2007年のジュネーブオートサロンで5シリーズのフェイスリフトが発表されている。そのポイントは、直噴リーンバーンエンジン、最新仕様の6速AT、ブレーキ回生エネルギーシステム、スタート&ストップシステムなどによるエフィシエント・ダイナミクスの追求。同時に行われた1シリーズのフェイスリフトとあわせて行われた国際試乗会から、新しい530iのテストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年5月号より)

直噴リーンバーンを採用した新しい3L直6ユニットを搭載

2003年に登場した4世代目のBMW 5シリーズは、その1年前に現れた7シリーズほど過激ではないが、新時代のBMWデザインフィロソフィがわかりやすく表現されているモデルだ。比較的保守派の多いアッパーミドルクラスの中で、確固とした支持を受けながら、その存在感と異彩を放っている。

この5シリーズが4年目を迎え、フェイスリフトと同時に新しい6気筒エンジンが与えられた。ニューエンジンはBMWが「エフィシエント・ダイナミクス」と呼ぶ新しい戦略に基づくもので、120i用と同様に、限られたエネルギーを効率良く使いながら高い性能も維持するという、二律背反を克服する技術チャレンジの賜物である。

今回テストした530iに搭載されているエンジンは、マグネシウム・アルミニウム合金でできたクランクケースを持つN52型ガソリン直列6気筒をベースに、直噴リーンバーンプロセスを与えたN53型である。200バールの噴射圧を持ったピエゾ式インジェクターの2回噴射によってリーンな部分とリッチな部分を形成して着火を容易にし、同時にドイツ、および欧州走行状況のほとんどの領域でλ(空気過剰率)=3のリーンバーンドライブを可能にしている。

燃費も、従来型530iがEUドライブモードで100kmあたり8.8Lだったのが7.7Lとなり、これはCO2排出量に換算すると、マイナス12.5%の効果となる。しかもそれでいながら、最高出力は272psと14psも向上しているのだ。

一方、ボディ周辺のフェイスリフトは、この種の方程式に則って行われている。すなわち、まずはヘッドライト、クリアガラス内にはポジションライトに代わって、2個のヘッドライト周辺がリング状に光るライトシステムが採用された。またターンシグナルはLED式となった。

バンパー下のエアインテークの形状は、1シリーズと同じように両脇が上に切れ上がった形状になった。これまでのように「ムッ」としているのではなく、口元がほころんで笑っている表情になったのである。キドニーグリルはちょっと大きくなり、そのメッキフレームの出っ張りがボディ面と同じになって、作りの良さが感じられるようになった。さらに後ろに回るとリアライトがLED式に代わり、何やら扇子を半開きにしたような模様にレンズが光るようになった。

インテリアは基本的にはこれまでのモデルとほとんど変わらないが、ステアリングホイールのスポーク部にメッキが施されたり、ドアトリムが豪華になるなどのデコレーションの他に、小物入れが使いやすくなった。またATのセレクターレバーは、ブラウン製のシェーバー、あるいは携帯電話のような形になった。いかにもハイテクっぽいが、ボタン操作や独特な動きは、使い始めにはやや違和感があった。

画像: バルブトロニック機構用のモーターがなくなったエンジン。なお525i用エンジンの排気量は3Lになり、523i用エンジンが2.5Lとなった。

バルブトロニック機構用のモーターがなくなったエンジン。なお525i用エンジンの排気量は3Lになり、523i用エンジンが2.5Lとなった。

BMWらしさとは何か、それは確固としてある

さて、スタートボタンを押して、272psの最新ストレートシックスを目覚めさせる。200バールのインジェクターから送られるガソリンによって作られたミクスチャーへの着火は、やや金属的な、一部ノッキングのような音を伴う。もちろんこれは機械的に害のあるものではないし、耳障りでもない。

試乗車にはZF製の6速ATが塔載されていたが、このトルクコンバーター式ATはすでに最近の新型モデルで採用されているものと同様にマネージメントシフトウエアが変更された最新タイプで、スロットルのペダルのわずかな動きにも素早く反応するようになっている。

これはオンロードでおよそ40%のシフトスピード向上が見られるという。確かに走り出したときのスロットルペダルの感触は、これまでの「トルコン感」とはちょっと違ってシャープである。

ところで走り出して、突然ステアリングホイールが小刻みに振動してからようやくわかったのだが、このクルマにはオプションの「レーンチェンジ・ウォーニング」が採用されていた。フロントウインドウに装着されたCCDカメラによってレーンを検知、もし逸脱するとステアリングで振動を感じるように設計されている。私はインパネに表示が出て警告音が鳴る方式よりも、ステアリングホイールへの振動の方がわかりやすくて良いと思う。その直後にステアリング操作を促すものだからだ。

さらに、この5シリーズには最新のストップ&ゴー機能付きアクティブクルーズコントロールも装備されていた。これは車間距離キープシステムであるが、まさにストップ・アンド・ゴーの渋滞時に完全停止まで面倒を見てくれる。初めはちょっと怖いが、慣れると中々に快適である。

ところでこの530iにはこれら様々なシステムをフロントウインドウに映し出すヘッドアップディスプレイが装備されていたが、スピード、車線、ナビ、そしてクルーズコントロールが、視線を逸らさずに同時に見られるのは非常に人間工学的に優れたシステムであると思った。

この530iにも、BMWがエフィシエント・ダイナミクスの一環として導入を始めたブレーキエネルギー回生システムが装備されている。ブレーキを踏むたびに発生するエネルギーをアダプティブバッテリーに貯め、一定以上の十分な量(およそ80%)になると、加速時にオルタネーターへの伝達をカット。その結果、負荷が減り燃費が良くなる。

まるでこれらのシステムを体験させるために仕掛けられたようなリスボン市街の酷い渋滞を抜けて、ようやく高速道路へと出た。スロットルを踏み込むと、増量されたパワーが明らかに感じられ、軽快な加速感を味わえる。もちろん530iの走りの基本はそのまま洗練されている。ガシッとした太目のステアリングホイールを握り締めてクルマを操るのは、BMWならでの楽しみである。

今回のテストは、主に燃費や新たに追加された安全と快適のデバイスチェックがメインメニューであったが、それでもBMW、ホテルへ向かう後半にはちゃんとワインディングロードを用意してくれていた。

BMWの目指すところは、様々な省エネルギーデバイスを装備して、これまで以上に効率的なエネルギー使用に努めるが、それでもこのように「クルマをドライブする楽しみを決して犠牲にはしない」というもの。それが「エフィシエント・ダイナミクス」なのだ。(文:木村好宏/Motor Magazine 2007年5月号より)

画像: さまざまなハイテク装備が用意されていたが、それらは決して「運転する楽しみ」を奪ったりはしない。

さまざまなハイテク装備が用意されていたが、それらは決して「運転する楽しみ」を奪ったりはしない。

ヒットの法則

BMW 530i 主要諸元

●全長×全幅×全高:4841×1846×1468mm
●ホイールベース:2888mm
●車両重量:1615kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2996cc
●最高出力:272ps/6700rpm
●最大トルク:320Nm/2750-3000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●最高速:250km/h(リミッター)
●0-100km/h加速:6.5秒
※欧州仕様

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