2005年秋のフランクフルトショーで公開されたアルピナB6カブリオ。Motor Magazine誌では早速、そのプロトタイプモデルの試乗に成功している。アルピナらしい、味わい深い走りの質はどのように実現されていたのだろうか。そのテストドライブの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年1月号より)

エレガントかつ驚異的なパフォーマンス

今、筆者は南ドイツのバイエルンを走っている、紅葉が日本独特の美であると思っている方々にご報告するが、ドイツの紅葉もなかなか捨てたものではない。しかしここには「もみじ狩り」などという風流はなく、健康を求めてひたすら森の中の道を3時間キッチリと歩き回る。

けれども現在、私が向かっている目的地にはおそらく「もみじ狩り」の風情をわかるドイツ人が待ってくれているはずである。ブルクハルト・ボーフェンジーペン氏だ。彼は「自動車界のグルメ」といわれ、移動の道具にしか過ぎない自動車には満足しない人々のために、まさに高級レストランのシェフのように腕を振るってエクスクルーシブなカスタムメイドモデルを、もう40年にもわたって生産し続けている。彼のクルマには冒頭に述べた自然の佇まいを感じさせる風情があるのだ。

2005年のフランクフルトモーターショーに出品されたアルピナのニューモデル「B6カブリオ」には、とりわけその気品あるたたずまいが漂っている。ベースになったのはBMW6シリーズカブリオレ、美しいプロポーションを持つ4シーターオープンモデルである。

アルピナブルーのボディカラーとオフホワイトレザーシートのスペシャルインテリアの組み合わせは、まるでハリウッドの女優のように華やかで周囲に近寄りがたい雰囲気さえ与えている。それでも勇気を出してコクピットに入ると、レポーターの正面には330km/hまでスケールアップしたスピードメーターが挑戦的に目に入ってくる。しかし、このメーターの数字は決して誇張ではない。

このB6カブリオの長いノーズには、アルピナの手によって開発されたラジアル式スーパーチャージャーを持つ4.4L V8エンジンが搭載されている。このユニットは最高出力500ps/5500rpm、そして最大トルク700Nm/4250rpmで、BMW M6に搭載されている5L V10スポーツエンジン(507ps、520Nm)よりもトルク面で大幅な利点を持っている。

組み合わされるトランスミッションはすべて6速ATだ。あくまでエレガントにそのパフォーマンスを楽しむというのが、アルピナの狙いである。その結果、空車重量1930kgと決して軽いとはいえないオープンボディを、スタートから100km/hまで4.9秒で加速する。さらに1000mに達するのに22.8秒、そして最高速度は310km/hに達する。

最近のアルピナを試乗したときに感嘆するのは、20インチという大径のロープロフィールタイヤ(フロント:255/35ZR20、リア:285/30ZR20)にもかかわらず、乗り心地は決して悪くなく、実にスムーズに路面を滑るように進んで行くことだ。

それは市街地やカントリーロード、さらにアウトバーンでは速度を上げるに従って快適性はむしろ増してゆくのである。

アルピナはBMWやメルセデスなどドイツの自動車メーカーが実施している最高速度の自主規制を行なっておらず、オーバー300km/hというマキシマムの性能をドライバーに委ねている。通常はかなり神経を使う超高速走行であるが、このB6カブリオでは特に緊張を強いられることはない。

画像: 南ドイツの晩秋と紅葉を全身で感じながらのドライブ。オープンボディだからこその味わいだ。

南ドイツの晩秋と紅葉を全身で感じながらのドライブ。オープンボディだからこその味わいだ。

スポーツとコンフォートを両立させた操縦性

トップを閉じたクローズドの状態で、前方視界に車影がない直線に入ってスロットルペダルをやや深く踏み込めば300km/hのラインにはすぐに到達する。しかもその時点での高速安定性は非常に優秀で、ステアリングホイールに汗がにじむようなことはない。

このハイパフォーマンスを支えるのはもちろん、アルピナの長い期間にわたる徹底したテストで鍛え上げられたタイヤやサスペンション、そしてブレーキ性能である。

たとえばそれは、今回筆者がテストしているプロトタイプとそれに続く数台は、2006年春の発売に向けて6カ月以上の耐久テストに供されることからもわかる。

さて、テストは初秋の紅葉に囲まれたバイエルンのカントリーロードへ入る。ステアリング特性、操縦性はアルピナらしいスポーツとコンフォートの巧みな両立で、ハイスピードコーナーで見せるダイレクトなステアリングフィールとニュートラルなコーナリング特性は、全長4.8mオーバーのサイズを忘れさせてくれるほど、素晴らしいフットワークを見せている。

5年以上の歳月をかけて開発されたスーパーチャージャー付き4.4L V8エンジンは、B7(7シリーズベース)、B5(5シリーズベース)そしてB6(6シリーズベース)と3モデル目の搭載になるが、いっそうの洗練性が加わり、文字どおり「絹のようなスムーズさ」で回転が上がって行く。

さらにトルクの発生はスポーツエンジンのように急激に押し寄せるものではなく、大波のような力強さを持っている。そのため、オープンモデルに相応しい、流れに任せるようなドライブが楽しめる。

アルピナB6カブリオで、すっかり紅葉したバイエルンの森をドライブしていると風情を楽しめるから不思議だ。それはこのアルピナB6カブリオのコンセプトが、単にA地点からB地点までの移動手段ではなく、美しいデザインとドライブの質を楽しむことであり、こうした要素がドライバーに自然を愛でる余裕を持たせることに起因するのだろうと改めて認識させられた。(文:木村好宏/Motor Magazine 2006年1月号より)

画像: リアの排気管はクロームメッキが施され、ディフューザーと一体感を出す。

リアの排気管はクロームメッキが施され、ディフューザーと一体感を出す。

ヒットの法則

アルピナB6カブリオ(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4820×1855×1371mm
●ホイールベース:2780mm
●車両重量:1930kg
●エンジン:V8DOHCスーパーチャージャー
●排気量:4398cc
●最高出力:500ps/5500rpm
●最大トルク:700Nm/4250rpm
●トランスミッション:6速AT(SWITCH-TRONIC)
●駆動方式:FR
●0→100km/h加速:4.9秒
●最高速度:310km/h
※欧州仕様

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