2007年のジュネーブオートサロンでマセラティ グラントゥーリズモがお披露目されて大きな話題となった。クアトロポルテで培ったノウハウを活かした開発されたピニンファリーナデザインの流麗なクーぺは、はたしてどんな個性を持って登場したのか。ここではイタリア・ボルツァーノで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年9月号より)

クアトロポルテのM139プラットフォームをベースに開発

ここ最近の好調が伝えられるマセラティ社だが、その中心を担うモデルがクアトロポルテだ。全長5mあまりのグラマラスなデザインの4ドアボディに、フェラーリ譲りといえるV8エンジンを搭載。2003年のデビュー以来、そのスポーティな性格と豪華なサルーンという二面性を備えた、他に例を見ないエレガントさは日本でも広く受け入れられた。当初は、自動変速機構を備えた2ペダル式MT「デュオセレクト」のみの設定だったが、今年に入ってからよりスムーズなドライビングを可能とする6速AT仕様のクアトロポルテ・オートマチックが登場、さらに門戸を広げることに成功している。

新しいグラントゥーリズモは、そのクアトロポルテ・オートマチックのM139プラットフォームを活かす形で開発されている。というよりも、クーペ版のグラントゥーリズモを出すという前提の元で、クアトロポルテ・オートマチックそのものが開発されたのだろう。ホイールベースは125mm短くされ、リアのオーバーハングは66mm短縮された。

フロントにミッドシップされる4.2L V8DOHCエンジンのすぐ後ろに、最高許容回転数7200rpmのZF製6速ATを装備。V8エンジンはウエットサンプ方式の新世代仕様で、カムカバーには鮮やかなブルーの結晶塗装が施される。このあたりは、ベースとなったクアトロポルテ・オートマチックと同様だ。前後の重量配分は49:51と、こちらもクアトロポルテ・オートマチックと同じ。ちなみに、トランスアクスル方式であるデュオセレクト仕様のクアトロポルテの前後重量配分は、47:53である。

画像: 特徴的なCピラー形状と左右4本出しのテールパイプ。19インチのタイヤ&ホイールが標準仕様で、20インチ仕様がオプション設定だ。テールランプには96個のLEDを使用。

特徴的なCピラー形状と左右4本出しのテールパイプ。19インチのタイヤ&ホイールが標準仕様で、20インチ仕様がオプション設定だ。テールランプには96個のLEDを使用。

驚くほどにスムーズ、幅広い層へのアピール

「ドライビングポジションをきちんと取って下さい。回頭性がとても優れているので、きちんとハンドル操作ができるように腕の位置とシートの位置を調整して下さい」

イタリア北部、ドロミテ地方の州都、ボルツァーノ。その中心のワルテル広場で、試乗前のドライバーズミーティングが始まった。説明してくれるのは、かつてレイトンハウスやフェラーリでF1にも参戦したイタリア人ドライバー、イヴァン・カペリ氏だ。聞くと、もう7年ほどマセラティのドライビングアドバイザーとして仕事をしているという。

ハンドル位置を合わせると、ちょっと前よりのポジションになる。自分自身にクッションが備わるせいか、スマートな体型を前提としたデザインのシートに着座すると、腰のあたりがやや押され気味の印象となる。これもクアトロポルテと同じだ。

キーをひねると、瞬時にV8エンジンは始動した。運転席だと、エンジン音は思いのほか遠くで鳴っているような印象。つまり、静かだ。だがその音質は、つい軽くブリッピングしたくなるタイプで、やはり血筋を感じさせる。

Dレンジにシフトして、クアトロポルテ同様に軽い力で操作できるハンドルを握って走りだす。スタート地点のボルツァーノは標高265mだが、試乗コースは標高2240mのセラ峠越えを含むもの。高速道路(アウトストラーダ)あり、急峻なワインディングあり、一般道ありという設定で、全行程は約140kmと短いが、その性格を感じるには十分だ。また、2人一組でのドライブなので、自分でハンドルを握るのは半分の70kmほどという計算になる。

アウトストラーダは交通量が多く、制限速度130km/hの流れに乗って走る。100km/h巡航は、6速だとエンジンはわずか1950rpmあたりでゆるゆると回っているだけだ。低い速度から加速するときでも、せいぜい4000rpmあたりまで回せばアッという間に制限速度に達してしまう。

7000rpm以上まで軽く回るこのエンジンの本領を発揮させるには、場所を選ぶ必要があるが、それでもエキゾチックな感覚は十分に伝わってくる。坦々とした流れの中で、時折りパドルシフトでエンジン回転の上げ下げを試してしまう。

ボディ幅は広いが、前方に広がる視界はよく、見通しが利く。しかし、アウトストラーダを下りてワインディング路に入っていくと、フロントピラーの太さが気になりだした。

左ハンドルの右側通行だから、右コーナーでは問題ない。だが、ヘアピンに近いような左コーナーだと、ちょうど対向車線が死角に入ってしまうので、向こうからやってくるクルマを確認するためには身体を起こす必要があった。もう少し自分の手と足が長ければ、ポジションをもっと後方に下げられるから気にならないのかもしれないが。

次々と表れる大小のコーナーに対して、そのノーズは軽く向きを変えてくれる。電子制御によってショックアブソーバーの設定を変更できるオプションのスカイフックサスペンションは、ノーマルモードがちょうど良い設定と感じた。スポーツモードにすると、直接的な硬さが感じられて、持ち味であるしなやかさが薄れてしまう印象だ。

それと同時にエンジンマネージメントシステムも変更され、レスポンスがノーマル比で20%アップする設定となるが、これはワインディングではちょっと鋭敏過ぎてなじめなかった。ノーマルのままで十分にスポーティな気分を満喫できる。ブレーキも、これくらいの走りでは何ら不満を感じることはなかった。

そして、助手席で過ごすグラントゥーリズモも、また快適だった。上質で落ち着いた雰囲気の内装とともに、3000m級の山々と深い谷が織りなす素晴らしい景観を満喫しながら、気持ちいいスポーツドライブを脇で味わう。とても、いい気分だ。

リアシートにも座ってみたが、足もとの広さなども予想していたよりもちゃんと確保されており、それなりに快適。4シーターとしての活用にも、十分に応えてくれるだろう。

1946年にマセラティが初めてのロードカーとしてデビューさせたモデルが、初代グラントゥーリズモとなる「A6 1500GTピニンファリーナ」。そのモデル名のとおり、ピニンファリーナの流麗なスタイリングを備え、そして長距離のドライブを快適に、ハイパフォーマンスとともに実現できるというコンセプトを持って登場した。その思想は、現代の最新グラントゥーリズモにもそのままあてはめることができる。

日本での発表は今秋の東京モーターショーで、予想される車両価格は1500〜1600万円前後とのこと。早ければ、年明け早々からデリバリーが開始される予定だという。(文:香高和仁/Motor Magazine 2007年9月号より)

画像: インテリアにはイタリアの名門インテリア会社「ポルトローナフラウ」のレザーが使用され、その色は10種類の中から選ぶことができる。なおコラム固定式のパドルシフトは左がダウン、右がアップ。

インテリアにはイタリアの名門インテリア会社「ポルトローナフラウ」のレザーが使用され、その色は10種類の中から選ぶことができる。なおコラム固定式のパドルシフトは左がダウン、右がアップ。

ヒットの法則

マセラティ グラントゥーリズモ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4881×1847×1353mm
●ホイールベース:2942mm
●車両重量:1780kg (乾燥重量)
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4244cc
●最高出力:405ps/7100rpm
●最大トルク:460Nm/4750rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●最高速:285km/h
●0→100km/h加速:5.2秒
※欧州仕様

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.