思い切り大胆に寝かされたルーフラインが、ひときわ美しい。同時にリアまわりには、SUVらしい重厚感まで兼ね備えている。スポーティかつエレガントな「クーペ」は、走りももちろん上質の極みだった。(Motor Magazine 2020年4月号より)

着座位置を低めることでクリアランスを確保

こんもりとうず高い大型SUVを少しでも軽快に見せるべく、全高を抑え、ルーフライン後方をなだらかに引き下ろしたSUVクーペスタイルを考案したのが、2008年に登場したBMW X6だった。予想を上回る人気ぶりにその手法は各メーカーに伝播して行く。

今回試乗したカイエンクーペもまさに、そうした近年のトレンドをなぞっている一台。もっともポルシェでは、先代の2代目カイエン当時からすでに、クーペルックの発案はあったと聞く。ただ剛性面で不利なため、当初からクーペ化を念頭に置いて開発が進められた3代目で初めてのデビューとなった・・・というのが、今回の満を持しての登場に至る経緯のようだ。

時間をかけて作り込んだおかげだろうか、このカイエンクーペ、確かにまとまりが良い。全高はカイエンに対し低くなっているに過ぎないのだが、ドライバーの頭上あたりをピークに後方に向けてなだらかに引き下ろされるルーフラインは明らかにスタイリッシュ。試乗車はマホガニーメタリックという渋めのボディカラーだったのであまり目立たなかったものの、カイエンクーペは全グレードにガラスルーフ(シェードの開閉は可能だがガラス自体は固定式)が標準装備となる。とくに彩度の高いボディカラーではルーフラインがスリムに見えて、より軽快さが際立つはずだ。

リアウインドウ自体は積載性や居住性を考慮したのか、あまり極端な前傾とはなっていないのだが、ルーフエンドに専用デザインのスポイラーを装着することでクーペらしい伸びやかさを表現する。加えて90km/h以上で上昇するアダプティブリアスポイラーを装備、高速安定性も両立させている。

室内に乗り込んでみる。カイエンより全高が低いが、前席はクッションをスリムにすることで、後席はスライド機構を廃止することでも着座位置が低められている。さらにルーフライニングも削り込んで、ヘッドクリアランスを確保。もともとサイズ的に余裕のあるカイエンはレッグルームの前後長などもしっかり取れているので、クーペフォルムとなっても狭苦しさや閉塞感はなかった。ちなみにカイエン クーペはリアシートが2名分の4シーターが基本だそうだが、試乗車には無償オプションの3人掛けシートがセットされていた。

ラゲッジスペースは通常時、カイエンより100L少々小さくなった625Lだが、実用面に不満は出ないはず。もちろんリアシートバックを倒してしまえば最大1540Lまで拡張が可能だ。

画像: 100km/h巡航時のエンジン回転数は8速ATで1400rpm。エンジン音はいたって静かだ。

100km/h巡航時のエンジン回転数は8速ATで1400rpm。エンジン音はいたって静かだ。

3代目の軽量ボディでファンな走りがより際立つ

冒頭でも述べたように、カイエンクーペはカイエンと同様、3種類のエンジンが用意されている。この中から今回試したのは、もっともベーシックな仕様となる340ps/450Nmという実力の3L V6ターボエンジンだ。 

ポルシェのエンジンと言うと、アクセルペタルがスロットルに直結したようなレスポンスの良さとか、トップエンドまでよどみなく回る切れ味などが取り沙汰されがち。そうした味わいを強調した高出力ユニットと比べると、このカイエンクーペが搭載するV6ターボはトルクバンドが非常に広く扱いやすいうえに、回転フィールも滑らかで、極めてジェントルな味わいが印象的だった。 

オプションのスポーツエキゾーストシステムを装備していたため、エンジン音の主張はそれなりにあったが、それも過剰なレベルではなく抜けの良い快音レベル。基本的には、快適性を重視したパワーユニットだと思う。

もちろんスペック的には十分な余裕があり、2トン級のボディを苦もなく走らせる。100km/h巡航時のエンジン回転数は速ATで1400rpm。そんな場面での静粛性の高さも特筆に値する。それはまさに、クーペのエレガントなフォルムを普段からじっくり楽しむベースユニットにふさわしい味付け。だが、いわゆる激しさとか熱さは、やや希薄だ。

この点をどう捉えるかで、評価は大きく変わる。ポルシェブランドで、ましてやカイエンよりもさらに軽快な身のこなしを期待させるカイエン クーペとなれば、よりスポーティな味わいを求めたくなるのではないだろうか。その場合、このV6ターボは大人しすぎると感じられるかもしれない。550psのV8ツインターボとまでは行かなくとも、2.9L V6ツインターボで440ps/550Nmのカイエン Sクーペくらいの刺激が欲しい。そう感じる向きが多いような気がする。

しかし実際にはベーシックなこのカイエンクーペでも、ハンドリングはなかなかに軽快だった。プラットフォームを軽量なMLBエヴォとしているおかげで、カイエン自体、身のこなしがかなり軽い。カイエン クーペはさらに着座位置が少し低くなっているため、より地面が近い感じで切れ味がより増した感覚があるのだ。 

走行モードはハンドル内側の丸いスイッチで切り替えられ、ノーマル/スポーツ/スポーツ+/インディビジュアル/オフロードなどが選択できる。カイエン クーペは電子制御サスペンションのPASM(ポルシェアクティブサスペンションマネジメントシステム)が標準装備なので、スポーツ+ではもっともハードな設定になるのだが、そのかいあってターンインのノーズの動きが軽く、定常円旋回に入ってからの姿勢もフラットで、安心して走り込めた。

しかも乗り心地が非常に良い。ダンピングがハードになるはずのスポーツ+でも滑らかで重厚な乗り味を提供し続けてくれる。確かに刺激は少ないが、このカイエンクーペ、スポーツSUVを標榜するシリーズのベースモデルとして、絶妙な立ち位置にいるのかもしれない。(文:石川芳雄)

画像: 試乗したモデルは3L V6シングルターボエンジンを搭載。340ps/450Nmで0→100km/h加速は6秒。

試乗したモデルは3L V6シングルターボエンジンを搭載。340ps/450Nmで0→100km/h加速は6秒。

■ポルシェ カイエン クーペ主要諸元

●全長×全幅×全高=4931×1983×1676mm
●ホイールベース=2895mm
●車両重量=2030kg
●エンジン= V6DOHCターボ
●総排気量=2995cc
●最高出力=340ps/5300-6400rpm
●最大トルク=450Nm/1340-5300rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT
●車両価格(税込)=1135万6481円

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.