電動化を積極的に進めるアウディの次代を担うクワトロの詳細とeトロン スポーツバックSの最新事情をリポートする。(Motor Magazine 2020年5月号より)

もうひとつのeトロンスポーツバック

2019年発売されたドイツのプレミアムブランドによる本格的なBEV(電気自動車)はアウディe トロン クワトロとメルセデスベンツ EQCだが、ドイツ市場における販売台数はアウディが3578台とリードしている。絶対的な販売台数は少ないが、BEVの中では6位に位置している。

もちろんアウディはこの販売台数には満足していないようで、さらなる普及を目指してバリエーションの追加を決定した。eトロンのクーペバージョン、スポーツバックである。私はこれまでスタティック、そして新しいLEDヘッドライトシステムを搭載したプロトタイプを本誌で紹介してきたが、実はこのスポーツバックにはもうひとつ「S」モデルという隠し球があった。

ニューバリエーションのもっとも大きな特徴は、スタンダードのeトロンとは違ってフロントに1基、そしてリアに2基の合計3つのモーターを装備した点だ。しかも、後輪を駆動する2基のモーターは従来のクワトロシステムとは異なって、トルクベクタリング、すなわち理論的にはコーナリング時に左右の車輪に加わるトルクを内側と外側で個別にアジャストし、アンダーステアを減少させ、コーナリング時の姿勢を制御するシステムである。

アウディはこの効果を体験させるために私をはじめとした少数のジャーナリストを、本社のあるインゴルシュタット市に近いノイブルクにあるアウディスポーツ社のテストコースに招待した。

画像: テストデイにはアウディのブランドアンバサダーであるスティッグ・ブロムクヴィスト氏が登場、華麗なドリフト走行を披露してくれた。

テストデイにはアウディのブランドアンバサダーであるスティッグ・ブロムクヴィスト氏が登場、華麗なドリフト走行を披露してくれた。

スラローム走行で実力を確認

ベースのeトロン スポーツバックは2019年11月のロサンゼルスモーターショーで公開されているが、今回試乗した「S」は未公開なのでカモフラージュが施されていた。正確にはわからないがボディ周辺にはスタンダードモデルにはない空力パーツなどが装着されているのかもしれない。

電池パックはこれまでと同様の95kWhのリチウムイオン電池で、12個のセルが入ったモジュールで構成され、長さ2.28m、幅1.63m、厚さ34cmのアルミフレームと共に床下にレイアウトされている。

そして3基の電気モーターが発生するDレンジでのシステム出力は320kW(435ps5)と808Nm、Sレンジでブーストを掛けると370kW(503ps)と973Nmを発生する。その結果、自重2.6トンのeトロンスポーツバックは0→100km/hが4.5秒、最高速は210km/hに達する。

簡単な座学を受けて、アウディの開発エンジニアを助手席に従えてコースインする。まずはエンジニアの指示を受けてタイトコーナーへ進入、クリッピングポイントでアクセルペダルを踏み込んで挙動を見る。通常では明らかにアンダーステアでコーナーの外に押し出されるはずだが、このeトロンスポーツバック Sは2.6トンもの重さにもかかわらず、ハンドルを切った方向へ安定したコーナリング姿勢を保ちながら素早くコーナーから脱出できた。コーナリング時に外側にあるモーターは内側よりも最大で220Nmまで大きなトルクを発生できる。つまりブレーキ力ではなくて、推進力で安定したコーナリングを実現するわけである。

しかし、コーナリングよりも効果を強く感じたのはスラローム走行だった。このセッションでは、全長4.9mもある重量級SUVが、大きくハンドルを切ることなくパイロンをかわしてしていくことができた。これまで何度かこのようなシステムを試乗してきたが、このアウディのトルクベクタリングシステムほど自然なコーナリングとハンドリングを持つものはないと感じた。

このアウディeトロン スポーツバック Sは、ホモロゲーションはすでに取得済みで2020年中には市場に投入されるはずである。ただし正確な発売時期や価格はまだ発表されていない。(文:木村好宏)

画像: 今回試乗したモデルの透視図。フロントに1基、リアに2基のモーターを配置。平らな床下にはバッテリーが隠されている。

今回試乗したモデルの透視図。フロントに1基、リアに2基のモーターを配置。平らな床下にはバッテリーが隠されている。

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