写真家であり編集者の都築響一さんが独自の切り口で、最先端の写真家を紹介するKKAG連続企画「都築響一の眼」。シリーズ3回目は、台湾で活躍する女性写真家、許曉薇(シュウ・ショウウェイ)さんによる写真展『花之器』(The Vessel That Blossoms)。
本展では、シュウさんがしなやかに鍛え上げた自らの身体に花を生け、セルフポートレートを撮影した20数点の作品が展示されています。

KKAGより4月臨時休館のお知らせ

KKAGは、新型コロナウイルスの影響により、4月1日から4月30日まで臨時休館といたします。これに伴い、誠に残念ですが現在開催中の許曉薇(シュウ・ショウウェイ)写真展『花之器』は中止とさせていただきます。
なお、中止となる本展は、4月中もKKAG会場内に作品を展示します。観覧を希望される方は、日程調整のうえ個別にご案内しますので、以下の弊館ウェブサイトContactページからご連絡ください。
http://kkag.jp/contactform/

SMとの出会いを経て

マレーシア出身の許曉薇(シュウ・ショウウェイ)さんは、父からの虐待と冷たい家族関係から逃げるように台湾の大学に進学。
シュウさんは、分子医学で博士号を取得し、研究者として大学付属病院で働きながら、孤独な日々を過ごすうちに、これまでの自分の人生と生きる意味をもう1度、見つめ直します。
シュウさんがSMに出会ったのは30歳を超えたある日。そして台北や東京のSMシーンに入り混んでいくうちに、日常の束縛から解き放たれて輝く仲間たちを撮影し始めます。
しかし、保守的で厳格な台湾の芸術界では発表する場が持てず、また撮影を承諾してくれる仲間たちのプライバシーを守るため、シュウさんは悩んだ末に「自分の好きなものを、誰にも迷惑をかけずにつくりたい」と、2011年頃より自分をモデルにした撮影を始めます。

画像: 展示作品「出草盛」より。 『花之器』(The Vessel That Blossoms)と題された本展のタイトルには、“器”と“船”を意味する「ヴェッセル」という英語も使われています。自らが花器となり、花と自己の魂をも乗せて、シュウさんの旅はきっとこれからも続いていくのでしょう。

展示作品「出草盛」より。
『花之器』(The Vessel That Blossoms)と題された本展のタイトルには、“器”と“船”を意味する「ヴェッセル」という英語も使われています。自らが花器となり、花と自己の魂をも乗せて、シュウさんの旅はきっとこれからも続いていくのでしょう。

自らの身体を花器として、花と共に魂を解き放つ

シュウさんが、本展で発表している『花之器』シリーズを制作し始めたのは2016年の頃。
現在も研究者として働きながら、撮影に専念できる週末に、市場に通っては花木を選び、自らの身体に花を生け、セルフポートレートを撮影されているそうです。
シュウさんの身体に生けられた花木は、蓮や蘭をはじめ、どれも一風変わった、艶めかしく力強いものばかり。

画像: 展示作品「松月序(Prelude)」より。 スタジオを持たないため、自宅の台所の食卓に布を敷き、セルフポートレートを撮影をしているシュウさん。 三脚にデジタルカメラをつけ、5秒ごとに切るシャッターに合わせて、試行錯誤しながら花を生けた肉体をくねらせ、ポーズをとっていくそうです。

展示作品「松月序(Prelude)」より。
スタジオを持たないため、自宅の台所の食卓に布を敷き、セルフポートレートを撮影をしているシュウさん。
三脚にデジタルカメラをつけ、5秒ごとに切るシャッターに合わせて、試行錯誤しながら花を生けた肉体をくねらせ、ポーズをとっていくそうです。

花が持つエネルギーは本来とても強いもの。そして花に向き合う人間も、その花を受け止めるだけの、もしくはそれ以上のエネルギーを持たなければ花の力に負けてしまうものだと思います。
また花を生ける行為は、人間にとって本能的な欲望であり、生ける人間の姿勢や手の跡が、はっきりと花の姿に表れるものだとも思います。

本展を鑑賞していると、シュウさんの肉体に生けられた花たちが、シュウさんの魂の奥底から沸き出る叫びに答えるかのように、彼女の肉体から、大胆に美しく咲き誇る姿に強い衝撃を受けます。
太い茎や枝、時にはトゲや毒をもつ花もあるように、自分の口や性器に花木を生ける行為は、快楽と共に痛みも伴うもの。
いつしかシュウさんの内側に存在していたであろう感情的な痛みと溢れんばかりのエネルギー。1人の女性が、それらを外へ外へと解放すべく、自らが花器となり、花と共に唯一無二のポートレートとして昇華させていく姿は、圧巻であり、見てはいけないものを目撃しているようでもありました。

画像: 展示風景より。 自分の身体に生ける花は、花言葉やその由来なども調べながら、台湾の伝統的な花を選んでいるシュウさん。撮影に使った花は、部屋に飾ったり押し花にして、最後まで花と向き合われているそうです。

展示風景より。
自分の身体に生ける花は、花言葉やその由来なども調べながら、台湾の伝統的な花を選んでいるシュウさん。撮影に使った花は、部屋に飾ったり押し花にして、最後まで花と向き合われているそうです。

展覧会情報

KKAG連続企画「都築響一の眼」vol.3 /
許曉薇(シュウ・ショウウェイ)写真展『花之器』(The Vessel That Blossoms)

会場:KKAG(Kiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery)
住所:東京都千代田区東神田 1-2-11 アガタ竹澤ビル405 桑原清幸会計事務所内
TEL:03-3862-1780
会期:2020年3月18日(水)~2020年4月4日(土)
開館時間:15時 ~ 21時(水、木、金、土)
休館日:月、火、日
開館時間:15時 ~ 21時
入場料:500円

都営新宿線「馬喰横山」駅A1出口より徒歩2分JR
横須賀線・総武快速線「馬喰町」駅 西口2番出口より徒歩2分
日比谷線「小伝馬町」駅 2・4番出口より徒歩6分
都営浅草線「東日本橋」駅より徒歩6分

許曉薇(シュウ・ショウウェイ/Hee Siow-Wey)さん プロフィール

【学歴】
2011年 国立台湾大学大学院分子医学研究所博士後期課程修了、台北、台湾

【仕事】
2011年 国立台湾大学付属病院ポストドクトラルフェロー、台北、台湾

【個展】
2019年《花之器》Gallery 176、大阪、日本
2019年《花之器》1839當代藝廊、台北、台湾

【グループ展】
2019 年《吟花》【靜之華】攝影藝術展,亞億藝術空間、台北、台湾
2018 年《花之器》「掠像」と「造像」展、国立台湾藝術大学国際展示ホール、台北、台湾
2018 年《吟花》台北アートフォトショー、華山1914 文化創意產業園區、台北、台湾
2018 年《花之器》台北アートフェア、台北貿易センター1号館、台北、台湾
2018 年《花之器》台湾アートフェア、新光三越デパート文化会館、台北、台湾
2018年 《台湾写真表現の今〈Inside/Outside〉》東京藝術大学大学美術館陳列館、東京、日本
2016 年《花之器》台北アートフォトショー、華山1914 文化創意產業園區、台北、台湾
2016年 《彼岸天堂》プライベートな傷跡展、中正紀念堂、台北、台湾
2015年 《戰士》アジア地域第一回ビーディエスエム(BDSM)
     性欲と文化シンポジウム、国立台湾大学、台北、台湾
2014年 《タンスの中の人》フォルモサ.アートフェア、ハンブルハウス台北ホテル、台北、台湾
2014年 《タンスの中の人》台北アートフォトショー、華山1914 文化創意產業園區、台北、台湾
2014年 《タンスの中の人》ポルノヌード写真藝術展、華山1914 文化創意產業園區、台北、台湾
2014年 《霊魂を縛られる》「レトロ・コンテキスト(Retro Context)」展、中山創意基地、台北、台湾

【受賞】
2011年 フランス PX3 国際写真コンテスト1 榮譽獎
2011年 アメリカ IPA 国際写真コンテスト 3 榮譽獎

【出版物】
2014年《櫃子裡的人》

*新型コロナウイルス感染拡大防止のため、当サイトに掲載している写真展等の内容が変更となる可能性があります。最新情報につきましては公式サイト等からご確認ください。

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