2006年秋、BMWは意欲的な変更とモデル追加を行っている。10月に発表されたE83型初代X3のビッグマイナーチェンジもそのひとつ。今回はその内容、試乗を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年2月号より)

エンジンは直6の3Lと2.5Lの2種類、6速ATも新設計

2004年に登場し、プレミアムコンパクトSAVとして日本でも定着したX3がマイナーチェンジを受けた。BMWではモデルイヤーという言い方はしないが、2007年モデル(2006年末からデリバリー)から大きく変わったと考えていいだろう。

エクステリアは写真でもわかる通り、ちょっと垢抜けした。これまでエアロパッケージ以外は黒いバンパーだったものが、ボディ同色にペイントされた部分も入った2分割のバンパーになったことが大きい。

フロントは黒い帯の部分が両サイドのフェンダーで下がった「山型」になり、下のエアスクープ部分はボディと同色になったため都会的な顔になった。オンロードを主体としたSAVを主張するクルマとして、このデザインの方が合っていると思う。リアも黒い部分が下端だけになり、バンパーのほとんどがボディ同色のペイントになり、オフロードのイメージがさらに薄くなった。

テールランプはLEDに変わり、ブレーキランプのレスポンスと昼間時の視認性が向上。見た目にもすっきりしたデザインになった。

フロントはキドニーグリルが少し大きくなって、より力強くなった。バンパー上の丸いフォグランプも大きくなり、ヘッドライトと共に6個のライトがレイアウトされる。BMWではこれを「シックス・アイド・ルック」と呼んでいる。

インテリアはシート生地が変わったりバリエーションも増えたりしたが、ダッシュボードの質感が向上したのが大きな変化だ。これまでのプラスチック然とした感じからソフトな手触りになったのだ。

今回ボクが気に入った新しい装備は、左ドアミラーの下面に取り付けたCCDカメラで見える映像をナビ画面に映し、サイドブラインドモニターとして採用したシステムだ。

これはSUVに見られるフェンダーの先端に付くサイドアンダーミラーの代わりになるものだ。安全性向上だけでなく、狭い道でのすれ違い時にも左一杯に寄せられるようになり、車幅感覚を養うためにも効果がある。日産車のような前端まで見られるものではなく、前側はフロントタイヤが接地するあたりまでだ。その代わりBピラーの下付近まで確認することができる画像の角度になっている。これはシフトレバー前の、センターコンソール上のスイッチを押すことで見ることができる。歩くようなスピードまでは見えるが、それより速くなるとすぐに消えてしまう。せめて自転車が走るスピードくらいまでは見たい気がする。

エンジンは直列6気筒の3Lと2.5Lの2種類が用意される。マグネシウム・アルミニウム合金のシリンダーブロックを持つ最新のハイパワー軽量エンジンになった。N52と呼ばれ、1シリーズ、3シリーズ、5シリーズなどに搭載されるエンジンと同型ではあるが、パワーなど細かいところは車種ごとにチューニングが異なる。30siは200kW/6500rpm、315Nm/2750rpm。2.5siは160kW/6500rpm、250Nm/2750-4250rpmのパワーとトルクを発揮する。

エンジンと一緒にオートマチックトランスミッションも変わった。これはすでに335iクーペから採用されているATで、高速ソフトウエアの採用などによりシフト時間が半分に短縮された新型のZF製である。自動で飛び段もできるから、急にアクセルペダルを踏み込んだときのヘジテーションが激減している。

新エンジンと新ATの採用によって、0→100km/hの加速も速くなっている。3.0siは以前のモデルと比較してマイナス0.6秒の7.2秒、2.5siはマイナス0.3秒で8.6秒になった。

DSCも最新版に進化した。これまでのものに4つの機能が追加された。スタートオフアシスト機能、ブレーキスタンバイ機能、ブレーキドライ機能、フェード防止機能である。

スタートオフアシストは、登り坂で発進する際、ブレーキペダルからアクセルペダルに踏みかえるときにクルマがバックしないようブレーキをしばらく利かせている機能だ。

ブレーキスタンバイは、アクセルペダルを急に戻したとき、そのあとの急ブレーキを想定して事前にブレーキに与圧をかけてレスポンスを良くする機能。ブレーキドライは、雨の日の高速走行でディスクローターを乾かすようにときどきパッドを擦るようにしておく機能だ。これはワイパースイッチを入れていると作動する。

フェード防止は、フットブレーキの使い過ぎで過熱気味になってブレーキの利きが弱くなったときに自動的にブレーキ圧を追加してブレーキの利きを正常に保つ機能。ただしベテランドライバーならフェードしてブレーキの利きが弱くなったことを知ればペースダウンして走るなど対策ができるが、この機能があるとそれを知る手がかりがなくなる心配はある。でもほとんどのドライバーがいざという場面でフェードしていたらさらに強くブレーキペダルを踏むことができないから、一般的には有効なのかもしれない。

画像: 2.5si。マイナーチェンジ前のモデルと比較すると、ボディ剛性の密度が上がった感がある。ハンドルの手ごたえもありダイレクトな感覚でドライビングできる。

2.5si。マイナーチェンジ前のモデルと比較すると、ボディ剛性の密度が上がった感がある。ハンドルの手ごたえもありダイレクトな感覚でドライビングできる。

ボディ剛性の密度が高くなったイメージ

それではマイナーチェンジを受けたX3に試乗したインプレッションをお伝えしよう。

2.5siが履くタイヤは、235/55R17 99H M+Sのピレリ・スコーピオンATR☆である。走り始めてみるとマイナーチェンジ前より全体が引き締まって、なおかつマロヤカになっているという印象だ。エクステリアやインテリア、エンジンやATが変わっただけでなく、ボディやサスペンション関係など見えないところもだいぶ進化したようだ。

前のモデルでもボディ剛性は高いと感じたが、今度はその密度がもっと高くなった感じだ。パネル自体の剛性は変わらなくても、パネル同士の接合がより強固になったという感触なのだ。

具体的な違いは、走りながらハンドルを切ってクルマが向きを変えるときに感じる。切り始めからクルマ全体がひとつとなって向きを変えていくのだ。ハンドルの手応えもしっかりしたフィードバックが返ってくる。だからよりダイレクトな感覚でドライビングを愉しめる。

乗り心地に関しても引き締まった感じのボディのおかげで、よりマロヤカな印象になった。路面の不整を通過したときにも直接的な衝撃がなくなり、角が取れてスムーズに通過できるようになった。

この感触は3.0si Mスポーツパッケージでも共通だった。フロント235/50R18 97Vとリア255/45R18 99VというサイズのダンロップSPスポーツ01☆という幅広タイヤを履いているが、タイヤの重さや硬さを感じることなく、とてもスマートな乗り心地を示していた。

このスマートの意味を詳しく説明すると、乗員が揺すられないということだ。アタリに角がなくなりマロヤカになったことと、しなやかにサスペンションが動いてくれるのでバネ上の揺れが少なくなったようだ。もう「走りはいいけど乗り心地が硬い」とは言われなくなるだろう。

2.5siでアクセルペダル全開で加速していくと、タコメーターの針がゼブラゾーンに入りながらシフトアップしていく。ちなみにゼブラは6800rpmからで、レッドゾーンは7000rpmからである。シフト時間が短いのだがシフトショックはなく、しかも素早く次のギアにつながるから、ダイレクトな加速感が持続する。

Dレンジからセレクターレバーを左に倒してステップトロニックのマニュアルモードを選んで走ると、MTのようなダイレクトな感じで走れる。ロックアップしている範囲は広そうだ。2速ギアでは90km/hまで伸びる。100km/hのとき6速では2300rpmである。6速ATとファイナルのギア比は3.0siも同じである。

ステップトロニックで箱根のワインディングロードを走っていると、シフトダウンのときがMTのようで気持ちがいい。4速からブレーキングしながらセレクターレバーを前にポンポンと2回押すと、ヒール&トウを使ったようにエンジンの回転が上がって、素早く2速に落ちるという具合だ。

2.5siにはオプションのステアリングヒーターが付いていた。寒冷地でクルマに乗り込んでまだエンジンが冷えているうちに走り出すとハンドルを持つ手が冷たいが、右のスポークにあるスイッチを押すとほんの十数秒でじんわりとグリップ部分が暖まってくるからありがたい。

これとシートヒーターを組み合わせれば、ウインタードライビングは寒さ知らずだ。試乗車にはリアシートにもシートヒーターが装着されていた。

残念なのは1シリーズから7シリーズまでセダンやクーペ系には全部標準装着されているRESTスイッチがX3にはないことだ。X3を駆ってスキードライブを楽しみたいというユーザーは多いと思うが、エンジンを止めたときでもヒーターを利かせることができるRESTスイッチはきっと重宝するはずだ。

マイナーチェンジを受けたX3は、確実に進化した。ボディ、サスペンション、エンジン、トランスミッションなどすべてのドライバーが実感できる質の高い走りが実現している。

乗り心地も良くなったことで、ドライバーだけでなくパッセンジャーもさまざまな道で倍増した「駆けぬける歓び」を満喫できるだろう。(文:こもだきよし/Motor Magazine 2007年2月号より)

画像: 3.0si。新N52エンジンと新トランスミッションの採用で加速の鋭さを得ている。

3.0si。新N52エンジンと新トランスミッションの採用で加速の鋭さを得ている。

ヒットの法則

BMW X3 2.5si主要諸元

●全長×全幅×全高:4585×1855×1675mm
●ホイールベース:2795mm
●車両重量:1800kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2496cc
●最高出力:218ps/6500rpm
●最大トルク:250Nm/2750-4250rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:554万円(2006年)

BMW X3 3.0si主要諸元

●全長×全幅×全高:4585×1855×1675mm
●ホイールベース:2795mm
●車両重量:1830kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2996cc
●最高出力:272ps/6650rpm
●最大トルク:315Nm/2750rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:628万円(2006年)

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.