月刊『オートバイ』で書評コーナーを長年に渡り担当している小松信夫がライダーにおすすめの一冊を紹介します。

『地獄のハイウェイ』著:ロジャー・ゼラズニイ(1972年・早川書房)

古本屋でオートバイに乗った男女と謎のメカが描かれたカバーイラストに惹かれてジャケ買いしたR・ゼラズニイ『地獄のハイウェイ』。

大戦争後に荒廃した世界のアメリカで、ペストが流行するボストンを救うため、カリフォルニアから大陸横断して血清を運ぶ話…道はない竜巻が吹く怪物は出るギャングが襲撃と、一筋縄でいきませんが。と聞くとマッドマックスっぽいけど、原著は1967年発表なんでこっちが先。血清を運ぶ車(表紙下の謎メカ)に乗る主人公ヘル・タナーは犯罪者(登場人物紹介に、それだけしか書かれてない!)なハーレー乗り、というか元ヘルズエンジェルス。

「…そして両膝のあいだで脈打ち、身ぶるいし、爆発するパワー、両手ににぎったハンドル、葉巻の煙にまじって鼻を刺す、焼け焦げたタイヤと排気の匂い。もうそれはない。永久に。」な〜んて、ホンマもんのワルにしては妙に詩的にハーレーへの愛を語るシーンはある意味萌えます。

あとコレ『世界が燃えつきる日』の原作なのね、どうでもいいか?

『世界が燃えつきる日』というのは、1977年に公開されたアメリカの映画でして。日本でも公開されたんだけど、個人的にはその時代のテレビには毎週各局にあった「洋画劇場」的な番組で何度も見たんで、鮮明に記憶に刷り込まれてて。

監督は航空パニック『エアポート'75』を撮ったジャック・スマイト、タナーを演じた主演俳優は、『ビッグ・ウェンズデー』でスターダムにのし上がる直前のジャン・マイケル・ヴィンセント。80年代のTVムービー『超音速攻撃ヘリエアーウルフ』の主役、と言う方が分かりやすいかも。しかし正統派イケメンなんで、ヘルズエンジェルスって感じではないよなぁ。

テレビで『世界が燃えつきる日』を見た当時は原作の『地獄のハイウエイ』なんて、もちろん読んでないし知らなかった。原作を読み終えた今思い返してみると、原作テイストはあまり感じられない(あちこち原作由来の要素は盛り込まれてるけど)。

だからダメというのではなく、当時イヤっていうほど乱造されてたハリウッド製のB級SFエンタメ映画だけに突っ込み所は多いんだけど、公開時のド派手な宣伝とかの影響か、な〜んか印象に残っちゃって。表紙の謎の流線型メカが特撮映えするギミック満載のごっつい装甲車・ランドマスターになっちゃうとか、全体に漂うあのB級感が子供心に好きだった。

でも、原作にあったなんとも遣る瀬ない雰囲気は皆無…。タナーのポエムどころか、ハーレーのハの字も出てこなかったんじゃないかなぁ(なんかオフロードバイクは出てきたけど)。ま、最後に見てからン十年経つんで、ちょっと曖昧。

文・写真:小松信夫

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