LA在住の映画ジャーナリストとして活躍中の筆者が、“SCREEN”のインタビューなどで毎月たくさんのスターに会っている時に、彼らの思わぬ素顔を垣間見ることがあります。誰もが知りたい人気者たちの意外な面を毎月一人ずつお教えする興味シンシンのコーナーです。今回は、「ペイン・アンド・グローリー」(2019)にて見事オスカー主演賞候補にノミネートされたアントニオ・バンデラスに話を伺いました。

アルモドヴァル監督にスターぶった態度を一喝されて謙虚な心を取り戻せたんだ

会見の日、アントニオ・バンデラスは黒いレンズのメガネをかけて現れ、ハリウッドのスターとしては、かなり当たり前の“ フラッシュライトが目に悪いからね ”といった一種のアクセサリーなのだが、『いやあ、昨日から目の周りが腫れて痛くなってね。申し訳ないが目を隠す眼鏡をかけている』と謝るのであった。「ペイン・アンド・グローリー」(2019)はメンターのペドロ・アルモドバルのほとんど自伝映画、アントニオは主人公のペドロを大熱演して見事にオスカー主演賞候補に。

画像: 「ペイン・アンド・グローリー」

「ペイン・アンド・グローリー」

『とてつもなくリッチな物語で、僕は現存する人物を演じるという難題、それが友人だからもっと難しい、その上当人がカメラの向こうで監督をしているという、さらなるチャレンジの連続だった。実は9年前「私が、生きる肌」(2011)で、22年ぶりにペドロの作品に出ることになった時、ハリウッドの水に慣れて、何でも知ってる、自信たっぷり、スターぶって傲慢な態度の僕にペドロはリハーサル中から何とも嫌な顔を見せていた。

「君の演技はアメリカでは通用するだろうが僕にとっては全く使い物にならない。一体何をしていたのかね? 何を考えてアメリカ人みたいな演技をするのかね?」と言われたのだが僕は面と向かって対立したくなくて黙って彼の指導に従った。内心、こん畜生と思ったのだが、クリエイティブな緊張が新鮮でもあったね。そして完成作を見て仰天、彼の言う通りだと思って、僕は謙虚な心を取り戻すことができたんだ。

そういう背景から今回の僕はペドロに対してのリスペクトから、初心に戻って、パレットを洗い流してクリーンな状態で撮影に入り、ペドロのオルター・エゴ(知らない部分の人格)を描いてみようと思ってね。

麻薬中毒からゲイのロマンスなどなど、センセーショナルな逸話が盛り込まれているだろう。スクリーンでは嫌という程、暴力やら激しいベッドシーンを見せているけれど、これがゲイのキッスとなると観客の反応がぐんと凄くなって、カンヌでの試写では会場がシーンとなって人々が息を飲む音まで聞こえてね。まだまだ同性のキッスには特別な注目が集まるみたいでおかしかった』

心臓発作を起こして入院した時、ベテラン看護婦から聞いた言葉をいま実感している

世界中が騒いだメラニー・グリフィスとの結婚と離婚(1996~2015)の後、ドイツ人とオランダ人の混血のニコール・ケンペル(1981年生まれ)と交際、2年半前にアントニオが心臓発作を起こした際、彼女の献身的な看護ですっかり回復したのである。

『入院中にベテランの看護婦から、心臓はただの臓器ではない、感情の倉庫なのだから、これからあなたはしばらく寂しくなるけれど、その後、前より賢くなりますよと言われて、いやその通りだと今実感している。退院してから自分の人生での順序を考えて、家族のため、自分のために最も有意義な選択をするようになった』

アントニオ・バンデラスの名前がついた香水について聞くと、『もう23年間も関わり合っていて今では20種類以上出ているんだよ。色々な香りを付けては楽しんでいるから、どれか一つとは決めてない。友人などに他のブランドをもらっても返すことにしている』と嬉しそうな表情で話してくれた。

Photo by GettyImages

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