2003年に登場した2代目アウディA8に、2006年、ようやくS8が追加されている。穏やかでシンプルながら上質な雰囲気のラグジュアリーセダンに搭載されていたのは、なんとランボルギーニ・ガヤルドと同じV10ユニット。控えめな外観とはうらはらに、とんでもないスーパーリムジンだった。Motor Magazine誌では、真冬のドイツで行われた国際試乗会から、そのスーパーパフォーマンスをリポートしている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年2月号より)

A8のプレステージ性をさらに際立たせるS8の存在

1994年、当時アウディの代表取締役社長であったピエヒ氏の指揮の下、アウディは総アルミボディと4WDシステムなどのハイテク装備などでラグジュアリーセダンのセグメントに打って出た。

そのアウディA8はそれまでこのクラスにはなかった価値観で、一躍、ドイツをはじめとしたヨーロッパでメルセデスSクラス、そしてBMW7シリーズに次ぐポジションを獲得した。そしてその成功は、そのままシンボリックにアウディのプレステージ性の確立に繋がっていったのである。

さらにこのA8を際立たせたのがS8の存在であった。このスーパーリムジンは、このクラスでもオーナー自らがステアリングを握る機会の多いドイツにおいて、若々しくスマートに見られたい彼らに好まれたのである。これは先代のA8の中に占めるS8の割合が12%もあったことで証明されている。

さて、このS8の新型がベースモデルのフルチェンジ後2年にしてようやく登場した。全長5mを越えるアルミ製ボディに搭載されるエンジンは、同じグループ内のスポーツカー、ランボルギーニ・ガヤルドと同じV10ユニット。しかもシリンダーヘッドを新たに直噴式へと変更し、ストロークは92.8mmのままボアを84.5mmへ2mm拡大して総排気量を5204ccとしている。

その結果、最高出力は450ps/7000rpm、最大トルクは540Nm/3500rpmと6L W12エンジンとほぼ同等の数字を叩き出すことになった。

このコンセプトを聞いて、1886年のトリノ・ショーに登場したランチア・テーマ8.32を思い出した。このモデルはランチア・テーマという普通の4ドアサルーンにフェラーリ328のV8エンジンを押し込んだ非常にユニークな存在であった。

しかしスーパースポーツカーとセダンのコラボレーションである新型S8の外観は、ドイツ流に控えめだ。ベースモデルのA8との違いは、わずかに意匠の異なるグリルと小さなS8バッジ、左右2本のエグゾーストパイプくらいしかない。

画像: A8のプレステージ性をさらに際立たせるS8の存在

310km/hまではすべて何の問題もない

大きさのわりに、相変わらず非常に軽いアルミ製ドアを閉めて広大なキャビンに腰を落とす。ここにもA8との明確な差はない。それでもアルミとレザー、そしてピアノブラックのインテリアトリム、さらにツートーンのスポーツシートが確かにスタンダードには見られなかった精悍さとスポーツを表現している。

通常の方式でキーを捻るといとも簡単にV10が忙しく動きだす。外気温は氷点下だったにもかかわらず、スロットルペダルの動きに対して敏感にタコメーターの針が反応する。

水温計の針が動くのを見るや直ぐにスタート。6速ATが軽やかに、そしてスムーズに速度を増してゆく。その一方で、勇ましいインテークサウンドが高まる。市内からアウトバーンへと入り、スピードを上げる。3速、4速、やがてリミッターが効くはずの250km/hに達するが、スピードメーターの針は上昇を続け、280km/hほどで柔らかな壁に当たるような感じでリミッターが効いた。

アウディのエンジニアによれば「310km/hまではエンジン、駆動系に問題はない。ただしこうした速度を長く保つにはタイヤの問題があるのでむやみにリミッターを外すことは勧めない」そうだ。このセッションでは、エアサスペンションがショックをうまく吸収して快適性をもたらすことも確認できた。

この後、飛行場の一部を使ったテストコースでスラロームテストをすることができた。こんなコースではプッシングアンダーが出るだろうと思ったが、意外や意外、非常にコントローラブルで驚いた。ステアリングはシャープで軽快、しかも正確なので、パイロンから数cmのところを狙ったとおりに抜けることができ、しかも素早い切り返しに音を上げることもなかった。試乗車にはオプションのセラミックブレーキが装備されていたが、その性能も驚くべきものであった。

それはそうと、テスト当日はひどい天気となった。早朝は快晴だったが気温はマイナス2度で路面には凍結が見られ、その後、雨が降って来たと思ったら、すぐに雪へと目まぐるしく変わった。ドイツでは天気予報でさえ平気で「晴れのち曇、のち雨のち雪、続いて晴れ!」とアナウンスしたりしている。

こんな時に4輪駆動のS8は頼もしい。冬などは特に霧や大雪の影響でフライトスケジュールも信頼できないから、ビジネスマンにとっては貴重な存在だ。

ところで、日本ではこのS8はどう受け入れられるのだろうか。日本でもこの価格帯のモデルは好調な販売を記録している。アルミボディ、V10エンジン、クワトロというアイコンは、きっとユニークなリムジンを求めるヒルズ族の注目の的になることだろう。(文:木村好宏/Motor Magazine 2006年2月号より)

画像: 310km/hまではすべて何の問題もない

ヒットの法則

アウディS8 主要諸元

●全長×全幅×全高:5062×1897×1424mm
●ホイールベース:2944mm
●車両重量:1940kg
●エンジン:V10DOHC
●排気量:5204cc
●最高出力:450ps/7000rpm
●最大トルク:540Nm/3500pm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●最高速:250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速:5.1秒
※欧州仕様

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