グローバルで2万台以上のセールスを記録し、ラグジュアリー SUVのセグメントをリードし続けてきたベンテイガが改良され、新世代になった。(Motor Magazine 2020年10月号より)

フェイスリフトという名の大幅デザイン変更

ベントレー ベンテイガがデビューからおよそ5年を経て、初のマイナーチェンジを受けた。ご覧のとおりかなり大規模なフェイスリフトだが、見る人が見ると、これこそベンテイガがいかに大きな成功を収めたかを物語る証拠だというのだから面白い。

というのも、私はとあるプレミアムブランドのデザイナーから、こんな話を聞いたことがあるからだ。「フェイスリフトは基本的にそのモデルで得た利益を原資として実施されるので、期待以上の台数が売れればフェイスリフトの規模も自然と大きくなりますし、もしもセールスが芳しくなければフェイスリフトのスケールも小さくなるのが原則です」。このエピソードを心に留めながら、新型ベンテイガのフェイスリフトがどのような規模で実施されたかを確認してみよう。

まず、フロントグリルは従来型よりも明らかに大型化されて「背丈」も30mmほど伸びた。これはグリル周辺にあったボディパネルを廃することで実現したものだが、このパネルがなくなったことでボンネットは水平に長く伸び、あわせてその高さも上昇している。つまり、グリルだけでなくボンネットも新設計されたのだ。

一方で、ヘッドライトはコンチネンタルGTで登場したクリスタルカットを思わせるデザインに改められるとともに、この部分が斜め後方にスラントした形状に変更された。しかも、ヘッドライト部分からフロントフェンダーまではひとつのボディパネルなので、ここもすべて新設計。ちなみにチンスポイラーまわりのデザインもこれまでとは完全に別物である。

画像: 従来型より大幅に大型化された新設計フロントグリル。ボンネットも新設計だ。

従来型より大幅に大型化された新設計フロントグリル。ボンネットも新設計だ。

ラグジュアリーSUV市場を開拓、現在も先頭を走る

チーフデザイナーのステファン・ジーラフ氏によればフロントドアはキャリーオーバーだが、リアフェンダーの張り出しは左右で10mmずつ拡大されているので、これにあわせてリアドアもデザインが見直されたはず。むろん、リアフェンダーも新設計で、さらには楕円形のテールライトが埋め込まれたクラムシェルデザインのテールゲートも、新たに型を起こして作られたようだ。

つまり、外板で旧型から流用されたのはフロントドアとルーフくらい。それ以外の、ほぼすべてのボディパネルを刷新したのだから、そのコストのかけ方は尋常ではない。私は3月にイギリスで行われた新型ベンテイガのスネークプレビューに参加し、そこでプロダクトラインディレクターのクリス・コール氏と立ち話する機会を得たが、このとき私が「大変なコストが投じられたフェイスリフトですね?」と訊ねたところ、「ええ、非常に大規模なものでした」と実に率直な答えが返ってきた。それくらい今回のフェイスリフトは力のこもったものなのだ。

その理由は明快で、ベンテイガのセールスが文句なしに好調だったから。ちなみにこの5年間の販売台数は2万台以上で、今やベントレー全体の45%を占める同社の屋台骨に成長している。これが引き金となってランボルギーニ ウルス、ロールス・ロイス カリナン、アストンマーティンDBXといった強豪が次々と誕生している。

ラグジュアリーSUV市場の規模は、まだベンテイガが唯一の存在だった2016年には約4000台だったが、ライバルがほぼ出そろった19年には1万1000台まで急拡大した。それでも引き続き年間4000台以上を売るベンテイガが、このセグメントで首位を独走しているという。

前出のコール氏は、競争が激化したことも大規模なフェイスリフトを実施した理由のひとつだと説明する。「競争は間違いなく激しくなっています。そこで私たちは最新のデザインDNAに基づいてスタイリングを見直し、その商品力を高めることにしました」。

画像: デジタルメーター、10.9インチタッチ式ディスプレイも採用、センターフェイシアはBENTLEYウイング形状だ。

デジタルメーター、10.9インチタッチ式ディスプレイも採用、センターフェイシアはBENTLEYウイング形状だ。

インテリアもベントレーの最新の文法でリニューアル

日本自動車研究所の城里テストコースで5カ月振りに再会した新型ベンテイガは、コンチネンタルGTやフライングスパーと共通のデザイン言語を得て、ますますきらびやかで、スポーティで、そしてエレガントなスタイリングに生まれ変わっていた。

インテリアもベントレーの最新の文法に従ってリニューアルが図られている。メーターパネルはフルデジタル式に、ダッシュボード中央のセンターディスプレイは10.9インチに拡大されたほか、このディスプレイ上部には従来のブルズアイに換えてフライングBを連想させるウイング形状のベンチレーターが設けられた。

これはテキサスダクトと呼ばれるもので、もともとは92年デビューのコンチネンタルRで登場した装備。その目的は、真夏のテキサスでもリアパッセンジャーに涼しい空気を送り届けることにあった。これとよく似たベンチレーターは新型フライングスパーにも採用されているが、ベンテイガでも同様に後席をより快適にするとともにインテリアに華やかさを添える効果をもたらしている。

今回はテストコース内の外周路を走行する機会も得られたが、路面が滑らかなうえに直線路主体のコースだったため、旧型との違いを感じ取るのは極めて困難だった。それでも、新型のほうが足まわりの動きがよりしっとりとした乗り心地に思われたほか、路面からの振動によってキャビンにこもり音が発生する症状が減り、一段と澄んだ静けさを味わえるようになった。また、シフト時の繋がりがより滑らかになり、リアの接地感もいくぶん高まったように感じられたが、この辺は確信が持てない。改めてロードテストを行って確かめたいところだ。

もっとも、今回のフェイスリフトによってベンテイガのキャラクターを一変させることを、そもそも開発陣は意図していなかったらしい「もっともラグジュアリーで、驚くほどパフォーマンスが優れているSUV。それがベンテイガです」とコール氏。「その意味では紛れもないベントレーであり、新型になってもベンテイガのポジションは変わっていません」それは絶対王者だけが口にできる自信と誇りに満ちた言葉であろう。(文:大谷達也)

画像: まずはV8ツインターボエンジンから日本へ導入、後にプラグインハイブリッドやW12のベンテイガスピードが続く。

まずはV8ツインターボエンジンから日本へ導入、後にプラグインハイブリッドやW12のベンテイガスピードが続く。

■ベントレー ベンテイガ主要諸元

●全長×全幅×全高=5125×1998×1742mm
●ホイールベース=2995mm
●車両重量=2416kg
●エンジン= V8DOHCターボ
●総排気量=3996cc
●最高出力=550ps/6000rpm
●最大トルク=770Nm/2000-4500rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT
●車両価格(税込)=2142万8000円

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