2006年、デトロイトモーターショーでJK型ジープ ラングラーが登場している。ジープの魂はこの5代目でどう進化したのか。ジープの聖地、カリフォルニアのルビコントレイルで行われた試乗の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年2月号より)

ジープの全ラインアップの魂の拠り所

コアなオフロードマニアの方々にはもちろんだが、普通のクルマ好き、特に頭の片隅にでもアメリカ車に気を留めている人にとって、ジープ ラングラーのフルモデルチェンジは注目すべき一件だろうと思う。

拡大戦略を続けるジープの全ラインアップが魂の拠り所とするこのクルマは、スタイルやアーキテクチャの根本を変えることなく、今の時代を生き抜いている。その頑固さをもって、リーバイスやジッポーといったアメリカを代表するアイテムとダブらせてしまう気持ちは僕とて変わらない。

が、そうはいっても厳しい安全・環境基準が突きつけられている現実に、ラングラーとて治外法権で立ち回るわけにはいかないわけだ。オリジナル ジープにあたる多目的軍用車、ウイリスMBが登場したのは1941年。間もなく65年を迎えようという歴史の中で、新しいラングラーは5代目にあたる。CJ・YJ、そして1997年登場のTJに対し、新型ラングラーのコードネームはJKとなった。変わらない中でなにかを大きく変えたという意向は、その型式からも見ることができる。

では新型ラングラー、なにが大きく変わったのか。決定的な2つを挙げれば、1950年代から使い続けてきた直6OHVを廃しV6エンジンをガソリン仕様の標準とし、そしてモデル史上初となる4ドアボディの「アンリミテッド」の設定ということになる。

新たに採用されたV6エンジンは現行チェロキーにも使われているOHVを拡大したもので、3.8Lの排気量から198psの出力を発揮する。設計的にはショートストロークだが、出力特性的には前型の直6の4Lを下回る回転域でそれを上回るトルクをフラットに発生させる、すなわちピュアオフローダーとして適切なチューニグがなされたものだ。

指定されるガソリンのオクタン価はヘビーデューティカーらしい。日本での扱いは前型と同様無鉛レギュラー指定となるところも嬉しいポイントだろう。

ちなみに見過ごせないシェアを誇る欧州向けには、2.8L 4気筒のコモンレールディーゼルターボも用意されるが、こちらは日本への導入予定はない。

このV6エンジンを搭載しながらオフローダーにとっての生命線である舵角を確保するため、新型ラングラーは先代に比べて各寸、特に車幅がひとまわり大きくなっている。さらに居住性が重視された4ドアのアンリミテッドは2ドアのベースモデルに比べて実に500mm以上ホイールベースが伸ばされ、全長は4750mm余にも達してしまった。その甲斐あって2ドアモデルは最小回転半径が5.1m余とCセグメントハッチバック級をマークしているものの、この点がオフロード走行にどう影響するかは興味深いところだろう。

それを支える生命線ともなる新型ラングラーのシャシは、言うまでもなくラダー&リジッドで構成される。完全刷新されたラダー部はハイドロフォーミング成型を採用、その剛性は曲げ50%、捻り100%と飛躍的な向上をみせた。もちろん前後の5リンクのコイルリジッドサスも新設計となるが、これに関しては劇的な変化を望まれない関係上、前型比で構造材だけでなくディメンジョンやジオメトリーが完全に見直された進化版とみても差し支えないだろう。

加えて新型ラングラーには、間もなく米国内での義務化が想定されるESPをオフロードプログラム付で搭載、そしてスタビライザーの反力量をコントロールして、それを必要としない低速域でのホイールストロークを上げるASBSが新たに採用されている。必要な進化を受け入れつつも、極力電子デバイス類の介入を抑えアナログな走破性に拘るところが、ラングラーが他のSUVと趣きを異にするところだろう。

電子デバイスの恩恵を受けてのほほんと悪路を走りきれる、そんな四駆のスタイルが当たり前になりつつある中で、悪路での新型ラングラーの走りは体躯そのもので難関を突破するという手応えに満ちている。

もちろん基本的な走破性は強烈に高い。他のクルマがそれこそ駆動コントロールを駆使しまくるような難所でも、リジッドの車輪をぺたっと地面に押しつけてグリグリと確実に前に進んでいく。カリフォルニアのルビコントレイルといえば難所ひしめくオフロードコースの聖地。いわば彼らにとってのニュルである場所だが、そこをなによりも平然と走破できるタフな設計がデフォルトでなされている、そこにラングラーのオーナーは誇りと充実感を覚えるわけだ。

一方で、新型ラングラーはオンロードでの快適性を飛躍的に向上させている。予想はしていたものの、これはもう前型と比べれば隔世の感だ。コーナリングや高速安定性といった不安要素はもちろんのことだが、転がりだしからの乗り心地の良さや静かさも、このクルマをアシとして普通に使ってみたいという少なからぬ人たちには間違いなく福音となるはずだ。

特に4ドアのアンリミテッドはフォールディングレイアウトの関係上、後席の座面長や着座高、背面角度などに若干の無粋さは残るものの、荷室もしっかりと確保されており、ファミリーカーとしてのニーズにもしっかり応えてくれる。ロングホイールベースを利した乗り心地はゲレンデヴァーゲンをも上回ると感じさせたほどだから、その点は大いに期待してもらってもいい。ちなみに悪路でのランプブレークオーバーアングルについても、人間側が身構えそうな激烈な場面を除けば、そこがボトルネックとなる場面はまったく遭遇することがなかった。

ちなみに日本への導入は第1四半期を予定。価格は未定ながら、インポーター側は「2ドアを例に挙げれば現状に対して著しく変わることはないだろう」と目安を立てている。(文:渡辺敏史/Motor Magazine 2007年2月号より)

画像: ボディ剛性は50%アップ、フレームの曲げ剛性は100%アップしている。

ボディ剛性は50%アップ、フレームの曲げ剛性は100%アップしている。

ヒットの法則

ジープ ラングラー スポーツ 3.8 主要諸元

●全長×全幅×全高:4223×1873×18255mm
●ホイールベース:2424mm
●車両重量:1745kg
●エンジン:V6OHV
●排気量:3778cc
●最高出力:198ps/5000rpm
●最大トルク:315Nm/4000rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:4WD
※北米仕様

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