2006年、アウディからついにSUVが登場している。初代Q7だ。フォルクスワーゲン トゥアレグ、ポルシェ カイエンの後を追うようにデビューした、アウディ発のSUVはどんなモデルだったのか。既存のSUVにはない「アウディらしさ」とはなんだったのか。アメリカ・アリゾナで行われた試乗会の模様を紹介しよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年5月号より)

その走りは明らかにオンロード志向

待ちに待ったというべきか、意外に早かったというべきか。いずれにせよ、Q7がこのセグメントの図式を変えていくことになるのは間違いない。

思えば2003年、アウディが「パイクスピーク・コンセプト」を発表したことは自動車界に大きな反響を呼んだ。折しもポルシェ/フォルクスワーゲンがカイエン/トゥアレグを発表したばかりで、誰もがアウディがこのセグメントに進出するとは考えていなかったからだ。

そして今、すでにメルセデス・ベンツ、BMW、ポルシェ、フォルクスワーゲン、レンジローバー、ボルボなどが群雄割拠するセグメントに、アウディが進出する意図はどこにあるのか、それらライバルとQ7はどう違うのか、興味はつきない。

アウディとしては、北米市場でプレミアムであり続けるためにはどうしてもSUVが必要だったのだろう。たとえライバルに先を越されていようと、投入しなければならなかったということだ。となると、そこには明確にアウディらしさを出さなくてはならない。

では、Q7に見るアウディらしさとはなにかということになる。アウディのメカニズムにはよく見ると興味深い点がある。

メカニズムのラインナップが実に複雑なのだ。たとえば、エンジン。アッパー3Lクラスで見ると、A4/A6などに搭載される3.2FSI、A3/TTなどに搭載される狭角の3.2L V6、A8に設定される3.7L V8、そして新開発の3.6L V6 FSIとわずかの排気量差で4つも用意される。

たとえば、トランスミッション。マニュアルシフトは別としても、ティプトロニックAT、マルチトロニックCVT、そしてDSGを、エンジンや用途によって使い分ける。

たとえば、駆動システム。縦置きFFを基本として、横置きFF、さらにハルデックスタイプのクワトロ、トルセンデフを使ったクワトロ、新しいFR寄りのクワトロも存在する。メカニズムのラインナップが多くなればコストがかかるから、意地悪く見れば、それは「迷い」ともとれる。

しかし、アリゾナでQ7に乗って、こういった複雑なラインナップはあくなき技術への挑戦によるものだと感じた。技術による先進、アウディにとって技術はあくまでも優先されるべきことなのだ。コストだけを考えたら、とてもこんなことはできないだろう。常に新しくて良いものを追求していくから、メカニズムが増えていく。アウディは技術フェチなんだと思う。

さて、Q7である。このクルマ、とにかくでかい。シャープでダイナミックなスタイリングのせいか、それほど巨大な感じはないが、カイエンやトゥアレグよりも大きい。しかし、この大きさと広さ、そして3列シートを持つことがひとつの魅力となる。

デザインも新鮮だ。これまでのものとは違う。インテリアの品質の高さもあって、とにかくSUV臭さがまったくない。がんばってスタイリッシュにしようという気負いもなく、自然にカッコよくて、そして上質だ。これは凄い。

その精緻さは、これまでのSUVのレベルをはるかに超えて、別のセグメントのようだ。注目したいのは、最新の第3世代クワトロを用いた駆動システム。機械式のセルフロックデフを使い、標準時で40:60、必要に応じて65:35~15:85まで可変する。今回はオフロード走行を試すことはできなかったが、明らかにその走りはオンロード志向だ。

ライバルたちが好んで電子制御式センターデフを使う中、完全な機械式として俊敏でトルクステアのない操縦性を実現、しかもハイパワーに対応するのが特徴となっている。そして、これに合わせて、エンジンの搭載位置をアウディとしては異例なほど後ろ寄りとしている。前後重量配分はほぼ50:50という。

フロントオーバーハングはわずか965mmしかない。これはQ7が全車クワトロであることから可能となったのだろうが、リア寄りのトラクションとともに、新しいアウディの方向性として興味深いところだ。

走りの質を高めるために、常に技術による進歩を止めない。たとえいいものが完成しても、さらにその上を目指す。これによってライバルたちとの違いを明確にしていく。それがアウディの理論なのだ。(文:松本雅弘/Motor Magazine 2006年5月号より)

画像: 威風堂々としたボディサイズとダイナミックなデザイン、広々とした室内空間と豊富なシートアレンジが大きな魅力。5人乗りを基本に、6人乗りと7人乗りも用意する。アルミを多用して軽量化も図られている。

威風堂々としたボディサイズとダイナミックなデザイン、広々とした室内空間と豊富なシートアレンジが大きな魅力。5人乗りを基本に、6人乗りと7人乗りも用意する。アルミを多用して軽量化も図られている。

ヒットの法則

アウディQ7 4.2FSIクワトロ 主要諸元

●全長×全幅×全高:5086×1983×1737mm
●ホイールベース:3002mm
●車両重量:2240kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4163cc
●最高出力:350ps/6800rpm
●最大トルク:440Nm/3500pm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●最高速:244km/h
●0-100km/h加速:7.4秒
(欧州仕様)

アウディQ7 3.0TDIクワトロ 主要諸元

●全長×全幅×全高:5086×1983×1737mm
●ホイールベース:3002m
●車両重量:2295kg
●エンジン:V6DOHCディーゼルターボ
●排気量:2967cc
●最高出力:233ps/4000rpm
●最大トルク:500Nm/1750-2750pm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●最高速:210km/h
●0-100km/h加速:9.1秒
(欧州仕様)

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