2006年4月、アウディのデザインアイコンになっていたTTクーぺが2代目へと進化している。そのスタイリングは長く広くなったボディもあって、ダイナミックなリアルスポーツカーらしいものになっていた。ではその走りはどうだったのか。オーストリア・ザルツブルクで開催された国際試乗会から、TTクーぺ2.0TFSIを中心とした試乗記を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年9月号より)

ボリューム感のあるスタイリング

実物の新型TTクーペを前にして、やはり驚いた。全体のイメージ、中でもサイドビューは先代モデルの印象に共通するものを感じさせてくれるものの、全幅1842mmというボリューム感は初代TTクーペの3割増くらいの存在感を漂わせている。実に立派だ。

初代のTTクーペは、ギュッと凝縮された力強いデザインとタイトな室内空間がもたらす、独特な個性を備えていた。ドライビングした時の感覚も同様で、俊敏かつ緊張感を味わわせてくれるもので、確かにTT独自の世界がそこにはあった。だが、そのタイトさが得意ではない人もいたわけで、後者へ属していた当人としては、新型TTのサイズアップには好意的な印象を持っている。

オーストリアのザルツブルク空港にある「ハンガー7」で試乗の受付を済ませる。ここは、レッドブルのオーナー、ディートリッヒ・マテシッチ氏が所有するもので、第二次世界大戦中の爆撃機や戦闘機などの錚々たるコレクションを眺めながら食事が楽しめるレストランでもあるのだが、その中に赤い新型TTクーペが展示されており、ひときわ目を惹く存在となっていた。

2LターボFSIエンジンを搭載するFFモデル、2.0TFSIのキーを受け取って実車へと急ぐ。目にすると、並んでいる3.2クワトロや他の2.0TFSIモデルとどこか雰囲気が違う。最初はボディカラーの違いかと思ったが、観察すると前後バンパーのディテールが異なっているし、ホイールも19インチサイズ。タイヤは標準サイズが225/50R16なのに対して、255/35R19を装着している。車高もやや低められている感じだ。よく見ると、フロントフェンダーには「S-line」と記された小さいエンブレムがある。そういうことなのである。

画像: リアスタイルにも、TTらしいディテールが残されている。このリアバンパーのデザインはS-line専用のものだ。

リアスタイルにも、TTらしいディテールが残されている。このリアバンパーのデザインはS-line専用のものだ。

スポーツモデルのジレンマを感じない

試乗は2人一組というプログラムであり、スーツケースを一緒に積んでいくように、と指示される。TTクーペに2人分の中型スーツケースを?と思いながらリアゲートを開ける。積み込んでみると、平積みではあるもののあっさりと収納してしまったことに驚かされた。

走り出すと、また新鮮な感動があった。「19インチでSライン」という先入観とともに走り出したのだが、乗り心地が悪くないのである。いや、むしろ「いい」と言えるくらいだ。

新型TTクーペには、デルファイ社とともに開発された、快適性と操縦性を高いレベルで両立させる可変ダンパーシステム「アウディマグネティックライド」がオプションで設定されたと聞いていたが、試乗車には装着されていなかった。つまり、スポーツサスペンション+19インチのみの足まわりでこの快適さなのだ。新型TTクーペは、アルミとスチールを併用した新たなASF(アウディスペースフレーム)構造によって、軽量化と高いボディ剛性、そして最適な前後重量配分を実現したという。サスペンションがしなやかに動くことができれば、乗り心地が良くなるのは当然のことだ。

トランスミッションは2ペダル式だったのだが、Dレンジに入れて市街地を走り出してからしばらくの間は、ティプトロニック6速ATかと勘違いしていたほどだ。もちろん搭載されているのは6速DSG、いや現在は「Sトロニック」というアウディ式の新名称となったデュアルクラッチ式ミッションである。オートマチックモードにおいてもそれだけシフト制御のスムーズさが増しており、トルクコンバータを備えていなくともシフトショックで気になるようなことはなかった。

伝達効率に優れたSトロニックだからか、アクセルペダルを踏み込むと同時に車速がスムーズに立ち上がっていく。このあたりも、ホンの一瞬ではあるものの「間」を感じさせる6速ATとの違いだと感じた。

エンジンの力強さは十分で、アウトバーンにおいてはその最高速240km/hまで速やかに到達するだろうという印象。次に試乗した3.2クワトロと比較すると、確かに「速さ」では一歩譲る。だが、車重(空車重量)では2.0TFSI(標準仕様)が1280kg、3.2クワトロは1430kgと、Sトロニック仕様同士で150kgの差がある。

FFとクワトロということもあるが、ハンドリングの印象にも違いがあり、素晴らしい眺望に恵まれた山岳地帯を走った印象も含めて比較すると、スポーツモデルらしい軽快さでは2.0TFSIに分があると感じた。3.2クワトロは排気音も豪快で、クワトロだからこその高い安定感も備える。速さに関しても文句はないが、個人的にはこの2.0TFSIの方に好ましさを感じた。

インテリアや内装のデザインなどについては、すでにレポートされているように「TTらしさ」という意味では、やや薄まったといえる。だがそれは、先代のTTがあまりにも「濃すぎた」から感じることなのかもしれない。快適性と実用性、そして十分なダイナミクス性能。これだけ揃っていれば、あとはデザインと価格に納得できるかどうかだ。

2台のTTクーペを乗り比べながら、考えていた。この感覚は、どこかで何か味わったことがあるような……。そう、これはゴルフのGTIとR32を乗り比べた時の印象に共通するものがあるのだ。それぐらい、両グレードには性格の違いがある。なお、日本に導入されるTTクーペに「S-line」仕様の設定はまだないとのこと。やや残念ではある。(文:香高和仁/Motor Magazine 2006年9月号より)

画像: エアアウトレットの造形やアルミパネルなどのディテールで、TTらしさが演出されるインテリア。ポピュラー性を増すことでファンも増えるだろう。

エアアウトレットの造形やアルミパネルなどのディテールで、TTらしさが演出されるインテリア。ポピュラー性を増すことでファンも増えるだろう。

ヒットの法則

アウディTTクーペ2.0TFSI 主要諸元

●全長×全幅×全高:4178×1842×1352mm
●ホイールベース:2468mm
●車両重量:1280kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:200ps/5100〜6000rpm
●最大トルク:280Nm/1800〜5000rpm
●トランスミッション:6速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:FF
●0→100km/h加速:4.3秒
●最高速: 314km/h
※欧州仕様

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