2005年に登場したゴルフGTは次世代のパワーユニットのあり方を大きく変える画期的なモデルとして大きな注目を集めたが、その焦点は1.4TSIともうひとつ、2.0TDIにあった。「スポーティかつ高効率」であるための解答として、直噴ディーゼルターボエンジンを大きく進化させていた。1.4TSIとあわせて、2006年春に行われた試乗会とワークショップの模様を見てみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年6月号より)

ゴルフGTに搭載されるもうひとつのエンジン

昨年、ドイツの新車登録のディーゼル車の割合が史上初めて50%を超えたという報道で、乗用車の主力エンジンはディーゼルという時代が到来したことが、改めて印象づけられた。そんな中、ゴルフGTが積むTSIユニットはガソリンエンジンの可能性を今一度追求して、見事に結果に繋げた素晴らしいエンジンだということに異論を挟む余地はない。これなら燃費かパワーフィールかといった理由はともかくとして、ディーゼルに傾いているユーザーを再び惹き付けることができるかもしれない。

しかし何とフォルクスワーゲンは、同時にディーゼルエンジンも大きく進化させていたのだった。同じくゴルフGTに搭載される、最新の2.0TDIユニットがそれである。

ゴルフやトゥーラン等々、幅広いモデルに使われている従来型の2.0TDIは、最高出力140ps/4000rpm、最大トルク320Nm/1750rpmを発生する。対するこの新型TDIユニットは、最高出力はTSIと同じ170psを4200rpmで発生し、最大トルクは、何と350Nm/1800〜2500rpmにも達する。しかも、これは組み合わされるDSGの許容トルク容量に合わせて、敢えて抑えた上での350Nmなのだ。

スチール製ブロックを用いた直列4気筒DOHC4バルブのこのエンジンは、ボア81.0×ストローク95.5mmという典型的なロングストローク型で、排気量は1968ccとなる。

圧縮比は18.0と、140ps仕様の18.5よりさらに低くなった。これは、高圧燃料噴射装置の採用によって圧縮比を高めずとも十分な始動性を確保できるようになったおかげである。当然、圧縮比が下がればピストン等の内部パーツは軽量化でき、レスポンスも向上する。

このように、従来と変わらない排気量でさらに30ps、30Nmを上乗せするべく、この新しいTDIユニットには数々の新機軸が投入されている。その筆頭に挙げられるのが、ピエゾ式ユニットインジェクターだ。

これは電磁バルブの実に4倍の反応速度を誇るピエゾ式バルブを用いることで、1行程につき最大で実に5回の燃料噴射が可能なことが最大の特徴。燃焼をきめ細かく制御することで、騒音や振動、そしてクリーン性を大いに高めることができる。特に、これまでユニットインジェクターの弱点とされてきた振動や騒音は、逆に一般的なコモンレール式を凌ぐものになっているという。

それでいて、燃料の噴射圧力は、最新コモンレールシステムが1600bar前後なのに対して、実に2400barを実現。高い霧化性によって、さらに燃焼効率を向上させている。フォルクスワーゲンは、すでに次期型エンジンではコモンレール式を採用することを発表しているが、性能的にはユニットインジェクターは捨てるに惜しい技術なのだ。

新世代の可変ジオメトリー式ターボチャージャーの採用もパワーアップに大きく貢献している。他にも冷却水経路の変更、耐吹き抜け性/気密性を向上させる新しいヘッドガスケット、オイルポンプギアと一体化されたシンプル構造のバランサーシャフト等々、細部に至るまで設計をリファイン。その結果、2Lクラストップの高性能を実現してみせた。

画像: 2.0TDIエンジン。最高出力は1.4TSIと同じ170psだが、最大トルクが350Nm(1.4TSIは240Nm)と大きく違う。低回転でも十分にターボが効くように、排気の流量に応じてタービンホイールに向けたガイドベーンの角度を変える可変ジオメトリー式ターボを採用。

2.0TDIエンジン。最高出力は1.4TSIと同じ170psだが、最大トルクが350Nm(1.4TSIは240Nm)と大きく違う。低回転でも十分にターボが効くように、排気の流量に応じてタービンホイールに向けたガイドベーンの角度を変える可変ジオメトリー式ターボを採用。

凄まじいばかりのトルク、DSGとの相性も抜群

前述の通り、ギアボックスはDSGと6速MTが用意される、TDI仕様のゴルフGT。そのパフォーマンスは、まさしく圧倒的だ。停止状態からアクセルペダルを踏み込むと、回転の高まりを待つまでもなく強力なトルクが涌き上がり、即座に首が仰け反るほどの加速が始まる。

4500rpmのレブリミットまではまさに一瞬。140psユニットのようなトップエンドの頭打ち感は皆無だ。おかげで、ますます息をつく暇はない。DSGが一瞬でシフトアップを終わらせるため、すぐさま次の加速の波が襲ってきて、気付けば速度は相当な高みへ。なお最高速度は220km/h、0→100km/h加速は8.2秒と発表されている。

試乗したのは路面状況が良いとは言い難い一般道。路肩に積もった雪が溶け出して路面を濡らしているような状況だったこともあり、ラフに踏み込むと3速で加速している途中でもホイールが空転するくらい、そのトルクは凄まじい。率直に言って、この刺激を味わった後には、TSIも薄味に思えてしまった。従来型140psユニットの、カラカラといかにもディーゼルらしい音を思えば随分静かになったとは言え、エンジン音はまだ大きめだが、この迫力ある加速には合っているようにも感じた。

この走りっぷりに加えて、ダメ押しとばかりに強い説得力をもって響いてくるのが、そのエミッション性能、そして省燃費性だ。酸化触媒とDPF(ディーゼル微粒子フィルター)は当然標準装備だし、ディーゼルが元々有利なCO2排出量は、TSIより1割近く少ない。そして何より燃料消費は、わずか5.9L/100kmに過ぎないのだ。

そもそもゴルフは初代モデルに排気量1.7Lのディーゼルエンジンを積むGTDを設定して以来、小型車に於けるディーゼルエンジン積極展開のパイオニア的存在だった。初代ゴルフGTIがアウトバーンに民主化をもたらしたのだとすれば、同じようにディーゼルエンジンをすべての階級に開かれたものとしたのが、紛れもなくこのゴルフだったのだ。

その後も、1994年に登場して日本にも導入されたCLディーゼルにて、酸化触媒を他社に先駆けて採用するなど、ゴルフは常にディーゼル小型車の世界をリードする存在であり続けてきた。そして最新モデルでも、クラス最強のパフォーマンスを実現するこのエンジンが、他でもないゴルフに搭載されたことに、そうした歴史は確実に受け継がれていると強く感じる。となると、これに日本で乗れないという現状が、やはり何とももどかしいのである。(文:島下泰久/Motor Magazine 2006年6月号より)

画像: 「GT」のエンブレムと2本出しマフラーがスタンダードのゴルフとの違い。1.4TSI仕様と外観は変わらない。

「GT」のエンブレムと2本出しマフラーがスタンダードのゴルフとの違い。1.4TSI仕様と外観は変わらない。

ヒットの法則

フォルクスワーゲン ゴルフGT 2.0TDI 2ドア 主要諸元

●全長×全幅×全高:4204×1759×1485mm
●ホイールベース:2578mm
●車両重量:1313kg
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●排気量:1968cc
●最高出力:170ps/4200rpm
●最大トルク:350Nm/1800-2500rpm
●トランスミッション:6速DSG
●駆動方式:FF
●最高速:220km/h
●0-100km/h加速:8.2秒
※欧州仕様

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