2005年の話題をさらった新型BMW3シリーズ、E90の登場。4月に発売が開始されてから、バリエーションを次々と増やし、その魅力をさらに高めていった。Motor Magazine誌では、新たに追加された325iツーリング、323iをまじえて、3シリーズの本質、各モデルの走り味の違いに迫っている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年1月号より)

BMWグループの中核モデルである3シリーズ

BMWグループのセールスが好調だ。MINIやロールスロイスまでも含めたBMWグループ全体での2005年の世界販売台数は、現時点でデータの手に入る7月末までの段階で75.7万台あまり。これは「前年同期の7カ月間と比較しておよそ10%増」とのことだ。

「世界におけるプレミアムセグメントの成長率はおよそ2%程度。これに対し、10%増をマークしたBMWグループは明らかにライバルたちよりも抜きん出ている」とBMWは述べる。

なかでも、2005年3月の欧州デビュー後、たちまち同カテゴリーでのマーケットリーダーに立った現行3シリーズと、およそ25%というセグメントシェアを確保して、やはりマーケットリーダーとしての地位を保ち続けるという現行5シリーズが、そうした好記録を生み出す大きな原動力となっている。

ちなみに、MINIブランドの販売台数も前年同期の7カ月比でプラス12.7%という数字を達成。さらに加えれば、2輪車も「同15%アップ」というおまけ(?)付きだ。

BMW車がかくも好評をもって市場に迎えられている理由のひとつに、このメーカーが狙いとするクルマづくりのスタンスが、実際の製品としてとてもわかりやすく反映されている、ということがあるとぼくは思う。

『駆けぬける歓び』、このBMWのキャッチフレーズを、実際のBMW車をドライブした多くの人は「あぁ、言わんとしていることはコレなんだナ」と実感するはずだ。

アクセルペダルの踏み込みとリンクして綺麗に伸びていくパワー感。狙ったラインを楽にトレースしていける自在度の高いハンドリング。いや、実際に走り出す以前に、スターターモーターが回り出し、エンジンに火が入った瞬間の心地良い完爆のサウンドに、すでに他車とは何かが異なる「駆けぬける歓び」を意識するという人は少なくないはずである。

クーペやオープン、さらにはハッチバックモデルなども加わり、今では随分と大家族となったBMWファミリーの中にあっても、やはりその中核を成すのはセダンモデル。言うなれば、数あるBMW車の中でも「最もベーシックな存在」と受け取れる3シリーズであっても、「駆けぬける歓び」のテイストを色濃く感じることができるのはもちろんだ。

というわけで、ここではこれからも販売台数の点ではBMWラインナップの核を成すはずの3シリーズに、スポットライトを当てたい。

画像: 「BMWの中にあってベーシックな存在だが、3シリーズは駆けぬける歓びのテイストを色濃く感じることができる」と語る河村康彦氏。

「BMWの中にあってベーシックな存在だが、3シリーズは駆けぬける歓びのテイストを色濃く感じることができる」と語る河村康彦氏。

320iと325iの格差を埋める323iの実力

そのスムーズな回転フィールを指して「シルキー6」などという表現が使われるほどに評価の高いBMW製の6気筒エンジン。一方で、320iが搭載する4気筒ユニットは、そうした6発ユニットに押されやや影が薄い印象は否めない。

ブランド全体でスポーティという雰囲気をアピールするのがBMWだけに、「4気筒モデルでは、走りがBMWらしくないのではないか?」と心配する向きもあるかも知れない。

率直なところ、320iの加速の能力のほどについて、「強力」という表現は使いかねるレベル。そうした点では、エンジンが売り物のBMWの作品としては、確かに「BMW度が低め」と言えなくもない。けれども、それは相対的にシャシ性能の高さを際立てる結果にもなっている。その抜群に高いハンドリングの自由度のほどから、「脚の良さが特に引き立つモデル」という印象の強いのが320iだ。

およそ400万円レベルという価格のそんな320iと、500万円を大きく超える325iとの間に開いた「大き過ぎる価格のギャップ」を埋めるカタチでこのほど日本新着となったのが、480万円というプライスを掲げる323i。

「325iのディチューンバージョン」という位置づけを与えられた2.5Lの6気筒エンジンを搭載するこのセダンは、日本と一部の欧州地区にのみ用意されるモデル。各ガソリンモデルの間にディーゼルモデルが挟まる市場では、よりきめ細かな価格ラインナップの構築が可能となるが、それができない日本ゆえの価格戦略的なモデルがこの323iと理解をしても良いだろう。

日本に到着したてでオドメーターもまだ500kmに達しないそんな323iで走り出すと、それは「これこそが3シリーズの真打ちではないのか!?」と思える好感触を味わわせてくれる1台であった。

最高出力177ps、最大トルク230Nmと、325iのそれよりも41psと20Nmマイナスのデータを示す心臓は、確かに特に5500rpmを大きく超える領域まで引っ張ると、明らかにディチューンが行われていると体感できる。

が、言い方を変えれば、それはアクセルペダルをさほど深く踏み込むことのない日常領域では「さほど変わらないテイスト」でもある。確かにピーク時の出力値は違っても、排気量や圧縮比といった基本デザインが同じだから、そうしたフィーリングとなるのは当然とも言えそうだ。

こうなると、装備レベルが同様の323iと325iとでは、50万円も価格の低い前者に人気が集中するであろうことは当然。そんな動きを踏まえてか、インポーターのBMWジャパンでは323iの上陸を機に、すでに素の325iを受注生産モデルへと格下げ(?)とする措置を実施済み。日本での今後のセダンモデルの人気は、この323iへと移行していくことだろう。

一方、3シリーズセダンのトップモデルとしての座を占めるのが330i。そんなグレード名称通りに3Lという排気量を備える直列6気筒ユニットが発生するのは258psと300Nmという最高出力と最大トルクだ。

そんな出力を受け止めるタイヤは225/45の17インチサイズ。こうしたスペックからも、まさに生粋のスポーツセダンという雰囲気がプンプンと漂うのがこのモデルだ。

果たして、330iの走りの実力たるや、それはとてもファミリーセダンなどと軽々しくは呼べないもの。0→100km/h加速が6.6秒、最高速が250km/hといったデータを目にするまでもなく、全力加速を一発試せばその圧倒的な速さのほどにこのモデルが「ただ者ではない!」というのは誰の目にも明らかだろう。

先に「高回転域での走りの力感は323iを凌ぐ」と評した325iの走りも、この330iと比べればマイルドそのもの。330iの6気筒ユニットはそのサウンドの迫力からして、325i用ユニットとは比べ物にならないほどの「スポーツ心臓」と表現をして良いもの。この点でも325iの位置づけはもはや中途半端にも思える。

ところで、こうして今回テストした3シリーズセダンの多くには、オプションアイテムであるスポーツサスペンションや、よりファットなシューズが装着されていた。率直なところ、それらを選択した場合の快適性への影響は、「それなりに大きい」とコメントしたい。サイドウォール補強型のランフラットタイヤを装着する3シリーズの場合、特にファットで薄いオプションタイヤを装着した場合の乗り心地の低下度はかなり大きな印象だ。

もっとも、微低速域を中心にいかにもタイヤのたわみが足らないという突き上げ感が顕著だったランフラットタイヤ付きBMW車も、このところは随分と改善。例えば、今回テストの323iは標準サスに標準サイズの225/50R16インチのブリヂストン製RE050タイヤを組み合わせていたが、微低速域でやや硬さは残るものの振動の減衰が素早く、そのドライな乗り味は不快感のごく少ないものだった。磨耗進行時の乗り心地悪化に懸念は残るものの、新品時の現状では十分に及第点を与えられる仕上がりだ。

画像: 2005年10月12日に日本で予約が開始され、11月に納車が始まった323i。直列6気筒エンジン搭載モデルとしてはZ4 2.2iに次いでBMWラインナップの中で廉価となる。

2005年10月12日に日本で予約が開始され、11月に納車が始まった323i。直列6気筒エンジン搭載モデルとしてはZ4 2.2iに次いでBMWラインナップの中で廉価となる。

画像: 2005年秋に追加設定された325iツーリング。試乗車はM-Sportパッケージ仕様車。車高はノーマルより15mm低くなり1435mmとなる。

2005年秋に追加設定された325iツーリング。試乗車はM-Sportパッケージ仕様車。車高はノーマルより15mm低くなり1435mmとなる。

走りのワゴンの雰囲気満点、325iツーリング

ところで、323iと同タイミングで新着となったのが新型ツーリング。とりあえず日本には2.5L 6気筒エンジンの「325iツーリング」のみの設定となるが、早速こちらのモデルもテストドライブに引っ張り出した。

誰もが想像をした通りのルックスを持つ新しいツーリングは、後席使用時の460Lから最大で1385Lまでという積載能力の持ち主。今回のテスト車はエアロパーツ類やスポーツサスペンションなどから成るパッケージオプションである「Mスポーツパッケージ」が装着されていた。

随分とエラの張った顔つきやグリップの太いステアリングホイールは個人的にはあまり好みではないが、フロントに225/45、リアに255/40という17インチのタイヤを履いたプロポーションはさすがに「走りのワゴン」というイメージが満点。こらもまた、いかにもBMWらしい。

カーゴネットのリトラクターと一体型デザインのために重量は大きめだが、脱着作業の楽なトノカバーやシートバック前倒しのみでOKというワンタッチ式のリアシートアレンジなど、日常シーンでの扱いやすさへの配慮が行き届いているのは、美点のひとつ。

ただし、後席居住性/乗降性はセダンに遜色ないものの、それでも高くて大きなセンタートンネルや、高いサイドシルもあって「一級品」とは言い難いレベル。動力性能上でセダンとの70kg差を強く意識させられるシーンはなかったが、乗り心地的には路面凹凸を拾ってのボコボコ感がやや強まった印象。もっとも、この点は装着オプションの関係もあり、完全にボディの差が原因とは言えないが……。

さて、冒頭述べたように、現在のBMWグループ好調の原動力にもなっている現行3シリーズ。が、世界で好評をもって迎えられているこのモデルにも、気になる部分は存在する。まず筆頭に挙げられるべきは、やはり全幅が1.8mを超えたボディのサイズだ。

新しい3シリーズがそのモデルライフ末期にまでわたり、ライバルに見劣りしない室内空間を確保したかったという思いがわからないではない。しかし、そもそもBMWは50:50の前後重量配分やFRレイアウト、直6エンジンの採用など、室内空間の確保には不利な前提条件の下に「駆けぬける歓び」を成立させているブランド。それでいながら「ライバルに負けない室内空間」にまで欲を出せば、ライバル以上に大きなボディの採用は避けられないという理屈になってしまう。

また、ようやくこなれてきたとは言えランフラットタイヤのフットワークがいまだ100%満足できるしなやかさを生み出していないのも課題のひとつ。さらに、まだ違和感の残るアクティブステアリングや重過ぎるパワーステアリングのチューニングなども、日本メーカーの作品であれば「NG」の烙印が押されるであろう。

もちろん、それもBMWの個性、と好意的に解釈をする人はいるだろう。が、時にそうしたテクノロジーを初期に手に入れたオーナーを実験台にしている(!?)とまで感じさせる唯我独尊ぶりに、将来的な危うさを感じさせられることがあるのもまた事実だ。

個性が好調につながるというのは、一転してそれがウイークポイントにもなりかねないということ。だからこそ、BMWというブランドは面白い! とも言えるのは否定しないのだが……。(文:河村康彦/Motor Magazine 2006年1月号より)

画像: 3シリーズの最上位モデルとなる330i。

3シリーズの最上位モデルとなる330i。

画像: 325iは受注生産という形に変更された。325iM-Sportはカタログモデル。

325iは受注生産という形に変更された。325iM-Sportはカタログモデル。

ヒットの法則

BMW 323i(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4525×1815×1425mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1510kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2496cc
●最高出力:177ps/5800rpm
●最大トルク:230Nm/3500-5000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:480万円

BMW 325i Touring(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4525×1815×1450mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1580kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2496cc
●最高出力:218ps/6500rpm
●最大トルク:250Nm/2750-4250rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:550万円

BMW 330i(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4525×1815×1440mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1550kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2996cc
●最高出力:258ps/6600rpm
●最大トルク:300Nm/2500-4000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:635万円

BMW 325i M-Sport(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4525×1815×1425mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1510kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2496cc
●最高出力:218ps/6500rpm
●最大トルク:250Nm/2750-4250rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:590万円

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.