2006年、新生MINIが2代目へと進化した。全世界で80万台以上が販売され大ヒットモデルとなった新生MINIだが、どのように変わったのか。2006年秋にスペインで開催された国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年1月号より)

見た目とは対照的に走りの質は先代と大きく異なる

2006年11月18日。クラシック・ミニの生みの親である故サー・アレック・イシゴニスの生誕100周年にあたるこの日、欧州で新型MINIクーパーSが市場に導入された。

1959年から40年の長きにわたり累計約540万台が生産されたクラシック・ミニ。その伝統と個性を引き継ぐデザインやコンセプトで2001年に登場したMINIもまた全世界で人気を博し、現在までに87万5000台以上も生産されている。ちなみに全生産台数のうち9%が日本市場に導入された、ということだ。

スペイン・バルセロナ。国際試乗会の場で目にした新型MINIクーパーSは、エクステリアを一見するだけでは先代との違いがわからないほどだった。よく見ればウインカー一体型ヘッドライトになったり、ラジエータグリル形状を変更したりと、すべては新しくデザインし直されているのだが、それを感じさせないまとまりの良さがそこにある。

全体の雰囲気としてはよりボリュームが増し、力強さが増した印象だ。「オリジナルからオリジナルへ。クラシック・ミニのコンセプトを継続進化させることを主な目的としました」とチーフデザイナーのゲルト・ヒルデブラント氏は語る。ミニはミニ。その「らしさ」は先代も新型も変わらないというわけだ。

先代比で44mm大きくなった全長は歩行者保護の観点から主にフロントセクションにあてられる。全幅はほぼ先代と同等、全高は50mmほど低められている。

実質、全長増による車室空間への恩恵はないのだが、車内に乗り込むと先代と比較して足元スペースには余裕がある。これは、センターコンソールがスリムになったことで実現したもの。先代で座面長が短いと感じたフロントシートも、大人が普通に座って窮屈さを感じないレベルにまでサイズアップが図られている。

インテリアの質感も明らかに向上している。センタースピードメーターやトグルスイッチなどのアイコンは継承しつつ、よりプレミアムさを感じる造り込みになった。新型の開発でインテリアのマテリアルを担当した渡辺加奈さんは「ドイツ人の考える英国の伝統って、並大抵のことではないんです。だから素材とコストとの兼ね合いは大変でした」と本音を語ってくれた。新型MINIには英国車のプレミアムという「らしさ」も存分に与えられる。

丸型のキーをスロットに差込み、スタートボタンでエンジンを始動する方法は、最近のBMWの流儀と同じ。始動しても思いのほか静かなこのエンジンは、今回のモデルチェンジの目玉だろう。先代が直4SOHC「ペンタゴン」にスーパーチャージャーを組み合わせたのに対し、新型は直噴式直4DOHCターボエンジンを採用。これにより先代クーパーS比で出力は+5psの175ps、トルクは20Nm増の240Nmを発生する。ちなみに、新型クーパーのエンジンは、バルブトロニックを採用した自然吸気エンジンとなる。

大玉シフトノブを1速に入れて発進。ヒルアシスト機能も備えているので坂道でも安心できる。

高回転まで澱みなく回るエンジンは、まさにBMWの味を表現する。先代がスーパーチャージャー特有のメカニカルノイズを伴ったのに対し、新型はターボという存在を感じさせない躾の良さ。500kmを試乗した限り、ターボラグは皆無だった。印象としては「2L級に排気量がアップした」ようなイメージだが、同時に急な加速時にはオーバーブースト機能により260Nmまで瞬間的にトルクが上昇し、「頭が後ろに持っていかれるような加速感」というやんちゃぶりも併せ持つ。それでいて燃料消費量は先代比で約18%も低減されたという。

ワインディング路では、そうしたエンジンを回す愉しみのほか、先代とはまた違った乗り味を愉しめる。

今回は、195/55R16サイズの標準タイヤ装着車と、205/45R17タイヤ+スポーツサス装着車の2台のクーパーSに試乗したのだが、両モデルでも覚悟していたほどの「乗り心地の硬さ」はなく、しなやかにカーブを抜けていける。

先代では、ゴーカートフィーリングと評されたその乗り味は、ドライバーにロール感を与えずダイレクトな操縦感覚が魅力だったが、4つの足を突っ張ったイメージがあり、とくに初期のモデルでは日常使用でのアタリの硬さや突き上げ感を伴っていた。それが新型では、適度なサスペンションストロークで突き上げを上手にいなしつつ、路面をなめるようにオンザレール感覚で走ることができる。クーパーSはランフラットタイヤを採用しているが、その特有の硬さも上手くチューニングされているので不快感はまったくない。

実際にロールは伴うのだが、着座位置が下がっているのか、はたまた重心高が下がったのか、ドライバーにロール感は伝えない。にもかかわらず路面からのアタリは穏やか。

これこそが新型MINIに与えたゴーカートフィーリングの新しい解釈だ。一見どこが変わったのかわからない外観の新型だが、試乗してみて、先代との違いは新開発エンジンの搭載による爽快感よりもむしろ、その乗り味に対して大きく感じた。

ミニらしさを踏襲したエクステリア、英国車らしさを極めたプレミアム感溢れるインテリア、BMWらしさを感じるエンジンフィール、そして新たな解釈による「ゴーカート」感覚の走り味。新型MINIには、こうした「らしさ」が詰まっている。(文:根岸誠/Motor Magazine 2007年1月号より)

画像: 全世界から大きな注目が集まったMINIのフルモデルチェンジ。いかに進化したのかという期待と、変わらないで欲しいという願い。ファンの思いは複雑だったが、「らしさ」はそのままに、確実に進化していた。

全世界から大きな注目が集まったMINIのフルモデルチェンジ。いかに進化したのかという期待と、変わらないで欲しいという願い。ファンの思いは複雑だったが、「らしさ」はそのままに、確実に進化していた。

画像: センターの大径速度計など、インテリア全体の雰囲気は先代のイメージを踏襲するが、センターコンソール幅を狭め、足下空間に余裕を持たせている。乗って実感する改良点。

センターの大径速度計など、インテリア全体の雰囲気は先代のイメージを踏襲するが、センターコンソール幅を狭め、足下空間に余裕を持たせている。乗って実感する改良点。

ヒットの法則

MINI クーパーS 主要諸元

●全長×全幅×全高:3699×1683×1407mm
●ホイールベース:2467mm
●車両重量:1130kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:175ps/5500rpm
●最大トルク:240Nm/1600-5000rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
※欧州仕様

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.