2005年のフランクフルトモーターショーでデビューしたイオスが、2006年秋になってようやく日本上陸を果たした。日本へ導入されたモデルはいずれもパワフルなエンジンを搭載していたが、その走りや快適性はどうだったのか、複雑に折り畳まれる5分割式のハードトップの使い勝手も含めて、日本の公道を走っての試乗記を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年12月号より)

ギリシャ神話の「暁の女神Eos」に由来するネーミング

クーペからオープン状態への変身に要する時間はおよそ25秒、ユニット重量80kgに及ぶという複雑なルーフシステムを、何ともアクロバティックな動きで開閉させるという面倒な作業を行ってまで「硬い屋根」の採用にこだわったのは、特にヨーロッパ地域でのオープンモデルに対する要望が、従来のソフトトップ方式から急速にこうした形態へと傾きつつあるからだと言う。

そんなプロセスを経て、『オープン4シーター』としての姿を披露するフォルクスワーゲン発の最新モデルの名はイオス。ギリシャ神話の「暁の女神Eos」に由来するというネーミングのモデルは、ハードウエア的にはゴルフ/ジェッタとの血縁関係が非常に濃い一台だ。

1979年に初代ゴルフカブリオレが誕生して以降、もっと言えば1949年に誕生の初代ビートルカブリオレ以来、連綿と続いてきた「フォルクスワーゲンのオープン4シーター」というポジションを受け継ぐイオスは、しかしご覧のようにゴルフやジェッタとはハッキリと趣を変えた、あくまでも独立した車種としてのアピール力を強く感じさせるものだ。

ちなみに、リアシートの居住性を確保するためとは想像がつくものの、ドアと後輪との間に開いた「ちょっと大きな隙間」はスポーティというキーワードを少々薄める結果になっているようにも思う。

インテリアも、エクステリアのデザインに呼応したシンプルなデザインという印象が強いものだ。

ダッシュボードは、空調ベントの形状などが異なりはするものの、基本的なデザインはゴルフとモチーフを共にするもの。そしてその造形は、決して奇をてらうことのないエクステリアのデザインにも良くマッチしている。

『スポーツシート』の名を与えられたフロントの2脚は、確かに見た目はクッション部もシートバック側も起伏に富んだ形状をアピールするものの、実際に腰を降ろしてみればそのサポート感は特別にタイトというわけではない。そんなこんなもあって、まずは内外装を眺めた段階では、ぼくにはこれがスポーティなモデルというよりは、むしろ優雅な4シータークルーザー的なテイストが強いモデルだと感じられた。

ちなみに、2人が中央寄りに肩を並べて座ることになるリアシートは、センタートンネルによって足元空間が少々蹴られてしまう以外はレッグスペースもヘッドスペースも「予想(覚悟)していたよりはるかにまっとうな広さ」を実感。ただし、そんな居住空間からこのモデルを「フル4シーターオープン」と呼ぼうとなると、トランクスペースが4人の荷物のためにはどうも不足気味であるのが残念だ。特に、クローズ時に対して半減してしまうオープン時のトランク容量は、「せっかく座れても荷物が積めない……」とこのクルマの意外なウイークポイントと指摘されてしまうかも知れない。

画像: 世界初となる5分割式のルーフシステム。約25秒で開閉が完了する。安全上荷室にあるカバーが下りていないとルーフを開けることができない。その動作は複雑かつ緻密で、見ていて飽きない。

世界初となる5分割式のルーフシステム。約25秒で開閉が完了する。安全上荷室にあるカバーが下りていないとルーフを開けることができない。その動作は複雑かつ緻密で、見ていて飽きない。

強力な2種のエンジン、クローズ時の静粛性は絶品

日本に導入されたイオスには、すでにゴルフシリーズに搭載されて好評の2L直噴DOHCターボ、もしくは3.2L狭角V型6気筒という2タイプのエンジンが、いずれも2ペダル式の6速MT「DSG」との組み合わせで搭載される。欧州には自然吸気の1.6L、もしくは2Lといったよりベーシックなパワーユニットを搭載するモデルも設定されるが、それらは「オーソドックスなMTしか用意されない」ということから、2ペダル必須の日本市場には導入が見送られた模様だ。

2Lの4気筒モデルで走り始めると、同パワーユニットを積むゴルフGTI比では130kgも重いハンデをはね返し、加速の余力は十二分。刺激度ではゴルフGTIに及ばないものの、速さという点ではこれ以上を望む気にはならない。むしろ「これほどは要らないから自然吸気の2Lが欲しい」と、そんな要望が頭を持ち上げてくる。

しかし、それではより大きな余力を誇るV6モデルに魅力がないのかというと、そんなことはないから現金なもの。こちらのアドバンテージはシフトの頻度が減るのでよりスムーズな走りが可能となり、かつ時折耳に届くエンジンサウンドが『2.0T』よりも遥かに魅力的なものであるところが大きい。

ルーフクローズ時には何とか「フォルクスワーゲン車らしい」と思えるしっかり感を誇ったボディは、やはりルーフを開いた瞬間にワンランク緩くなる。

それまでは感じられなかったステアリングコラムの揺れ(いわゆるスカットルシェイク)を感じるし、クローズ時には微動だにしなかったルームミラーの映像も、小刻みに揺れ動くようになってしまう。

感心したのはクローズ時の静粛性の高さ。これは『2.0T』でも『V6』でも共通の美点だ。フロントのウインドウフレーム上部に格納された手動式のウインドディフレクターは、サンルーフを開いた際に発生するドラミングを抑制するアイテムで、オープン時にこれが飛び出すとかえってキャビン内への風の巻き込みが増えてしまうのは意外な発見。サイドウインドウを上げておけばリアシートを潰して設置するリアのディフレクターを用いなくても80km/h程度までは不快な風の巻き込みがほとんどないことも含め、空力性能の検証はオープン/クローズ時を問わず、真面目に行われている。

「太陽を載せた馬車を駆り、地上に夜明けをもたらす女神」というこのイオス。それは、良くも悪くも時代の要請の下に生み出された最新のオープンモデルという印象の一台だ。(文:河村康彦/Motor Magazine 2006年12月号より)

画像: 2006年秋に日本に上陸したフォルクスワーゲン イオス。「Eos」はエオスかイオスかと話題になったが、日本名は「イオス」に落ち着いた。ゴルフの派生モデルではなく、独立した車種として登場したのもポイント。

2006年秋に日本に上陸したフォルクスワーゲン イオス。「Eos」はエオスかイオスかと話題になったが、日本名は「イオス」に落ち着いた。ゴルフの派生モデルではなく、独立した車種として登場したのもポイント。

ヒットの法則

フォルクスワーゲン イオス 2.0T 主要諸元

●全長×全幅×全高:4410×1790×1435mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1590kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:200ps/5100-6000rpm
●最大トルク:280Nm/1800-5000rpm
●トランスミッション:6速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●車両価格:438万円(2006年)

フォルクスワーゲン イオス V6 主要諸元

●全長×全幅×全高:4410×1790×1435mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1640kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3188cc
●最高出力:250ps/6300rpm
●最大トルク:320Nm/2500-3000rpm
●トランスミッション:6速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:FF
●車両価格:498万円(2006年)

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