新コロナウイルス感染拡大により、映画界は大打撃を受けています。カンヌ国際映画祭をはじめ、日本でも2020年6月25日から28日まで開催予定だった「フランス映画祭2020横浜」も延期になりました。この映画祭の再開催を願って、昨年の同映画祭上映作品の一つ、『愛しのベイビー』のリサ・アズエロス監督と主演女優タイス・アレサンドランのインタビューをご紹介します。アズエロス監督は、昨年11月に惜しまれながらも逝去された、フランスの名女優マリー・ラフォレの娘で、アレサンドランの母でもあります。母・娘・孫の女性三代に繋がる、映画の世界に生きる想いをうかがいました。(※トップ写真 リサ・アズエロス監督、女優タイス・アレサンドラン/撮影:安井 進)

「フランス映画祭2019横浜」に、新作の『愛しのベイビー』(2018)の上映と、上映後のトーク・イベントのために来日したリサ・アズエロス監督と、主演女優で実娘のタイス・アレサンドラン。この作品は、まさにこの二人、母と娘の心象風景を明るくコミカルにリアリティをもって描いた女性映画です。

離婚して自由を勝ちとった、シングル・マザーの生き方

母親役は、フランス映画界を代表する実力派女優のサンドリーヌ・キベルラン。毎回、演技派としての冴えを見せつけてくれる存在ですが、本作の「子離れ」できないシングル・マザー役は、彼女の真骨頂ではないかと思わせるほど、ハマッています。

娘を育て、その苦労から解放されるはずの時期を迎えるも、娘の成長には思いもかけなかった喪失感に襲われそうで心がザワつく。母親なら、きっと誰もが味わうであろう、その気持ち。

画像: 離婚して自由を勝ちとった、シングル・マザーの生き方

カナダへの娘の留学が心配で心配で・・・という母親であり、それでも一人の女性として輝いていたいという心境に戸惑う、チャーミングに生きる女性を描いた珠玉の作品です。

タイス・アレサンドラン演じる若い娘は、瑞々しくはつらつとした「若さ」の象徴。母親にとっては嬉しい反面、同性としてまぶしくも感じられる。シングル・マザーたちも負けてはいない。互いに交わす、おおらかであけすけな恋のハナシにリアリティがいっぱい。

そこには離婚して、自由を手にした母としての強い女性の生き方が垣間見られ、観ているうちに共感させられる。さすがは女性監督としてのキャリアを積んできた、アズエロス監督ならではの演出です。

『愛しのベイビー』は、アズエロス監督の「実話」の映画化

彼女は、あの『太陽がいっぱい』(1960)で、フランスはもちろん、世界的に知られることになった名女優のマリー・ラフォレの実の娘。アラン・ドロン、モーリス・ロネ演じる二人の対照的な男の間に揺れる女性を演じて、日本でもそのクール・ビューティさは男女問わず、憧れの存在となったのです。

リサ・アズエロスは、なぜ、母親のように女優にならず、映画監督の道を選んだのでしょう。そして、その娘タイス・アレサンドランはなぜ、母のように映画監督にならず、祖母と同じ女優を選んだのか。興味深いです。

──2017年の作品、『ダリダ あまい囁き』では、伝説的な実在の人物が描かれましたが、本作は監督と実の娘さんの実話を描いたような映画です。

画像: 『愛しのベイビー』は、アズエロス監督の「実話」の映画化

「まさに、実話なんですよ」

──そうなんですね。まず、伺いたいのは、監督とお嬢様は、『太陽がいっぱい』のマリー・ラフォレさんの血統、それを繋いでいるお二人です。三代にわたって映画の世界で活躍されるということはそう多くはないと思います。これは二代にわたり、母親から娘に‟家訓”のように伝わったのでしょうか?

「そうではありません。また、直接影響を受けたというわけでもないんです。映画の仕事というものは、勇気を持って取り組まなければ、とてもじゃないけれど、自信を持って出来るような職業ではないんです。

私にとっては親とか家族が映画に関わっているために、普通の人よりはより身近に簡単にその職業に就くことができたとは思っています。DNAというか、芸術的なセンスを私に組み込んでくれたような気はしています」

母ラフォレのように女優もしてみたが、監督になることを選ぶ

──DNAと環境ということですね。それに反発して、全く違う世界に進む方も少なくはない中、やはりお母様へのリスペクトがあって、監督という仕事をめざしたわけでしょうか?

「うーん。実のところ、私は女優であった母に直接育てられたという感じはなかったんです。だから、女優としての母親を何らか意識して、この仕事をめざしたというより、母の家族の一員であるということを私なりに理解して、それを体現したということになりますね」

──つまり、お母様である、ラフォレさんはスターだったので、大変忙しく、ある意味ではほったらかされていて、自由もあった。女優になれとか、監督がいいとかの母親からの教育の下にあったわけではなかったということですね。ご自身で自由に道を選んだと。

「そのとおりなんです」

──お顔立ちもラフォレさんに、似ていらっしゃるのですが、女優をめざすという選択はされなかったのですね?

「ええ、最初は女優になりたかったんですけれどね。まだ、女性が監督になれるとは思えないような時代でしたから。

『ソフィー・マルソーの秘められた出会い』(2014)という映画で、製作・監督・脚本に加えて出演もしてみました。そこでいろいろ経験して、監督が私には合っていると感じたんです」

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