にそれぞれ星の数ほど存在したことは、まさに発祥と発展の地に相応しく最良のコンテクスト = 背景だったと言えるでしょう。

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翻って現代の我が国の町には、いわゆる "運動場" に類するフィールドを除けば、このような "集って何かする" ことをおおらかに捉えゆるやかな目的とした場、というものがほとんど用意されていません。モータースポーツカテゴリーのひとつとして決して認知度が高いとは言えないダートトラックレーシングに限らず、なにかの熱烈愛好家たちは様々な条件をクリアした占有地・・・往々にしてヒトの多く集う場 = 町の中心とかからはけっこう離れます・・・へと篭り、同好の士の集いとして密やかにその活動へと勤しむスタイルを選ばざるを得ません。

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東西の近現代都市・広場形成論みたいな?小難しい話はともかく、校庭とか野球場とか、他の活動やスポーツのための場を、幸運にも我々がダートトラックライディングのために借り受けることができたとして、走る前にクリアしなければならない課題は少なくとも5つ (またはそれ以上) あります。

①奏音・・・他者にとっては騒音

ダートトラックは他のモータースポーツに比べ、(ささやかなスケールのショートトラック・オーバルならば) はるかに少ないスペースで競い合うことが可能ですが、全開全閉を繰り返す競技の特性上、大きな騒音をいとも簡単に生み出しうることを、自覚する必要があります。

アメリカン・スタイルの直管みたいなマフラーは言わずもがな、エンジンの常用回転域が高いため、ナンバー付き車種のメイカー純正ノーマル品でも充分耳障りに感じる人は多いようです。

とは言え全開・全閉を全く避けて走るのでは動作の本筋から離れますし、様々な音量抑制策にも物理的限度があります。まずは音出し可能な立地を条件にフィールドを探すほうが賢明かもしれません。

②水・・・潤沢な蓄えが必要なはず

走路の状態をより良く整え、埃の発生を抑えるためには、気候条件とコンディションに応じた適度な撒水が必要です。タイヤが空転し過ぎて埃を舞い上げるような路面は、当然ながら前に進まないマシンから一層の騒音を生じます。加えて夏の強い陽射しや冬の乾燥に痛めつけられた路面では、たとえ200mに満たない小トラックであっても、一日に数トンの水を消費する場合すらあります。

全く水やりなしでのトラック管理は困難です。雨水汲み置きなのか池や川から引き込むのか・・・上水道利用は量的にハードルが高いし・・・充分な水の確保こそ必須条件と言えるかもしれません。

③埃・・・実は音同様にケアが不可欠

愛好家が集う人里離れた、いくら音や埃を生んでも誰からも文句のない場所ならいざ知らず、あなたがビビっと来た校庭のある小学校のそばには、普通は民家・集落があるはずです。運動場は周囲の人々に便利の良い立地に作られるもの。手塩にかけて育てた野菜や洗濯物や愛車にどっさり埃が積もるのを笑って許せる心の広い人だって、あまり多くはないでしょう。

画像: ③埃・・・実は音同様にケアが不可欠

④後始末・・・走行後の現状復帰策?

走る前よりその後の方が場所の様子が大いに乱れてしまうなら、借り手の満足などともかく貸す側はあまり嬉しくないはずです。タイヤ痕が轍となればそこに雨水が溜まって、均質だった地面に泥濘んだスポットを作ってしまいます。

かつて筆者は、オーバル形式での走行テストのために、とある未舗装の駐車場を借り受ける機会に恵まれましたが、その場所には降雨後の水たまりを防ぐため、ほんの僅かな雨勾配がつけられていました。完全に平らなほうがより気持ちよく走れるという話なら・・・ということでこちらのオーナーは重機で傾斜を削ってくださいましたが、降雨後に雨水が流れ去らないことでやはり泥濘が生じ、のちのち原状を取り戻すまでに大層手間がかかったそうで、なんとも申し訳ない想いをした苦い経験があります。もちろん理由はそのことだけではありませんが、次の機会は得ることができませんでした。

⑤周辺への影響・・・"集う理由" をストレートに共有できるか

忌々しいCOVID-19が、その土地を訪れる人たちと迎える人たちとの間に、決して少なくない温度差を生じさせているこの世相ではなお困難なことかもしれませんが、場所に集うこと自体に人々が共有できる意味を与え、地域や周囲を良いかたちで巻き込んだ新たなムーブメントを生み出せるかどうか、が (バイク乗る→楽しい、みたいなピュアーな欲望からは一見かなり遠く思えたりもしますけど) これからの時代には重要なことになっていくようにも思います。

常設のモータースポーツ専用施設でない場所を舞台に、新たなイベントを創出するのなら、一定期間での集中的な運用も高い効果を上げるかもしれません。それぞれ単独で開催してきたレース・スクール・練習走行会といったコンテンツをいったん整理し、再構築することもきっと有用でしょう。

今日から先はもし校庭を見て気持ちがグラっときたら、様々な角度から検討して実現可能性をリアルに探ってみたりして。もし皆さんからも筆者にご要望があれば、COVID-19後を見据えつつなにかしらのお力添えもさせていただきますよ。

ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

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