70年以上にわたりランドローバーはオフロード車を作り続けている。その中心的な存在であり、歴史そのものと言えるのがディフェンダーである。今回は、その新型のデビューを長年待ち続けていた石川氏が試乗する。(Motor Magazine 2020年10月号より)

ルーツは1948年誕生のランドローバーシリーズ1

ランドローバーディフェンダー。この名に特別な憧れを抱く人は少なくないと思う。オフロード界の雄とされる同ブランドの中でももっとも堅牢で走破性に優れ、その歴史を紐解けば1948年に生み出されたランドローバーシリーズ1にまで遡ることができる。つまり創世期の車名が後に社名になったクルマでもあるのだ。

ランドローバーは83年のシリーズ3改良時に、リーフからコイルスプリングへ、パートタイムからフルタイム4WDへとメカニズムを大幅に進化させ、90年に晴れて車名がディフェンダーとなる。この頃、モデル数が増え混乱を避けるため個別名が与えられたのだ。

しかしディフェンダーの行く末は茨(いばら)の道だった。ラダーフレームにアルミボディの車体や、ガソリンV8と直4のターボディーゼルなどが用意されたパワーユニットが、年々厳しくなる安全基準や排出ガス規制のクリアに苦労したのだ。そして13年、ランドローバーはついに初代ディフェンダーの生産終了を決意。最終モデルは16年1月、ソリハルの生産ラインから送り出された。

ことほど左様に、設計の古い重量級オフローダーを今の世に存続させるのは難しい。クラスがあれだけの大改革を行ったのも、三菱パジェロが惜しまれつつラインナップから外れたのも、それを端的に物語っている。そしてもちろん、ランドローバーもディフェンダーはブランドの要だけに、ブランクを置いたが存続に動いた。

画像: ランドローバーブランドの中でひときわ輝きを放つディフェンダー。

ランドローバーブランドの中でひときわ輝きを放つディフェンダー。

最新のADASを備えてディフェンダーが復活

まず行われたのが車体構造の一新。フレーム構造と決別し、より軽く、ねじり剛性は3倍となるアルミモノコックのアーキテクチャー「D7x」を採用した。ボディタイプはホイールベースをインチ表示する歴史に則り、3ドアの「90」と5ドアの「110」の2タイプ。110では2名分のサードシートも追加できるが今回試したのは2列5人乗り、ミドルグレードであるSEをベースに、豊富に用意されたオプションをセットアップした一台だった。

駆動は伝統のフルタイム4WDD。センターとリアデフの調節などにより「草・砂利・雪」「泥・轍」「砂地」「岩場」「渡河走行」と走行モードを切り替えるテレインレスポンスは、プリセットモードのみならず、各機能を任意設定できるコンフィギュラルテレインレスポンスというシステムとなる。

なお、現在導入されるディフェンダーが搭載するのは300ps/400Nmの2Lガソリンターボエンジンのみ。いずれディーゼルやPHEVも加わると思うが、現状は単一エンジンで、トランスミッションは8速ATとなる。

他の注目点は、エマージェンシーブレーキやアダプティブクルーズコントロール、レーンキープアシストなどADASの一気の進化と、スマートフォンのように直感的に使え、反応速度も速い最新世代のインフォテインメントを初搭載したこと、以上の点が挙げられる。

さて、対面した第一印象は「随分とポップな雰囲気になったな」だった。丸目2灯(新型は2/3円)のヘッドライトに伝統を感じるし、ボディの4隅が掴みやすい横方向には水平/前後縦方向は垂直の基本形状、ショートオーバーハングによる各障害角の確保など、オフロードカーの不文律は守っているが、板を纏っているが如き先代と比べると、各部に優しい曲面が使われ格段にモダンな雰囲気が漂う。これなら今どきのSUV的に気安く付き合えるかも? と思ったのは、大きな間違いであった。

このクルマ、走行操作系やスイッチ類を別とすると、どこを動かすにも体力が必要なのだ。ドアノブ自体結構な重さだし、開閉操作にも相応の身体的トルクが要求される。横開きのリアゲートは、ロック機構こそ電子式で軽いものの、重いスペアタイヤを吊ってダンパーで支えているため開閉には力が要る。こうして5枚のドアを開け閉めし居住性やシートのアレンジなどを確認したら、肩で息をしている自分がそこにいた。

ステップがもう一段欲しいと思うほど高い位置にあるコクピットに、室内に豊富に設けられた把手を手掛かりによじ登る。インテリアは各パネルやモールをトルクスのボルトで締め込んでいて道具感満点。果たしてこれは演出なのか、機能的必然に迫られた物なのか。

着座位置はキャブオーバー1BOXほどの高さでともかく見晴らしが良い。ボンネット中央にパワーバルジがあるため左先端は少し見にくいものの、右ボンネット先端ならはっきりわかるコマンドポジションも健在だ。その恩恵か全長5018mm×全幅2008mmの割に、持て余すような巨大感はない。スペースの余裕は前後席ともにゆったり。後席はダブルフォールド式で完全フラットになる。

画像: インテリアは21世紀の新型らしいもの。ADAS、コネクティビティ機能も最新世代のものだ。

インテリアは21世紀の新型らしいもの。ADAS、コネクティビティ機能も最新世代のものだ。

伝統は継承しつつ新しいオフローダー像を作り上げた

巨体に対してやや線の細い4気筒サウンドとともに走り出す。ガソリンエンジンとしては相当にパワフルなユニットだが、何せ車重が2320kg(車検証表記値)もあるので、キビキビと走らせようとするとアクセルペダル開度は深くなりがち。時にリミットの6400rpmに迫ることもあった。100km/h巡航時の8速での回転数は1750rpm。現代のクルマとしてはやや高めだ。高トルクなディーゼル版も待たれる。

一方で乗り心地やハンドリングに関しては隔世の進化を遂げた。モノコック化により、ボディの動きに位相差があるフレーム構造独特の弱点は完全に消滅。車速感応のバリアブルレシオを備えたラック&ピニオン式電動パワステも、スッキリと正確な操舵感を生んでいる。

この辺はシリーズ1から70年近い歴史を持つ先代と比べること自体が酷なのだが、ともかく動きに一体感があり、乗り心地や静粛性といった快適面にも配慮した新型ディフェンダーは、先代とは別の、新しいオフロードカー像を作り上げたと思う。となれば次に興味が集まるのは、その卓越したオフロード性能。ランドローバーで最高性能を誇るモデルだけに、ぜひ次回はそこを試してみたい。(文:石川芳雄)

画像: 2L直4ターボインジニウムエンジンを搭載。300ps、400Nmを発生する。

2L直4ターボインジニウムエンジンを搭載。300ps、400Nmを発生する。

■ランドローバー ディフェンダー110SE主要諸元

●全長×全幅×全高=5018×2008×1967mm
●ホイールベース=3022mm
●車両重量=2261kg
●エンジン= 直46DOHCターボ
●総排気量=1997cc
●最高出力=300ps/5500rpm
●最大トルク=400Nm/1500-4000rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT
●車両価格(税込)=732万円

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