2006年にAMG完全独自設計の「63シリーズ」が登場するまで、AMGの主力エンジンとなっていたのがメルセデスエンジンをベースとしたV型8気筒ユニット「55シリーズ」だった。「63シリーズ」のワールドデビューを機に、Motor Magazine誌ではこの「55シリーズ」ユニットに注目。「55シリーズ」にはスーパーチャージャー仕様と自然吸気仕様があったが、その違いも確認すべく、E55 AMGとC55 AMGを連れ出して興味深い試乗を行っている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年6月号より)

パワーが溢れ出てくるE55 AMG

ドスンという重厚な音で閉まるドア。シートは腰掛けたときにあまり沈み込まずに身体を支え、ホールド感がよいことが走り出す前から感じられる。スピードメーターは320km/hまで刻まれ、このクルマのパフォーマンスをドライバーに予感させるには十分な演出がなされる。

ここまではショールームにあるAMGでも体験できるだろう。しかし、走らなくてもわかる差というのはAMGの大きな特徴でもある。

今回、E55 AMGを受け取って最初に乗ったのは夜だった。Dレンジに入れて普通に走ろうと思ったら、アクセルペダルの踏み始めから元気良く走ろうとし、いかにE55 AMGがパワフルかということを報せてくれた。実はこのときボクはこれが演出かと思い、もうちょっと穏やかにしてくれた方が乗りやすいのにと感じたのも事実。しかし、E55 AMGのアクセルペダルはその踏み込み量に比例したパワーを発揮する、ということをあとから理解させられた。

つまり、踏み始めからパワフルなのだが、踏み込んでいくとペダルの深さに比例してもっとパワフルになるということだ。ショールームの周辺をひと回りしたときにだけ凄いと感じさせるだけのギミックではない。ホンモノのパワフルさが溢れ出ていたのである。

空いた夜の道なら市街地でもこのパワーを使って楽しく走れるが、同乗者がいる場合には注意した方がいい。深くアクセルペダルを踏み込んだ瞬間から、もの凄い加速力を発揮するからだ。これはゼロ発進だけではなく、一度スピードを落として再加速するときにも起こる。加速の始まるときだけ穏やかにスムーズな加速に移っていっても、そのあとアクセルペダルを踏み込むと「乱暴な運転しないで!」と言われかねない。同乗者はジェットコースターに乗った気分を味わうことだろう。

E55 AMGはこの加速感がハイスピードまで続くから、アクセルペダルを踏んでいるドライバー自身が改めて凄いと感じる。これはスーパーチャージャーの威力だろう。しかも低回転域でもアクセルペダルの踏み込みに対し遅れがない。一度アクセルペダルを戻して再び踏み込んだときに素早く反応するから、ほとんどNAと同じ感覚だ。

E55 AMGをアウトバーンで乗ったら、きっとドイツ中どこへでも飛行機より早く目的地に着くことができるだろう。

画像: 暴力的と言えるほどのパワーを誇るE55 AMG。

暴力的と言えるほどのパワーを誇るE55 AMG。

高回転までフラットなトルクのC55 AMG

ちょっと暴力的と言えるほどのパワーを誇るE55 AMGに対して、C55 AMGは速いがE55 AMGのあとではまろやかに感じる。同じV8エンジンであるがスーパーチャージャーを持たないNAエンジンだからだ。それでもちょっと小ぶりのCクラスのボディだから、車重は軽く動きも軽快だ。

アクセルオフから再度踏み込むケースでも、一度イーブンアクセルにしてから加速を開始するとスムーズに加速状態に持っていける。これだとそのあとに凄い加速力を発揮したとしても同乗者をごまかして気持ちのいい走りを続けられる。速いけど暴力的でないところがC55 AMGらしさかもしれない。

C55 AMGのタコメーターのレッドゾーンは6500rpmからだが、低回転域からトルクがあり、高回転まで持続する。フラットトルクではあるけれど、頭打ちにならずちゃんと盛り上がり感があるチューニングになっている。

ワインディングロードや市街地走行では取り回しがいいと感じた。これはオリジナルのCクラスと共通のボディで、Aピラーの根元がドライバーに近いところにあるからだ。最近のクルマはミニバンを筆頭にみんなAピラーを寝かせているが、これがいかに視界の妨げになっていて運転しにくいものかということを、視界の良いCクラスに乗ることで再確認できた。

C55 AMGは速いのにワインディングロードでも扱いやすかった。この視界のよさと同時にAMGの手によるハンドリングのよさが光っていたからだ。

ハンドルを切り込んでいったときにノーズは素直にインを向いてくれる。コーナーが回り込んでいるときには、さらにハンドルを切り足してもちゃんと追従してくれる。操舵に対してシャープな方ではないが、ハンドル角に対して比例したヨーが出てくれるのである。早い操舵でも遅れはないので、かなりスポーティなドライビングや危険回避の操作でもリニアな動きで扱いやすい。

急激なレーンチェンジをしてもESPが作動しなくてもリアは落ち着いているから、ドライバーには安心感がある。C55 AMGのこの感覚を理解するとワインディングロードを走ることがますます楽しくなってくる。

C55 AMGが履くタイヤは、前が225/40ZR18 92Y、後が245/35ZR18 92YというサイズのピレリPゼロ・ロッソ。ファットでハイトも低いが乗り心地が損なわれることもなく、しっかりした乗り味だ。揺すられることもないので長距離ドライブでも疲れないだろう。

画像: 5.5L V8エンジンを搭載するためにフロントノーズを延長したC55AMG。

5.5L V8エンジンを搭載するためにフロントノーズを延長したC55AMG。

乗り味のC55 AMG、パワーのE55 AMG

C55 AMGもE55 AMGも5速ATと組み合わせているが、セレクターレバーの横のボタンでM、C/Sが選択できる。Sはスタンダードモードで通常走行はすべてこれでまかなえる。Cはシティモードで2速発進になり、早めにシフトアップしていくプログラムになる。これは信号待ちなどでクリープを弱くしてドライバーを助け、トルクも十分なので燃費にも貢献する。

Cモード、Sモードでもステアリングスイッチによるシフトが可能だ。右はシフトアップ、左はシフトダウンで両方ともステアリングスポークの裏側のスイッチを指で押す。しかしこのときはレンジ切り替えなので表示が3になっていても1速、2速、3速の可能性がある。そしてアクセルペダルでのキックダウンもする。

Mモードは完全なマニュアルモードだ。スピードが落ちれば自動的にダウンしていくが、そのギアの守備範囲であればキックダウンはせずシフトアップもしない。レッドゾーンに入ったときも、一度深く入り込むが少し戻ったところで落ち着く。バッバッバッとならずにとてもスムーズである。E55 AMGの場合は6400rpmからレッドゾーンであるが、一度6800rpmまでいってから6500rpmまで戻って一定になる。

E55 AMGでワインディングロードを走るときESPをカットする気にはなれない。Mモードで2速を選んでカーブの出口でアクセルペダルをグイッと床まで踏み込むと、加速が始まったかと思った瞬間にズルッとリアの速い滑りが発生する。もちろんESPが即座に作動する。エンジン出力を抑えフロント外側のタイヤにブレーキを掛けてオーバーステアを瞬時に止めてくれる。パワーオンによるリアの滑りがかなり速いのでESPをカットするときは余程安全マージンが確保できている場所でないとできない。

E55 AMGは前が245/40ZR18、後が265/35ZR18という超ファットなタイヤを履いているが、これをも簡単に滑らせるパワーを持っているということだ。

C55 AMGは速さと質感の高さを感じるが上品な乗り味を持つ、そしてE55 AMGは圧倒的なパワーと速さを月日を掛けて乗りこなすという楽しみを秘めているクルマだと言っていいだろう。(文:こもだきよし/Motor Magazine 2006年6月号より)

画像: 左がC55 AMG 5.5L V8自然吸気367ps、右がE55 AMG 5.5L V8スーパーチャージャー476ps。

左がC55 AMG 5.5L V8自然吸気367ps、右がE55 AMG 5.5L V8スーパーチャージャー476ps。

ヒットの法則

メルセデス・ベンツ E55 AMG(2006年) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4850×1820×1430mm
●ホイールベース:2855mm
●車両重量:1910kg
●エンジン:V8SOOHCスーパーチャージャー
●排気量:5438cc
●最高出力:476ps/6100rpm
●最大トルク:700Nm/2650〜4000rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:1369万2000円(2006年当時)

メルセデス・ベンツ C55 AMG(2006年) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4620×1745×1410mm
●ホイールベース:2715mm
●車両重量:1650kg
●エンジン:V8SOOHC
●排気量:5438cc
●最高出力:367ps/5750rpm
●最大トルク:510Nm/4000rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:892万5000円(2006年当時)

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