初代ポルシェ911ターボカブリオレがリリースされたのは1987年のこと。以来ちょうど20年となる記念すべきタイミングで投入されたのが、2007年デビューの997型911ターボカブリオレだ。初代モデルに比べ最高出力は実に180psもアップしていた。ここではドイツで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年8月号より)

ダブルリアウイングが大きなダウンフォースを発生

そのルックス、そしてそこに採用の様々なハードウエアはもちろん「911ターボクーペ」のそれに準じたもの。電動式ソフトトップの42kgという重量を含め、クーペに対するウエイトハンデイは70kg。ポルシェ車の重量が(堅牢設計のカイエンを除けば)ライバルに対して圧倒的に軽いというのはすでによく知られるところだが、実際に1.7トンを下回る新型911ターボカブリオレの重量にもそうした良き伝統はしっかり反映されているわけだ。

ところで、「ターボクーペに準じたルックス」という紹介に誤りはないものの、このモデルのデザインには実はオープンモデルであるがゆえの独自の細工が加えられた部分も存在する。「クーペのそれよりも30mm高くせり上がる」という電動式の可動リアウイングがそれだ。

120km/hに達すると作動をするこのアイテムは、ベース部分とウイング部分の「2枚羽効果」でリアアクスルにダウンフォースを発生。軽い揚力を発生するフロントアクスル側とのバランスで、高速時には安全サイドであるアンダーステア方向へと導くチューニングも担っている。

ルーフクローズ時の空気抵抗係数(Cd値)はターボクーペと同数値の0.31をマーク。こうしてリアアクスルにダウンフォースが作用するのは、「量産型カブリオレでは世界で唯一」であるという。

画像: 電動式ソフトトップを備えるウエイトハンデイは70kg。ベース部分とウイング部分の「2枚羽効果」でリアアクスルにダウンフォースを発生する電動式可動リアウイングは、120km/hに達するとせり上がる。

電動式ソフトトップを備えるウエイトハンデイは70kg。ベース部分とウイング部分の「2枚羽効果」でリアアクスルにダウンフォースを発生する電動式可動リアウイングは、120km/hに達するとせり上がる。

クーペと同レベルの感触、超一級の快速性能を誇る

それにしても・・・。冒頭に挙げた初代モデルに比べれば、その最高出力は実に180psものアップ。20年の間に0→100km/h加速タイムを1.6秒も縮め、50km/hも高い最高速を公称するこのポルシェ最のオープンモデルの速さときたら、それはやはり尋常なものではない。

特筆に値するのは、スタート前のアクセルONによっ予めブースト圧を高めたストール発進が可能で、それゆえ発進加速タイムではMT仕様以上に素早い値を叩き出すAT(ティプトロニック)仕様のシームレスかつ強力無比な加速力。フルスロットルでは超一級のターボスポーツカーらしい「シートバックに身体が押さえつけられる加速」を演じる一方、パーシャルスロットル域ではマナーの良い実用モデルのような、ターボラグを意識させないトルク豊かな穏やかな加速感も両立させている。

走りのシーンによってはキックダウンに多少のタイムラグを感じ、Dレンジでの通常走行時には2速発進が選択されるゆえ、発進時には今ひとつ力感に欠けるなど「オーソドックスなトルコンAT」の域を出ないティプトロニックの機能性は、率直なところ今や時代の最先端を行くものとは思えない部分もある。が、それでも前述のようなジキルとハイド的な加速のシーンを、右足に込める力加減ひとつでたやすく表現してしまう実力の高さは認めないわけにはいかない。ポルシェジャパンではすでに日本への導入モデルをこのAT仕様に限ることを発表しているが、911ターボカブリオレというモデルが狙うキャラクター的には、この仕様の設定は確かに妥当なものと言える。

オープン化のためモノコック構造の一部がカットされたボディには、サイドシルに補強材が追加され、サイドシルとピラー接合部のプレートに板厚が通常の2倍の部材が使用される。「ねじり剛性と曲げ剛性は2+2のオープントップ車としてはトップレベルの値」が謳われてはいるが、その剛性感はクーペと同等というまでには及んでいない印象だ。

とはいえ、それが運動性能に影響を及ぼしている実感は全く受けないし、「40km/h程度までは上下Gがきついし60km/h付近までは『しなやか』という表現を使う気にはなれないが、そこから先は速度が高まるに従って望外とも思えるフラット感が得られる」という快適性も、ターボクーペと同等という印象。

中間に合成ゴム製の「遮蔽層」を挟んだ3層構造のソフトトップは、クローズ時にはノイズの侵入を効果的に防ぎ、オープン時には脱着式のウインドストッパーを装着してサイドウインドウを上げておけば、(ルックス的には今ひとつスマートとは言えないものの)後方からの不快な風の巻き込みをほぼ完全にシャットアウトしてくれる。

前輪駆動系を持つ関係でフロントのトランクスペースは限られるし、やはり67Lという燃料タンク容量も航続距離的には「もう少し欲しい」と思わせられる要因となる可能性は少なくない。

が、恐らくはセカンドカー、サードカー所有が当然であるはずのこのモデルの顧客層にとっては、そうしたことは切実な問題とはならないのかも知れない。そんなオーナーのライフスタイルまでをイメージさせるのが、このすこぶる快速で、とびきりゴージャスなポルシェの最新カブリオレなのだ。(文:河村康彦/Motor Magazine 2007年8月号より)

画像: クーペモデルと同じく、電子制御電磁作動式マルチプレートクラッチ(PTM)採用の4WD方式を採用。高い安定性を誇る。

クーペモデルと同じく、電子制御電磁作動式マルチプレートクラッチ(PTM)採用の4WD方式を採用。高い安定性を誇る。

ヒットの法則

ポルシェ 911ターボ カブリオレ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4450×1852×1300mm
●ホイールベース:2350mm
●車両重量:1690kg(EU値)
●エンジン:対6DOHCツインターボ
●排気量:3600cc
●最高出力:480ps/6000rpm
●最大トルク:620Nm/1950-5000rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:4WD
●最高速:310km/h
●0→100km/h加速:3.8秒
※欧州仕様

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.