自動車愛好家の楽しみの1つに、ミニチュアやミニカーの収集がある。ミニチュアやミニカーには1/43、1/64などのスケールがあるが、縮尺倍すれば実車そっくりになるかというと、そうではないようだ。そこにはどのような秘密が隠されているのだろうか。

実車に忠実な小スケールモデルはカッコよくない

2020年4月末、外出自粛中の自動車愛好家にひとつ気になるニュースが発表された。マクドナルドのハッピーセットにGRスープラのミニカーが台数限定でセットになるというもの。すでにGRスープラのミニカーを製造・販売しているタカラトミーによって造られるが、ハッピーセット用はひと味違う。スポイラーにはカーボン調仕上げのステッカーが貼られ、ヘッドライトは内部構造を細部まで忠実に再現している。

そのGRスープラのミニカー、1/43スケールで全長は100mmほど。このサイズで実車の特徴的なリアフェンダーの強い膨らみや深いキャラクターラインも再現している。とても1/43スケールとは思えないほどダイナミックな造形だ。

しかし、リアまわりの造形はどうにも腑に落ちない。GRスープラの全幅1865mmを、1/43にスケールダウンしたならおよそ43.4mmだ。この幅の中でGRスープラのダイナミックな造形のリアフェンダーやキャラクターラインを忠実に再現するとなると、抑揚はわずかなものになり、特徴も失われてしまうはず。しかしGRスープラのミニカーでは再現されている。どうしてなのだろうか。

画像: マクドナルドで販売されているハッピーセットに期間限定付録として用意されている、トヨタ GRスープラのミニカー。タカラトミーによって製造される。

マクドナルドで販売されているハッピーセットに期間限定付録として用意されている、トヨタ GRスープラのミニカー。タカラトミーによって製造される。

ミニカーはなまじスケール表示があるため、実車をそのままの比率で縮小して再現されていると思われがちだが、実はここが盲点だ。先述のように1/43や1/64などの小スケールモデルでは、車体の面の抑揚を再現できない。やったとしてもミリ単位のわずかなものとなり、実車らしさが再現できない。ではどうやって小スケールのミニカーを実車らしく見せているかといえば、簡単にいえばデフォルメを行っているからだ。デフォルメというと6頭身を2頭身キャラにするといったコミカルな表現を思い出すかもしれないが、誇張も立派なデフォルメだ。

GRスープラなら1/43スケールでリアフェンダーまわりを忠実に再現しても、らしく見えない。そこで実車との比率をある程度無視してでも、らしく見える表現を優先させている。ここはミニカーデザイナーや原型師の腕の見せ所だ。

画像: 実際のトヨタ GRスープラ。ボンネットやダブルバブルルーフ、リアフェンダーなど、複数の曲面を組み合わせた複雑なデザインを持つ。

実際のトヨタ GRスープラ。ボンネットやダブルバブルルーフ、リアフェンダーなど、複数の曲面を組み合わせた複雑なデザインを持つ。

小スケールのミニカー全般に言えることだが、実車を忠実に小さくすると商品にならないという。全体にペラペラで薄っぺらく、ダイキャスト(金型鋳造法)ミニカーらしい重量感と玩具として耐久性が失われる。その理由は、1/43のミニカーなら自動車のすべてのパーツが1/43となる。幅50mmのピラーなら1.2mm程度になるし、実車のドアの厚みが200mmならミニカーでは4.6mmと極薄だ。これでドアに開閉ギミックを設置したら、ドアを開ける最中に折れてしまいそうだ。

ミニカーは玩具であり、タカラトミーによれば対象年齢は3歳からだ。この頃であれば、手で走らせるだけでなく踏んだり蹴ったり、ときには飛ばしてみたりと実に雑な扱われ方をする玩具である。そのため、ペラペラの車体では心許ない。そこで車体を頑丈にするため、パーツの幅や厚さなどは、ほぼ無視される。それでもミニカーを実車らしく見せるのは、ミニカーメーカーのノウハウなのだという。

実車に忠実なミニチュアの最小スケールは、1/10よりも大型のモデルだ。1/10スケールなら全長は450〜500mmで重量感もあり、ヘッドライトや室内ライトの点灯、エンジン音のギミックなどを搭載するモデルもある。エンジンルームやインテリアの運転席まわりも細かく再現されているモデルが多い。小スケールのミニカーを多く収集して楽しむのもよし、大スケールのミニチュアを部屋のオブジェとして飾るもよし。ミニカーやミニチュアカーの楽しみ方には、無限の可能性が秘められている。(文:猪俣義久)

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