2005年のニューヨークモーターショーで発表されたジープ・コマンダーは「7人乗り3列シートの初めてのジープ」として大きな話題を呼んだ。3代目グランドチェロキーをベースに、さらに大きく豪華で、デザインがよりジープらしかったのが特徴で、現在でも中古車市場で人気となっている。当時の試乗記から、どんなモデルだったのか、振り返ってみよう。(以下の試乗記はMotor Magazine 2006年8月号より、タイトル写真はコマンダー リミテッド 5.7 HEMI)

シャシはグランドチェロキーと同じ

ジープ・コマンダーの広報資料にこんな一節がある。「新型コマンダーに、大理石をハンマーとノミで彫って作り上げたような優美さはありません。(中略)細部に凝り過ぎていません」。これって、とっても謙虚な言い回しだが、実は自信の裏返しで、「どうです、カッコいいでしょ」と言いたいのである。

コマンダーはディター・ツェッチェ(元クライスラーグループ会長、現在はダイムラークライスラー会長)の肝いりで開発が進められた、ジープブランド初の7人乗り3列シートのSUVだ。

ボディラインはボクシーでクラシック。デザインエレメントは「伝説のジープ」と呼ばれるウィリス・ステーションワゴン(1946年)、ジープ・ワゴニア(1963年)から採り入れているが、最もイメージ的に近いのがジープ・チェロキー(1984年)だ。エッジが効いて引き締まったボディは、まさしく「ジープ」そのもの。

7本の縦型スリットグリル、台形のホイールアーチ、実は丸目基調のヘッドライトなど、本当は「細部に凝った」デザインなのである。近年のSUVは空力性能を考慮し、角が取れたデザインのモデルが多い。つまり画一的になりがちだ。となれば、このカタチこそがユーザーに支持される、とツェッチェは読んだのだ。

デザイン力は販売台数におおむねリンクするもので、この読みは当たった。コマンダーのプラットフォームはプランニングの段階では、3列シートゆえにかなりホイールベースが長かった。しかしこの案は採用されなかった。

理由は「ジープ」としての機動性、悪路走破性がロングホイールベースだとスポイルされるからという。なのでシャシはグランドチェロキーと同じで、クォドラドライブⅡと呼称する4×4システムも同一。車体サイズはグランドチェロキー比で長さが35mm、高さが80mmアップにとどまる。

7人乗り3列シートに対応した角張ったボディは2列目シートの上部から80mmほど高くなっている。いわゆるハイルーフなのだが、この持ち上がった部分はルーフラックレールがうまくカモフラージュし、「段付き」が気にならない。

2列目のシートは運転席より124mm高く、3列目は2列目より128mm高い。ちょうどスタジアムでスポーツ観戦するような感じ。後席の乗員は前方視界がいいので閉塞感がない。おまけに前席上に電動式、2列目シートに固定式のガラスサンルーフが装備されているので、室内はことのほか明るい。

画像: 2006年に日本で発売が開始されたコマンダー。ジープのトップモデルとして登場。写真はV6 4.7Lエンジンを搭載するコマンダー リミテッド 4.7。

2006年に日本で発売が開始されたコマンダー。ジープのトップモデルとして登場。写真はV6 4.7Lエンジンを搭載するコマンダー リミテッド 4.7。

湧き上がる底力がある5.7L HEMIエンジン

コマンダーに搭載されるエンジンはクライスラー300Cに初採用された可変シリンダーシステム(MDS)を持つV8のOHV(5.7L HEMI)とV8 SOHC(4.7L)の2種類。

まず5.7Lエンジン搭載車に乗ってみる。MDSとは軽負荷時になると8気筒から4気筒へシームレスに切り替えるシステムで、ドライバーはまったく気づかない。動弁機構はOHVで伝統的なアメリカンV8を彷彿とさせるが、実は現代流ハイテクエンジンなのだ。排出ガスレベルはユーロ4の基準を満たしているから立派。

出力は326ps、トルクは500Nmもあるから、まさしく余裕たっぷりで頼もしい。トランスミッションは5速ATで、Dレンジから左右にシフトレバーを動かすとマニュアル操作が可能。これは先代Sクラスで採用されたティップシフト型だが、私はこの「左右シフト」が気に入っている。

スクエアなボディ、高い着座位置のため、前方視界が良くリラックスしてドライブできるが、問題は3列目に乗員を乗せた場合、ルームミラーを通しての後方視界がほとんど確保されないことだ。3列目を倒しておけばノープロブレムなのだが。

輸出用(日本、欧州向け)のコマンダーはオーストリアのマグナシュタイア工場から出荷され、本国用はデトロイト製となる。サスペンションのセッティングは日本と欧州向けは本国仕様に比べてやや硬めになっているという。それでも舗装路のみを走った感じでは案外ソフトだった。ジープ本来の走行フィールド=オフロードランを重視すれば、このあたりのチューニングが妥当なのかもしれないが、他の欧州製SUVと比較するとロールはいくぶん大きめだ。

231psの4.7L版に乗ると、これがさほど気にならなくなる。ダイナミックバランス的にはこちらのほうがいいということになるが、アクセル一発ドン、と踏んだ時の快感はいわずもがな、5.7Lだ。

私はコマンダーのカクカクしたボディスタイルが好きだ。カッコいいと思う。それで「サスペンションをもう少しオンロードセッティングにして、2列シートにした、スポーツモデルがあればいいんだけど」とダイムラークライスラーのセニアマネージャー、ケヴィン・ターナー氏に問いかけた。氏は「うーむ」と笑って語らず。

3列シートがいらないユーザーも多いはず。弟分のチェロキーは。私には「丸すぎる」ので。(文:御田昌輝/Motor Magazine 2006年8月号より)

ヒットの法則

ジープ コマンダー リミテッド 5.7 HEMI 主要諸元

●全長×全幅×全高:4795×1900×1830mm
●ホイールベース:2780mm
●車両重量:2360kg
●エンジン:V8 OHV
●排気量:5654cc
●最高出力:326ps/5000rpm
●最大トルク:500Nm/4000rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:673万0500円(2006年)

ジープ コマンダー リミテッド 4.7 主要諸元

●全長×全幅×全高:4795×1900×1830mm
●ホイールベース:2780mm
●車両重量:2310kg
●エンジン:V6 SOHC
●排気量:4700cc
●最高出力:231ps/4500rpm
●最大トルク:410Nm/3600rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:599万5500円(2006年)

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