2005年秋、メルセデス・ベンツMクラスが2代目へと進化して日本上陸を果たしている。市場にひしめくライバルたちを再び引き離すべく、サイズアップはもとより、様々な新機軸がふんだんに盛り込まれた新世代Mクラスは、再びセグメントリーダーたり得たのか。Motor Magazine誌でのテストドライブの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年1月号より)

最大の変更点はフルモノコックの採用

先代Cクラス以降に採られたメルセデスの拡大戦略に組み込まれるカタチで、日本では1998年に導入された初代Mクラス。「オンロードイメージの強いプレミアムブランドが手掛ける泥グルマ」というコンセプト自体は他社に先駆けたものだったが、不慣れなアメリカ開発・生産というネガもあり、見た目品質に限っても、あっという間に後発のまくりを受けたのも周知の話だ。

原油高騰のあおりもあって風当たりはやや変わって来ているが、昨今までのSUVを取り巻く状況を考えると、Mクラスをセグメントリーダー級へと引き上げることはメルセデスにとっての急務だった。新型ではデザインも含めた開発の舵取りがドイツに置かれ、間もなく日本にも導入されるRクラスとの部品共用化も盾としながら性能・品質の向上が試みられている。

その甲斐もあってか、新型Mクラスは静的な品質が大きく向上したことがわかる。内外装の作り込みはメルセデスの一般的なレベルに引き上げられており、かつての商用車的に雑然とした仕上げは見当たらない。

最大の市場であるアメリカでの現地調達・現地生産は日欧のメーカーにとって政治的にも大切なことだが、一方でその生産品質にはどこも苦慮してきた。たとえばトヨタはアバロンをプロナードにシフトする際、ケンタッキー工場にクラウンを教材として持ち込み品質向上を促したという。おそらくはメルセデスもそうしただろうと思われる。

Mクラスのメカニカル面において最大の変更点は、シャシをラダーフレームからフルモノコックへとシフトしたことだろう。同時期にデビューしたレクサスRXを筆頭に、日欧の他社はプレミアムSUVのボディ構造として軒並み後者を採用した。

メルセデスとしては先駆けゆえの読み違いが、ライバルに対して静粛性や快適性の面で後れをとる原因となったわけで、Rクラスの投入と合わせてようやく性能的にライバルとガチンコ勝負ができる状況になったわけだ。

Rクラスとの共有も考慮されるがゆえ、新しいMクラスの乗用車然としたコンポーネンツは、エンジンやサスペンションにも及ぶ。調達の関係もあって5L V8は従来の3バルブSOHCが採用されたが、日本での売れ筋となるだろう3.5L V6には低公害車税制優遇のオマケもつく最新の4バルブDOHCが搭載された。組み合わされるトランスミッションは全車最新の7Gトロニックだ。サスペンションも前にダブルウイッシュボーン、後には4リンク式サスが与えられる。

画像: 2005年秋、2代目へと進化して日本上陸を果たしたメルセデス・ベンツMクラス。ボディサイズは先代より全長で145mm、全幅で75mm、ホイールベースで95mm大きくなった。

2005年秋、2代目へと進化して日本上陸を果たしたメルセデス・ベンツMクラス。ボディサイズは先代より全長で145mm、全幅で75mm、ホイールベースで95mm大きくなった。

抜かりない悪路走破性と進化したオンロード性能

こう記すと、オンロードでのサルーン的な振る舞いばかりに注力したと思われるかもしれないが、Mクラスの伝統(?)でもある悪路性能はおろそかにされていない。ABSやスキッドコントロールの制御を低μ路用に変更するオフロードスイッチや、任意設定でダウンヒルの速度をコントロールするDSR、多くのオフロードビギナーには有り難いヒルスタートアシストなどの電子デバイスが標準で装備されるほか、ML500にはオプションでオフロードパッケージを選ぶことができる。

±125mmの範囲で車高調整できるエアマティックサスやセンター/リアを任意で選択できる電子制御デフロック、そしてローギアードレンジを加えたギアホールド機能などが盛り込まれたこれは、本格的なクロカン走行を想定するユーザー向けだ。

これらのメカニカルデバイスにフル電子制御が加わるML500のオフロードパッケージは、センターコンソールのボタンを押して然るべき設定にするだけで、相当の難所も臆することなく走り切ることができる。

フルモノコックということで心配されるその際のボディ剛性も、室内側から感じるところでの捻れや異音などは皆無だ。パッケージに起因する3アングルの確保も調整幅の広い地上高にカバーされ、激しいセクションでもボディをぶつけることは一度もなかった。もちろんここまでのパフォーマンスを必要としない人が大勢であって、それをオプションで選べるというところがMクラスのキャラクターや見識を代弁している。

一方のオンロードでのMクラスは、明らかに先代とは違った振る舞いをみせてくれた。もっとも特徴的なのは高速領域でのボディコントロールで、構造上それを抑えることが難儀だった旧型に比べると、轍やギャップによる車体のシェイクが劇的に低減した。

簡単に言えば、大きく乗用車に近づいたということである。オフロードでのタフネスと引き換えにオンロードで泣いていたかつての面影はなく、安心して高速クルーズを愉しむことができる。

そしてライバル比の話をすれば、高重心をものともしない高速域での上屋の据わった直進安定感について、メルセデスのキャラクターが感じられる。が、現実的には一番の売れ筋オプションになると予想されるスポーツパッケージは、19インチタイヤの影響と思われるゲインの強さや路面状況に対する反応の過敏さが一般路では目立っていた。

本来タイヤとの物理的距離もあって下まわり遮音に有利なSUVだが、このパッケージではタイヤまわりのノイズも目立って侵入してくる。乗り心地面での影響は少ないものの、総じての印象は18インチを履くML500の標準車にかなうものではない。動力性能的にも文句のないML350に標準装着される17インチがベストだと思うが、今回試せなかったのは残念だ。

日欧のプレミアムSUVは多くが第一世代だが、ここ数年はスポーツサルーン級な運動性能を誇示する方向でニューカマーが投入され市場が育ってきた。第二世代となったMクラスの方向性は、そことは気持ち距離を置き、日常の延長にある快適な乗用車という領分を守っている。同じ魔法の絨毯でも考え方に相違はあるだろうが、少なくとも山道をブッ飛ばすためにこのテを駆りたくない僕は、個人的にMクラスの立ち位置には好感を覚えた。(文:渡辺敏史/Motor Magazine 2006年1月号より)

画像: メルセデスの主力ユニット、272型 3.5L V6。トルクフルでスムーズなことが売りだ。

メルセデスの主力ユニット、272型 3.5L V6。トルクフルでスムーズなことが売りだ。

ヒットの法則

メルセデス・ベンツML350スポーツパッケージ(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4790×1910×1815mm
●ホイールベース:2915mm
●車両重量:2150kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3497cc
●最高出力:272ps/6000rpm
●最大トルク:350Nm/2400-5000rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:724万5000円

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