「T-34レジェンド・オブ・ウォー」の大ヒットを受け、再注目されつつあるロシア映画。近年はこれまでのお堅いイメージを払拭する、ハリウッド顔負けのエンタメ作品が続々と作られています。大躍進の理由を探ってみましょう!(文・井上健一/デジタル編集・スクリーン編集部)

伝説の戦い、ついに終結!
「T-34レジェンド・オブ・ウォー 最強ディレクターズ・カット版」

2020年7月31日公開/ツイン配給

画像: 2020年7月31日公開/ツイン配給

通常版(1時間53分)から78分増の3時間11分で公開される“完結版”。よりマニアック&エモーショナルに改訂された日本語字幕にも注目!

2019年10月の「T-34レジェンド・オブ・ウォー」公開時、誰が今の状況を予想しただろうか。公開後間もなくSNSなどで人気に火が付き、1ヶ月も経たずに20分以上の映像を追加した「ダイナミック完全版」が公開されて勢いが加速。結果、ロシア映画の日本国内興収歴代No.1となる大ヒットを記録した。

DVD/ブルーレイがリリースされた今もその人気は衰えず、7月31日に3時間11分の「最強ディレクターズ・カット版」が公開される。これは、最初の劇場公開版よりも80分近く長いバージョンで、初めての人はもちろん、今まで繰り返し見た人も、全く新たな映画として楽しめるに違いない。

多くの芸術家を輩出したロシアは映画史においても重要な役割を

画像: 「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」

「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」

そんな旋風を巻き起こしている熱血戦車アクション「T-34レジェンド・オブ・ウォー」を生み出したのが、東欧の大国ロシア。本作だけでなく、ロシアでは今、最先端のVFXを駆使したハリウッド顔負けのエンターテインメント映画が次々と製作されている。

ロシアと言えば、作曲家チャイコフスキーや文豪ドストエフスキーを生み出した芸術の国。映画の歴史においても、ソビエト連邦時代を含めてその果たした役割は大きい。

1920年代にセルゲイ・エーゼンシュタインらが提唱した「モンタージュ理論」は、今や映画演出における基本中の基本。それを実践した「戦艦ポチョムキン」(1925)は、名作として名高い。

演出家コンスタンチン・スタニスラフスキーが体系化した演技法「スタニスラフスキー・システム」は、数多くのハリウッドスターが実践する〝メソッド演技〞に繋がった。

また、米ソ冷戦の最中、国家の威信を賭けて送り出した超大作は、ハリウッド映画を凌ぐ空前のスケール感で今なお見る者を圧倒する。アカデミー賞外国語映画賞に輝いた「戦争と平和」4部作(1965〜67)、第二次世界大戦の対ドイツ戦を描いた「ヨーロッパの解放」5部作(1970〜71)など、広大なロケーションに無数のエキストラや兵器類を配置した戦闘シーンの迫力は、二度と実現できないだろう(なお、「戦争と平和」のセルゲイ・ボンダルチュク監督の息子が、「アトラクション制圧」(2017)などの監督、フョードル・ボンダルチュク)。

画像: 「アトラクション 制圧」

「アトラクション 制圧」

この他、「惑星ソラリス」(1972)、「ノスタルジア」(1983)のアンドレイ・タルコフスキー、「太陽に灼かれて」(1994)のニキータ・ミハルコフ(「T-34レジェンド・オブ・ウォー」の製作も担当)らが、映画監督として世界的に評価されてきた。

文芸路線からエンタメ大国へ変貌を遂げた理由とは?

画像: 「アンチグラビティ」

「アンチグラビティ」

このように、映画史に確かな足跡を残してきたロシア(ソ連)映画だが、長い間「重厚」「文芸路線」など、堅いイメージが付きまとったのも事実。それが今や、エンターテイメント映画大国に変貌しつつある。そこには様々な理由が考えられるが、ここでいくつか挙げてみたい。

最大の要因は、やはり冷戦の終結だろう。1991年にソ連が崩壊して冷戦が終結したことで、それまで触れる機会のなかったハリウッド映画が一気に流入。若い頃にそれらを見て育った世代が時を経て、作り手として活躍する時代になった。

ロシア映画躍進の先駆けとなった「ナイト・ウォッチ/NOCHNOI DOZOR」(2004)のティムール・ベクマンベトフ監督を筆頭に現在、エンターテインメント映画の担い手はこの世代が中心だ。

さらに、90年代中頃から映画でVFXが多用されるようになると、ロシアにもVFX会社が誕生。「T-34レジェンド・オブ・ウォー」には、「バーフバリ王の凱旋」(2017)を手掛けたVFX会社〝Film Direction FX〞を中心に、「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」(2019)などのハリウッド大作に参加したスタッフが名を連ねている。そういった作品での経験が国内にフィードバックされ、技術レベルを引き上げたに違いない。

つまり、長年積み上げた映画制作の伝統に若いクリエイターの台頭が重なり、現在の活況が生まれたと言えるのではないか。「T-34レジェンド・オブ・ウォー最強ディレクターズ・カット版」はもちろん、その他の注目作にも触れて、ぜひその勢いを感じてほしい。

正義漢もチンピラ風もイケます!最新ロシア映画のキーパーソン
アレクサンドル・ペトロフ

画像: “未体験ゾーン”でアンコール上映もされた「ザ・スパイ ゴースト・エージェント」

“未体験ゾーン”でアンコール上映もされた「ザ・スパイ ゴースト・エージェント」

「T-34~」でカリスマ性あふれるイヴシュキンを演じたペトロフはロシアで今最も人気の俳優。日本でも「T-34」の公開を皮切りに、リュック・ベッソン監督作「ANNA/アナ」、“未体験ゾーンの映画たち2020延長戦”でも二作品が上映されるなど知名度が上昇中!待機作は“ロシアのペレ”と呼ばれた伝説のサッカー選手を演じる『ストレリツォフ』(原題)など多数。日本公開されることを願うばかりだ。

画像: アルバトロスより 2020年9月2日DVD発売 ©Kargo Films, 2019

アルバトロスより 2020年9月2日DVD発売

©Kargo Films, 2019
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