2006年8月に日本に上陸した2代目アウディ A6 オールロードクワトロ。Motor Magazine誌ではそのプレミアムで高品質な個性に着目。アウディ A6 オールロードクワトロが見せる「オフロードもこなすのに都会的」という不思議な魅力に迫っている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年5月号より)

「すべての道」を快適かつ高速で走破する

残念ながら、日本ではアウディA6オールロードクワトロの本当の価値が認識されているとは言い難い。

何でも外国のものの方がいいなどとは断じて言わないが、A6オールロードクワトロのスゴさと価値は、まだ伝わり切れていないのではないか。単に「車高のちょっと高いA6アバント」と思われているフシもあるし、アウディのプレスインフォメーションにも「アバントとSUVのちょうど中間に位置づけられ」と記されている。

冗談じゃない! A6オールロードクワトロという車名を、唱えてみて欲しい。「すべての道」である。

どんな山奥にも公共事業が行き届いている日本では、交通量がほとんどないような道でも、ほぼきれいに舗装されている。そのことの是非はここでは問わない。しかし、広い世界では、舗装されている道路は交通量があるところにしか敷設されていないところの方が多いのだ。

先進欧米諸国でも、日本のようにほとんどの道が真っ平らに舗装されているわけではない。ましてや、それ以外の国々では、舗装されていない道の方が普通だったりする。

舗装と未舗装の違いは大きい。ふだんは踏み固められた未舗装路面でも、雨が降り、大型車両が通ったりすれば、轍や穴がすぐにできてしまう。放っておくと、それらは深さを増し、乗用車の腹を擦るくらいになっていく。雨が降れば、水溜まりとなり、後にはぬかるみが残る。

轍や穴、水溜まりを避けながら走らなければならない時は、最低地上高が高いと都合がいい。エンジンのオイルパンや燃料タンクなど、クルマの底にある大事なものをヒットさせずに済むからだ。

踏み固められていない雪の上を走る時にも同様だ。雪の抵抗は思いの外に大きく、クルマの底のどこかが擦れることで、いとも簡単に前に進まなくなる。

画像: A6オールロードクワトロが備える基本性能の高さを日本で最大限に実感できるのは、積雪期の高速道路上かもしれない。

A6オールロードクワトロが備える基本性能の高さを日本で最大限に実感できるのは、積雪期の高速道路上かもしれない。

走破性能と快適性能の両立が本質的価値

タイヤの径の大きなSUVならば、結果的に最低地上高が高くなる。しかし、SUVほどの大径タイヤを用いないとすれば、最低地上高を上げるしか方法はない。運転しながら最低地上高を簡単に変更できるようにしたのが、A6オールロードクワトロの真骨頂である。

最近のSUVは、ずいぶんとオンロード性能を向上させているが、大径の幅広タイヤに起因するボディの大きさゆえに、開発も使い方もオフロードに軸足が置かれている。

A6オールロードクワトロは、SUV並みのオフロード走破性能と、ステーションワゴンボディを用いることによるオンロード性能を両立しようとしている。

舗装されていなくても、道は道。すべての道を、快適かつ高速で走破するためにアウディが採ったのが、5段階に最低地上高を変更することができるエア式の「アダプティブサスペンション」だ。先代オールロードクワトロでは4段階に変更できた最低地上高が、現行型では1段階増え、5段階となった。

高い順に「リフト」「オールロード」「コンフォート」「オートマチック」「ダイナミック」から選ぶことができる。選択は、シフトレバーを囲むように設置されているスイッチ群の中の「CAR」を押し、モニター画面に表示された5つのモードの中から選び、MMIのメインスイッチを押すだけでよい。エアサスペンションのポンプが作動して、ボディが上下する。

その5つのモードは、単純な5段階ではなく、よく整理されている。基本となる2つのモード、「オールロード」が未舗装路面を中心に、「オートマチック」が舗装路面を中心に走ることを前提として設定されている。その前後の「リフト」「コンフォート」「ダイナミック」は、それぞれ目的と役割が明確な場合に用いればよい。

「オールロード」モードでは、0〜80km/hまでは190mmの最低地上高に設定。最低地上高の設定だけでなく、未舗装路でのショックを和らげる乗り心地も確保される。

未舗装路が終わり、路面が舗装され始めたとする。スロットルペダルを踏み込んで、徐々にスピードを上げていく。A6オールロードクワトロは、80km/hを超えると自動的に最低地上高を15mm下げる。さらに加速して120km/hを超えると、追加で20mm下がり、155mmとなる。

そして、快適だった舗装も途切れ、再び未舗装路を走らなければならなくなったとする。賢いA6オールロードクワトロは、今度は逆の順序で速度の低減にシンクロさせて、最低地上高を20mm、15mmと上げていく。

つまり、「オールロード」モードではその名の通り、舗装状況を問わずに、ほとんどの道を走るために速度に合わせて自動的に最低地上高を変更していく。

同じ働きを、最初に基準となる最低地上高と速度域を変えて行うのが「オートマチック」モードだ。155mmで走り出し、120km/hを超えた状態が30秒以上続くと、15mm下がって140mmとなる。適応する速度域と最低地上高の設定範囲が広いのが「オールロード」モードで、狭いのが「オートマチック」モードだ。

「リフト」モードは、最大の200mmの最低地上高に設定され、30km/hを超えると「オールロード」モードに自動的に切り替わる。設定する時だけMMIで選択操作を行わなければならないが、30km/hを超えてそれが必要なくなると、自動的にキャンセルされる。この点も、実によく考えられていて使いやすい。

「コンフォート」モードは155mmに固定され、走行速度による最低地上高の自動的変更は行われない。その代わり、最も快適なダンピング特性に設定される。高速道路など、舗装状況が変わらない状況下で、乗り心地を最優先して走りたい時のためのモードだ。

「ダイナミック」モードは、スポーティなダンピング特性に設定され、ロールが抑えられ、最低地上高は140mmに下げられる。これ以上低くなることもなければ、上がることもない。ダンピングを増やしたことによって上下動が抑え込まれ、動きがシャープになる。ただ最低地上高を上げ下げするだけでなく、ダンピング特性まで連動させてしまうところが流石だ。

A6オールロードクワトロのアダプティブサスペンションは、舗装路と未舗装路のどちらも走れる両面性と同時に、パフォーマンスと快適性の両立を狙い、実現している。

画像: どんな道も走破できるというでけなく、目指したのはどんな道も快適に走破できること。インテリアの仕上がりは最高レベル。

どんな道も走破できるというでけなく、目指したのはどんな道も快適に走破できること。インテリアの仕上がりは最高レベル。

どれだけのリアリティを備えているかという意味

「ダイナミック」モードと「コンフォート」モードのハンドリングと乗り心地の違いは明瞭で、4.2Lガソリン直噴V8エンジンの44.9kgmもの大トルクを活かしたスポーティな走りっぷりと、エアサスペンションのソフトな乗り心地の両面を満喫することができる。ただし今回の試乗車は、まだ走行880kmの新車ゆえの硬さが抜けていないのかもしれないが、舗装のつなぎ目や突起物を乗り越えた時に鋭いショックを伴っていたので、積極的に「ダイナミック」モードを選んで走る気にはならなかった。

日本仕様のA6オールロードクワトロのエンジンは2機種。4.2L V8と3.6L V6。いずれも、気筒内にガソリンを直接噴射するFSI方式で、高出力と低燃費の両立が図られている。

V8のトルクは強烈で、1950kgもの重量級ボディを感じさせない加速を見せる。特に発進加速は強烈だ。人間も荷物もたくさん乗せて彼方を目指すような旅に出る時には、実に頼もしい。

パドルによるマニュアル変速が可能な6速オートマチックトランスミッション「ティプトロニックS」も、これまで通り使いやすい。

4輪駆動システムは、セルフロック式センターデファレンシャルを備えた「クワトロ」システム。今回は機会がなかったが、以前、先代(こちらはA6が冠せられない)オールロードクワトロで、オフロードコースの泥路面の急勾配を上ったことがあるが、それは見事なものだった。上り斜面の途中でいったん停止し、そこから走り始めたところ、少しもズリ落ちることがなく上り始め、驚かされた。

50%ずつ前後輪に配分されていたトルクが、瞬時にセンターデファレンシャルを介して最適に振り分けられた結果だった。

新型はエンジン、トランスミッション、4輪駆動システム、アダプティブサスペンションなど、基幹をなすメカニズムは先代をリファインし、ボディはひと回り大型化され、動力性能は向上した。

エクステリアはシングルフレームグリルが大きく印象を変えているが、黒いオーバーフェンダーやフロントのエアダム、ステンレス製の前後アンダートレーなどがイメージを継承している。

先代にはなく、現行型で新たに設けられて重宝するのはラゲッジスペースの「フィックスキット」だ。ラゲッジスペースのフロア左右に2本のカーゴレールが通っていて、その間に伸縮自在のロッドとテンショニングストラップを、さまざまな方向に張ることによって荷物を固定することができる。ラゲッジネットと併用すれば、固定方法は無限とも言えるほど多様で、これで固定できないものはないだろう。

たとえハードな路面をハイペースで駆け抜けることができても、積み荷にダメージを与えては意味がない。そんな「悪路走破性能」なんて、絵に描いた餅にしか過ぎない。

またアダプティブサスペンションはセルフレベリング機能も有しているから、どんなに重い荷物を積み込んでも車高を一定に保ってくれる。

このクルマは、ユーザーが大陸横断のような旅に出発することを本当に念頭に置いて開発されている。悪路走破性能にリアリティがあるのだ。僕も、東京からポルトガルのロカ岬まで走り抜けたユーラシア大陸横断紀行には、これで行きたかった。

A6オールロードクワトロは、そのプレミアム性のほとんどを「悪路走破機能」によって体現している希有なクルマだ。それもSUVのような、これ見よがしなものではなく、必要な時にだけ機能させる。

このクルマの価値のすべては、なかなかわかりにくいのも無理はない。先代は、日本で2174台しか販売されなかったのだから。(文:金子浩久/Motor Magazine 2007年5月号より)

画像: 精巧なアダプティブサスペンションでオフロードにも対応。さりげなく、快適に走破する。

精巧なアダプティブサスペンションでオフロードにも対応。さりげなく、快適に走破する。

ヒットの法則

アウディ A6 オールロードクワトロ 4.2 FSI 主要諸元

●全長×全幅×全高:4935×1860×1490mm
●ホイールベース:2845mm
●車両重量:1950kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4163cc
●最高出力:350ps/6800rpm
●最大トルク:440Nm/3500rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:4WD
●車両価格:992万円(2007年)

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