2006年、すでに世界的な人気モデルとなっていた5代目ゴルフシリーズは着実な改良とバリエーション追加を行っている。その進化は目に見える部分だけでなく、熟成という形で実現されている。当時、フォルクスワーゲンはどのようなクルマ作りを目指していたのか。ゴルフシリーズの2006年モデルの試乗記を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年3月号より、タイトル写真は左から、ゴルフトゥーランGLi、ゴルフプラスE、ゴルフGT)

質感をより高めるべく、きめ細かな改良を行う

元日が土曜日となった関係上、お屠蘇気分もほどほどで迎えた2006年の幕開け、いつものプレスリリースが手元に届いた。フォルクスワーゲンが2005年も輸入ブランドNo.1の座を守ったという内容だ。

昨年、フォルクスワーゲンが日本で売った台数は5万3441台。前年比4%減は手放しでは喜べない数字かも知れないが、それでも6年連続して輸入車ブランドトップの座を守り通したのだから、やはりその実力は大したものである。

ちなみに、2005年の日本の自動車市場をザックリと振り返ると、レクサス開業の刺激からか輸入車を含むプレミアムカーの注目度が高まる一方で、軽自動車も格段の伸びを見せた。つまりアッパーとボトムの2極が売れたのだ。その意味でも、プロダクトの裾野を拡げつつあるとは言え、実用小型車を得意としラインナップの中核に据えるフォルクスワーゲンにとっては厳しい一年だった。

ところで、6年連続でフォルクスワーゲンを輸入ブランドトップの座に導く原動力となったのは、ほかならぬゴルフである。トゥーランやプラスを含むゴルフシリーズの2005年の販売台数は実に2万7410台。これは新型の導入で猛攻を掛けたBMW3シリーズ(1万8701台)をもってしても遠く及ばない数字。フォルクスワーゲンにとっても全体の半数以上を占めるから、文字通りの「大黒柱」である。

それだけに商品力のアップも弛まず行われ、昨年2005年の後半から暮れに掛けて2006年モデルと言うべき新モデルのラインナップを終えている。いずれも発表された内容は装備類のキメ細かい充実に留まっているが、欧州車は乗ってみないと確かなことは言えない。スペックには表れなくとも乗り味を激変させるような改良が行われるケースも少なくないからである。

ただし、ゴルフシリーズはラインアップも膨大で、さすがにここで全グレードを網羅するのは無理がある。そこで最初に各車の改良ポイントを紹介しておこう。

足まわりの見直しで生まれ変わったゴルフGT

まずは大黒柱の中核となるゴルフから。時系列で追って行くと、最初に2006年モデルとなったのは9月27日に発売されたGTIだ。当初の導入時に「間に合わなかった」DSGについにパドルシフトが付き(レスオプションでパドルなしも選べる)、合わせて坂道発進の時などに数秒間、半クラッチ状態を維持し車両の後退を防ぐヒルホルダー機能が追加された。こうした仕様変更に伴いDSGモデルのみ+5万円の341万2500円となったが、DSGの電光石火のシフトを楽しむにはパドルシフトは必携のアイテムだから、これを高いと感じる人は少ないだろう。

事実、GTIは高額モデルながらシリーズの売れ筋モデルのひとつで、昨年2005年6月の導入以降、年末までに4100台の受注があったという。GTIの走りを磨き上げ、再度スポーツモデルの頂点に置いたフォルクスワーゲンの戦略は見事に行き渡ったと言っていいようだ。

ちなみに、6速MTは325万5000円で価格据え置き。にもかかわらずDSGモデル共々ESPにDSR機能が追加され、ボディカラーに2色の新色が加わるといった仕様の充実も図られている。

さらに18インチタイヤ&ホイール(BBS製)の設定が加わったのも嬉しいニュース。10万円のメーカーオプションだが、GTIの足まわりはこれを履きこなすに十分なポテンシャルがあり、標準の17インチより確実にフットワークは向上する。それでいて乗り心地が極端に悪化することもないから、走りとルックスを極めたい向きには必携のアイテムだと思う。

これ以外の2006年ゴルフは、10月20日に一斉に販売を始めている。この中でもっとも大きな変化があったのはEとGLiの2車種だ。いずれも1.6L/2Lのベースモデルという位置づけで、2005年まではプロテクションモールやドアハンドルが黒い樹脂仕上げと外観にも明確な違いがあったが、2006年モデルはこれらが同色化され、もはや一瞥ではわからない。

インテリアも、Eの助手席にシートリフターが備わり、GLiのエアコンがフルオートに。さらに両モデルとも、これまで4本スポークだったステアリングホイールもGT系と同じ3本スポークのスッキリとしたデザインとなるなど、仕様の充実が一気に進んだ。

GLiはオートライトやレインセンサー、自動防眩ルームミラー、カミングホーム/リービングホーム機能が廃止されてはいるものの、エアコンのフルオート化で+1万円の279万3000円。一方のEはドロップした装備はなく、すべてプラス要素で240万4500円の従来価格を維持しているから、バリューはさらに高まったと言っていいだろう。

また、ゴルフのベストセラーグレードであるGTにも変化があった。こちらもGLiと同じくオートライト以下の装備が廃止されているが、代わりにディスチャージヘッドランプ、ヘッドランプウォッシャー、ヘッドランプハイトコントロール(オート)などが新採用され、価格は据え置きの299万2500円をキープしている。

トップモデルのGTXに大きな変更はないが、DSG専用モデルということで、こちらにもヒルホルダー機能が追加され、価格は367万5000円のまま据え置きだ。

これらの2006年仕様のゴルフに共通するポイントは、GTIのところでも少し触れたがESPの機能にDSR(ドライバー・ステアリング・リコメンデーション)が追加されたことだ。

これは電動パワステの機能を利用して、車両の挙動が不安定になったときアシスト力に変化を持たせて正しいステア操作に導くというもの。例えばオーバーステアになった時はカウンターステア方向へのアシスト量を増して補正舵を促すといったシステムである。

また、ボディカラーの選択肢が増したことも2006年モデルのゴルフに共通する事柄で、ベースのEでも5色の標準色に加え、2色のスペシャルオーダーカラーが設定されるようになった。ゴルフVの日本初上陸は2004年4月。以来、今回を含め2度のイヤーモデル導入を経験しており、いよいよ脂が乗って来た時期に差し掛かったと言えそうだ。

こうしたゴルフの中から、今回は最も数が出ているというGTを試乗に連れ出した。最初に告白しておくと、僕はこのGTというグレードがあまり好きではなかった。ゴルフGTはスポーティなルックスをとりわけ好む日本人向けに特別に企画されたモデルで、サスペンションはGLiに対して20mmのローダウンが行われ、タイヤも205/55R16とワンサイズ上を奢っている。これらによって実現したアピアランスは確かに精悍なのだが、乗り心地も相応に硬めになってしまい、はっきり言って快適性は合格ギリギリのライン上という評価だったのだ。もちろんハンドリングには鋭さが加わっているものの、普通の足を持つGLiに対するアドバンテージはさして大きいとは思えず、そのわりにパツパツとした当たりの硬さだけが目立っていた。

さらに言うなら、そうした想いはGTIに乗って決定的になった。こちらはGLiに対して25mmのローダウンサスに17インチタイヤ。にもかかわらず乗り味はしなやかで、スポーツモデルらしい腰の強さは感じさせるものの快適性も落としていない。本格的に造り込んだGTIと、カッコを優先した結果ややバランスを崩したGT。そのような評価が僕の中で出来上がっていた。

しかし、試乗した2006年モデルのGTは目からウロコがハラハラッと2〜3枚は落ちる仕上がりだった。あのパツパツとした硬さが消え、GTI張りにねっとりと路面を舐める足まわりに生まれ変わっている。以前特に気になっていたリアシートの突き上げも格段に低減されており、どっしり系のGLiとは明らかに異なる、締まりのある質の高い硬さに激変していたのだ。

これだから欧州車はわからない。本当にそう思った。おそらくスプリングとダンパーに加え、ブッシュ系の見直しも行われたと思うが、これによりGTは「生まれ変わった」と表現したくなるほど魅力的なグレードになっている。

乗り心地だけでなくハンドリングも進化した。以前はロール剛性が高いがゆえにステア操作に対してノーズが敏感に反応するキビキビ感のみが目立つ印象だったが、2006年モデルのGTのハンドリングはもっと奥深い味わいがある。ヨーの立ち上がりが唐突過ぎず滑らかで、しなやかに向きが変わるのだ。ロール自体は以前よりも少し増えている印象だが、もちろん腰高さや爪先立った感覚はなく、フラット感は依然として高い。20mmのローダウンが、走りに明確なアドバンテージとして感じられる進化ぶりである。切れ味はさほど鋭くはないものの安定志向の実直な乗り味で完成型の域に達していた。

対してGTは、GTIと同一線上に立ったスポーツ性がキチンと表現されている。エンジンはGLiと同じ150psの2.0FSIだが、こちらのパワー感も十分。シリーズの中では車重が比較的軽い上に、6速ATが効率よくパワーを紡ぎだすためかなりパワフルな印象だ。これに進化した足まわりが組み合わされるGTは、存分にアクセルを踏んでパフォーマンスを引き出し切れる魅力的なスポーツモデルに仕上がっており、一気にゴルフのいち押しグレードに昇格した。

画像: ゴルフは2004年6月に5世代目にスイッチ。ボディはひと回り大きくなり、エンジンは直噴のFSI化が図られ、全車に6速ATを搭載する。当初はNAのみで2LのGT、GLi、1.6LのEでスタート。2005年2月に2Lターボ+DSGの豪華仕様GTXを追加。5月には2Lターボに6速MTとDSGを揃えたGTIを発売。そして、9月にはGTIの一部仕様変更、10月には全グレードの仕様変更を行った。

ゴルフは2004年6月に5世代目にスイッチ。ボディはひと回り大きくなり、エンジンは直噴のFSI化が図られ、全車に6速ATを搭載する。当初はNAのみで2LのGT、GLi、1.6LのEでスタート。2005年2月に2Lターボ+DSGの豪華仕様GTXを追加。5月には2Lターボに6速MTとDSGを揃えたGTIを発売。そして、9月にはGTIの一部仕様変更、10月には全グレードの仕様変更を行った。

先行して最新仕様で日本にやってきたゴルフプラス

続いて紹介するゴルフプラスは、初導入が昨年2005年10月のため最初から2006年モデルで、当然ながら変更はまったくない。ESPの新機能であるDSRはもちろん装備済みだし、ボディカラーも標準5色、スペシャルオーダー2色と充実している。

今回は1.6Lエンジン搭載のゴルフプラスEを試乗に連れ出した。ゴルフプラスの乗り味は標準ゴルフに非常に近い。つまりハンドリングはどっしり系の安定指向。ただ、車重が40kgほど重く、85mm車高が高いハイトパッケージ化のため重心位置も上がっている関係で、足まわりはやや硬められた印象だ。

これが感じられるのが乗り心地。路面の細かい凹凸に呼応してややユサユサとした揺れが伴う。ダンピングを高めている印象だ。ゴルフと較べるとフラットライド性は少し薄れるが、だからといって不快に感じることはない。1.6Lで40kg増を受け持つことからパワー感を心配する向きもあるだろうが、これも単体で乗る限り十分。箱根の登坂ではややアクセル開度が大きくなる傾向は見受けられたものの、スルスルと良く伸びて過不足のない走りを味わわせてくれた。

ちなみにゴルフプラスEの価格は245万7000円。ゴルフEよりも約5万円高くなるわけだが、引き換えにちょっと大きなクルマに乗った感覚になる高いアイポイントと、格段に広い感覚のキャビン(特に後席まわり)、スライド式リアシートによる高いユーティリティなどが手に入るのだから、価値は十分にある。特に日本のコンパクトカーに慣れ親しんだユーザーに対し訴求力はあるはずで、フォルクスワーゲンに新たな顧客を集める起爆剤となる可能性は高い。

画像: ゴルフプラスは2005年10月に日本に上陸。ゴルフより全高を85mmアップさせることによって、新たなパッケージングを実現する。エクステリア、インテリアともに新設計とし、ゴルフの兄弟でありながらも雰囲気を異にする。フォルクスワーゲン初のLEDテールランプの採用や多彩なリアシートアレンジを特徴とする。

ゴルフプラスは2005年10月に日本に上陸。ゴルフより全高を85mmアップさせることによって、新たなパッケージングを実現する。エクステリア、インテリアともに新設計とし、ゴルフの兄弟でありながらも雰囲気を異にする。フォルクスワーゲン初のLEDテールランプの採用や多彩なリアシートアレンジを特徴とする。

コンフォートになったトゥーランの2006年モデル

最後はゴルフトゥーランだ。この2006年モデルも2005年10月上旬から導入が始まっている。ただし仕様変更はシリーズの中でも少ない方で、Eの最終減速比がわずかながら低められ少々ダッシュ力を増した設定となったほか、GLiのアルミホイールが6本から5本スポークの新意匠になったのが主だったところ。もちろん他の2006年モデル同様、ESPにDSR機能が備わっている。ちなみにEの271万9500円、GLiの313万9500円に変わりはなく、価格据え置きとなっている。

今回はGLiを試乗に連れ出したが、性能的な部分の変更点はないはずなのに、乗り味は明らかに変わっていた。こちらも最初に感じられたのは乗り心地の進化だ。トゥーランはプラットホームがゴルフと共用ながら、3列7人乗りのミニバンパッケージを実現するため全幅/ホイールベースともゴルフとは違う。その意味ではサイズを変えず全高のみを高めたゴルフプラスよりも自由度は高かったはずだが、やはり重心高が上がることに対してサスのダンピングを高める方策が取られており、これが特有の硬めの乗り心地となっていた。

しかし2006年モデルはしなやかさが増していた。路面のギャップを通過したときのコツンとした衝撃が明らかにマイルドになり、その後に続くブルンとした軽度の余韻もほとんど感じられないレベルになった。

ゴルフGTほどではないものの、明らかに熟成の手が入っている。それにしてもトゥーランにしろゴルフにしろ、市場から上がってきた声に真摯に応えるフォルクスワーゲンの開発姿勢には深く胸を打たれるものがある。

2006年モデルを総括するなら、特に乗り心地を中心とする快適性に関する部分に格段の進歩が見られたという印象だが、考えてみれば、ゴルフが第5世代に進化したときに僕が最初に驚かされたのも、超高速環境で鍛えられたゴルフがスタビリティを犠牲にすることなく、コンフォート方向に特段の進化を遂げたという事実だった。どうやらそれは、今のフォルクスワーゲンが目指す大きなテーマのようだ。そして2006年モデルを見る限り、それはかなりのレベルで達成されていると思って良いだろう。こうしたキメ細かい改良の結果、商品性はさらに確実に高まっている。

ところで、今回ゴルフファミリーに改めて乗ってみて、ゴルフが依然として全てのモデルの基本になっていることを再確認した。ユーティリティを拡張して見せたプラスやトゥーランはそれぞれに魅力的だし、特定の使い方をする際には優れた使い勝手が得られるが、だからといってゴルフが陳腐に見えてしまうようなことはまったくない。むしろ必要にして十分な実用性と、ハイトパッケージには難しいスポーティな走りを両立させている点で、本家ゴルフの魅力がより際立って見える。

ファミリーの中核にこうした確固たる「核」が存在するからこそ、ゴルフはシリーズ化され裾野が拡がっても全ての車種に一本芯が通っている。そして、輸入ブランド6年連続ナンバーワンの座を維持しているという事実も、詰まるところそこに負うところ大というわけなのだ。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2006年3月号より)

画像: ゴルフトゥーランは5代目ゴルフに先駆けて2004年2月にデビュー。直噴FSIエンジン+6速ATを採用し、折り畳み可能な3列目シート、取り外しも可能な2列目シートによって多彩なアレンジを可能にする。1.6LのEと2LのGLiというシンプルな構成は2005年モデルと変わらない。

ゴルフトゥーランは5代目ゴルフに先駆けて2004年2月にデビュー。直噴FSIエンジン+6速ATを採用し、折り畳み可能な3列目シート、取り外しも可能な2列目シートによって多彩なアレンジを可能にする。1.6LのEと2LのGLiというシンプルな構成は2005年モデルと変わらない。

ヒットの法則

フォルクスワーゲン ゴルフGT (2006年) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4205×1760×1500mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1380kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1984cc
●最高出力:150ps/6000rpm
●最大トルク:200Nm/3500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●車両価格:299万2500円(2006年当時)

フォルクスワーゲン ゴルフプラスE (2006年) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4205×1760×1605mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1420kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1597cc
●最高出力:116ps/6000rpm
●最大トルク:155Nm/4000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●車両価格:245万7000円(2006年当時)

フォルクスワーゲン ゴルフトゥーランGLi (2006年) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4390×1795×1660mm
●ホイールベース:2675mm
●車両重量:1600kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1984cc
●最高出力:150ps/6000rpm
●最大トルク:200Nm/3500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●車両価格:313万9500円(2006年当時)

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.