先日のアカデミー賞で外国語映画として史上初の作品賞を受賞した「パラサイト 半地下の家族」(現在公開中)のポン・ジュノ監督と主演のソン・ガンホが2月23日に日本記者クラブで凱旋会見を行なった。本作品だけでなく以前二人がコンビを組んだ「グエムル 漢江の怪物」と新型ウイルスに恐怖する世界の現状についても語った。

生物学的な恐怖より、人間の不安が生み出す恐怖の方が怖い

さらに監督とソンへの質問が続く。
──日本映画は内に向いていて、韓国映画は外を向いているという評論も聞かれるのですが、監督は日本映画をどう思いますか?
『個人的に親しくしている日本の監督がたくさんいます。黒澤清、是枝裕和、阪本順治といった人たち。それに故・今村昌平さんはお会いしたことがありませんが、彼らは大好きな監督です。個人的には日本のフィルムメーカーの多様なスペクトラムに興奮を覚えます。また韓国では政府が映画を支援しているといいますが、主にインディペンデント映画、ドキュメンタリーといったジャンルにです。我々のような商業映画は民間企業と組んでやっていますが、そうした状況が上手く回っているのだと思います。日本ではアニメが世界的に良く知られていますが、そういう分野に焦点を当てるのもいいのでは』

画像1: 生物学的な恐怖より、人間の不安が生み出す恐怖の方が怖い

──カンヌとアカデミー、どちらの受賞が嬉しかった?というのではなく、それぞれの受賞時にどんな思いの差がありましたか?
ポン『(笑)。どちらも衝撃的でしたが比べるのは難しい。まずカンヌは9人の審査員が選ぶのですが、私が個人的にも好きなアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督や、ヨルゴス・ランティモス監督らが満場一致でパルムドールに選んでくれたということが嬉しかったですね。私が大ファンの人たちに私の映画を気に入ってもらえたという嬉しさ。またアカデミー賞は8000人もの会員が選んでくれたので、それぞれの顔が思い浮かぶことはなかったのですが、5か月くらいオスカー・キャンペーンというものを行なったことが良い経験でした。本来ならこんな事より脚本を書かなくてはと思う時期もありましたが、いま振り返ると、この映画のどこが優れているのか、どうやって作られていくのかということを一つずつ検証していき、映画製作の複合的なプロセスを考える貴重な経験でした』
ソン『カンヌの時、初めての受賞だったので、大喜びしすぎて監督の胸を何度も強く叩いてしまいました。それでひびが入ったそうで、あまり笑えないハプニングでした(笑)。そこでアカデミーの時は少し抑えて、首を掴んだり、他の場所を叩くようにして喜びました(笑)』

画像2: 生物学的な恐怖より、人間の不安が生み出す恐怖の方が怖い

──お二人は以前「グエムル 漢江の怪物」でも一緒に仕事されていますが、あの映画のような状況が今、新型ウイルスで世界的に起きています。これをどう思われますか?
ポン『あの映画ではウイルスの噂が出るものの、実際は違っていたという内容でした。私は今の状況について、浦沢直樹さんの漫画「20世紀少年」も思い出してしまいます。こうした現実と創造物が相互に侵入し合いながら存在するのは自然なことと思います。個人的には生物学的な恐怖より、人間の不安が生み出す恐怖の方が怖いです。「グエムル」はウイルスの噂からパニックが起きることを描きましたが、今の現実はそのウイルスはあるという大きな違いがあります。でも恐れすぎて過度に反応してしまうと、人種偏見なども加わってもっと恐ろしいことが起きてしまう。でも私はもっと楽観的に捉えています』

画像3: 生物学的な恐怖より、人間の不安が生み出す恐怖の方が怖い

──映画を作る上でお二人が最も心がけていることは何ですか?
ソン『全米俳優組合賞でアンサンブル演技賞を受賞した時、代表で挨拶したのですが、その時私は、この映画は「寄生」という題名ですが、実際は「共生」を描いたものですとスピーチしました。我々のやりたかったことが余所の国の方にもきちんと伝えることができたのだと思いました。映画を作ることはある種の快感が伴い、価値を見出すことができます。またそれを観客と一緒に味わうことができたという幸福を感じられます。映画を作る時、何か重大なテーマがないとだめだとかは思いません。ただストーリーをどうやって観客に興味深く伝えるのかをいつも考えています。それを探求しているのです』
ポン『いつも恥ずかしくて言わないんですが、どうもここで話さなくてはいけないような状況ですね(笑)。自分で言うのもおこがましいんですが、私はいつも「クラシック(古典)」を作りたいという目標があります。自分が作ったものが歳月を乗り越えて残っていくことです。例えばキム・ギヨン監督の「下女」や黒澤明監督の「七人の侍」、アルフレッド・ヒッチコック監督の「めまい」のような作品を作りたいです。そのためにも私は新作を準備する時、脚本そのものと不純なものを除いて透明な状態で向き合うように努めています。ストーリーと自分が対決するような感じです』

──いま韓国では実際に半地下に暮らしている人たちのいる地域を取材する興味本位のメディアが増加しているようですが、この事態についてご意見を。
ポン『いろんな国にいろんな住居事情があると思いますが、確かに半地下というのは他の国では珍しく見える住居形態かもしれないですね。そこで日本のメディアの方も興味を持たれたのでは? この映画では半地下だけでなくスーパーマーケットや雨のシーンで出てくる階段なども人気があるようで、ロケ地めぐりをするファンが増えているようです。できればそこに実際住んでいる方もいるので、ご不便を掛けないように心がけていただければ。クリエーターとしては嬉しいですが(笑)』

撮影:大西基

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